第31話:夢と現実

(なんだここは?また夢か?)


俺は迷宮を仲間と共に歩いていた。

ランタンを持って薄暗い通路を一緒に進んで行く。


「アトモス!この迷宮ロクなものがないじゃないか?未探索の古代の遺跡だから、金目の物が手に入るはずじゃなかったのか?」

「うるせえな、サルファ。探索の事も宝の価値もわからない奴は黙ってろ。」

「こっちは、魔物と戦ってんだ。偉そうに言うのなら成果だせよ。」

「チッ!」


どうも、この体サルファの過去の記憶らしい。

夢でキャラ設定を盛るやり方のようだ。

しかし、前回に比べてだいぶ小汚い恰好になっていた。

髪はボサボサ、少しサビついた剣と鎧を身にまとってホコリまみれだ。

仲間も汚らしい髭を生やして、傷んだ皮鎧とナイフを装備しており、見た目は完全な子悪党である。


「おい、また魔物が出たぞ。早く始末しろよ。」

「命令するなよ!」


俺は魔物の前に飛び出した。

敵はネズミの魔物数匹で、動きを読んで切り捨てていく。


「さすがだな。」

「当たり前だ、俺は騎士・・・いや騎士団長になるべき男だぞ。」

「そんな素晴らしい男が、国が管理している遺跡の盗掘か・・・情けない事だねえ。」

「俺の才能がわからない奴らが悪い。だから正当な報酬を国からもらうのは当然だろ?だから早く宝を探せよ。」

「へいへい、わかりましたよ。」


俺達は宝を求めて先に進もうとすると、何か気配がした。

俺はその正体を確認するべく、周りを確認しようとした時、何かが体に刺さった感触がした。


(なんだ?何をされた?)


別に体に異常はない。

それよりも、誰かに狙われているのが問題だった。


「クソォ!体に何か刺さった!敵襲だ!」

仲間の男も同じ感覚を味わったらしく、パニックで通路へと一目散に逃げだした。


「バカ野郎!下手に動くな!」

俺の制止もむなしく、男は喚きながら暗い通路へと消えていったが、その後「ゴツッ」という鈍い音と共に静かになった。


(数人隠れているな、下手に動くと相手の思うつぼだ。)


俺は動かず相手の出方を見る事にした。

緊張した時間が流れていく。

しかし、突然力が抜け、その場に俺は倒れた。


(なんだ・・・体が動かない。どういう事だ?)


その時周りから数人の気配がした。

こちらに近づいてくる。

顔も上げれない俺には姿を見る事すらできない。


「うまくいったな。」

「この神経毒は時間がかかるのが難点だな。」

「身柄を安全に確保するためだ。盗掘者は出来るだけ生け捕りにしろという命令だからな。」

「もう一人の男の方はどうだ?」

「生きているが、軽く小突いたせいか傷が付いちまった。」

「軽く小突いた?やりすぎだろう。これでは報酬は半減だな。まあ逃げられるよりはいいか。」

「よし、運び出すぞ。」


男達は会話をしながら、俺の体を布袋に入れ荷物のように運んだ。

俺は何も出来ずに無抵抗に運ばれる事しかできなかった。


(なんでだよ・・・。なんで俺がこんな目に合うんだ。俺は選ばれた人間だぞ・・・なんでだよ・・・。)


◇・◇・◇


「ハッ!」

俺はベッドで目が覚めた。

確認するように体を動かす。

夢の中のように神経毒に侵されてはいないようだ。

周りを見回すと3人の仲間達が俺を心配そうに見ていた。


「ここは一体どこなんだ?」

「覚えていないのか?ここは勇者様の部屋だ。」

「転移陣で帰ってきたのに、目を覚まさないので心配しました。」

「だから~、私がベッドに寝かせてあげたんだよ~。」


(そういえば、転移陣に入ったら意識が遠のいて・・・ん?)


「君たちも転移出来たのか?」

「勇者様が転移した後、ずっと転移陣が光っていたので、勇者様を追いかけたら、召喚陣へと問題なく転移出来た。」

「私達も意識の混濁は多少ありましたが、勇者様と違ってすぐ目を覚ましたようです。」


(なるほど、転移陣の使い方はあっていたようだな。しかし、意識を失うのはペナルティが大きいな。)

自分がどれくらい意識を失っていたのか、時間を確認するともう15:00になっていた。


(2時間も意識を失うのか・・・。よく考えて使わないといけないな。)


「みんなに心配かけた。とにかく飯にしよう。」

これからの事は、とにかく飯をしてから考えようと思った。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る