第28話:地下3階

地下3階への階段は部屋の右手の扉のすぐ先にあった。

襲ってきた奴らが逃げて行った扉を選択肢から外せたおかげで、皮肉にも早く見つけることが出来た。

3階は通路がウネウネと曲がりくねり、分かれ道が多数あり、マップをちゃんと作成しながら進まないとすぐ迷ってしまう。

その分敵の気配がないので、今までと違い迷宮を突破するのが目的のフロアなのかもしれない。

普通のゲームなら敵が出ないのなら時間がかかって面倒なぐらいだが、このゲームは腹は減るし、体力も疲弊する。

つまりは迷ってさまようと普通に死ぬのだ。


(迷宮ゲームは好きだが、最近はオートマッピングに頼っているせいか、手作業でのマッピングは大変だ。しかも、間違ってたら迷って死んでゲームオーバーになるなんてレベルが高いな。)


3階に入って、もう30分も経過しているが進めど、進めど先が見えない。

安易に進んでしまった自分の計画性のなさを後悔した。


(そういえば仲間達に確認をしないで進んでしまったが、もしかしたら何か有用な技能を持っているかもしれない。)


仲間達は黙々と俺の後ろに付いてきていたので存在を忘れていた。


「みんな、一応マッピングしながら進んでいるが、この迷宮の先が見えない。この状況を何とかする能力などないだろうか?」


勝手に進んで不安になって仲間に頼るなんて現実だとなかなか言い出せないが、自分のミスを正直に話せるのがゲームのいい所だ。

そんな俺をミコとナナミはニコニコ笑顔で許してくれたが、ココノは黙ってジト目で見ていた。


(視線が痛い。)


「勇者様、遅いぞ。もっと早く私達を頼って欲しかった。」


ココノは懐から方眼紙を取り出し、作成途中のマップを見せてきた。

俺がアプリで作成したマップと見比べると色々と相違点があった。

文明の利器が勝つと思っていたが、間違いを指摘されたのは俺の方だった。


「今まで魔力感知で空気の流れを探りながら、ココノさんとマップを作成していました。かなり正確だと思います。」

「わたしも~歩幅で距離計って確認したけど~自信あるよ~。」


黙々と俺に従って歩いてると思っていたが、その間ちゃんと働いていたようだ。

俺みたいな指示待ち人間には出来ない芸当だった。


「そうか・・・すまないな、これからは頼んでいいか?」


彼女達は嬉しそうに頷き、意気揚々と先頭にたって進みだした。

俺は後ろをついていくだけで情けなさを感じた。


(ハーレムゲームだと、たいして魅力がない主人公がモテて羨ましいと思っていたが、実際そうなると情けなさの方が勝ってしまうな。)


ふと、このゲームは自分の「甘え」を教えるのが目的なのか?という考えが頭によぎった。

俺と同じ経緯でこのゲームをしていると仮定すると、プレイしている人間はだいたい社会不適合者であると推測できる。


となるとこれは更生プログラムの一つなのではないだろうか?


俺のように無気力な人間には、有能な仲間を付け発奮させる。

そしてすぐ感情的になる勇者ターレスには、クリアが困難になるよう仲間を一人だけ付け、理性的な思考を身に付けさせる。


(いや・・・俺達みたいに社会に不要な人間達にそこまで労力やお金をかけるほどの価値はないな。)


正直、完全なるこじつけでありえない考えだ。

社会は不要な人間に優しくないし、だからこそ維持できる。


(とはいえ現実世界では不必要でも、この世界ではハリボテとはいえ勇者としてあがめられている。これからは単純にクリアを目指すだけではなくて、生まれ変わったつもりで勇者として積極的にプレイしよう。)


俺は彼女達に黙って後ろについていきながら、心に誓った。















































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