第27話:賢者
撃退した2体の人形をココノに確認してもらったが、もう機能停止しており危険はないという事だった。
ついでに鑑定アプリで確認をしたが、反応自体しなかった。
(反応自体しないという事は、鑑定アプリは万能ではないのか?)
とりあえず危険は去ったので、MP消費を止めるために指輪を外す。
確認のためステータスを見るとMP500から50まで減っていた。
効果は強いがこれほど消費するなら、これからは使用を控える必要がある。
「しかしココノは随分と詳しいな、なんでだ?」
「知識はそれなりにあるつもりだ。賢者としての試験も受けている。」
「賢者って・・・そもそも何なんだ?」
「賢者というのは、知識ある者の事だ。賢者レベルが高いという事はそれだけ知識があるという事だ。」
(賢者は知識を武器にしている職業なのか。たしかにココノは賢者レベル3を持っていたな。)
するとココノは懐からカードを出して見せてきた。
そこには「冒険者認定証」と記載しており、名前や性別や職業レベルが記載されていた。
アプリで見たステータスと同じ内容であったが、能力値は記載されていなかった。
「能力値は記載されていないのか?力とか素早さとか?」
「力?素早さ?職業レベルによる技術は実績や試験などで証明できるが、残念ながら人の能力はそんな単純に判断はできない。」
(現実的に考えると、能力など相対的にしかわからないし、数種類の数値だけで判断出来るものでもない。とはいえ、俺は仕事で数値で判断されて切られたからなあ・・・。)
自分の嫌な過去を思い出して悲しくなった。
それと冒険者というのはゲームでよく聞くが、それと同じ概念だろうか?
「冒険者って何なんだ?」
「冒険者は未知の領域を明らかにするため、国から認定された職業だ。基本国からの指令で動く。」
(そういう設定なのか、思ってたのと違うな・・・。)
「勇者様、そろそろ立ち話はその辺にして少しでも先に進もう。かなり足止めされた。」
「たしかにもう昼だな。しかし、これからも勇者に襲われる可能性があるのなら、進むのを遅らせて衝突を避けるのも必要じゃないか?」
「たしかにあのような勇者様が存在していたのは残念だが、私達の目的は仕える勇者様の目的を叶える事だ。その為には少しでも進んで誰よりも速く悪魔討伐を達成しなければいけない。今回は後れを取ったが、次はこの身に代えても障害を排除するので信じて欲しい。」
ココノの力強い発言に他の仲間達も頷く。
たしかにクリアして賞金を貰うには少しでも進むべきなのは確かだ。
他の勇者に襲われる危険性はあるが、その可能性についてちゃんと考える事が必要なのかもしれない。
まず、何で勇者ターレスは俺を襲ったのか?
人形ばかりで実際の仲間は1人しかいなかったから、戦力増強のためだろう。
だから他の勇者と通路が繋がっていて、安全な2階で待ち伏せしていた。
それなら仲間の戦力が揃っていたら襲わなかった?
他の勇者を襲うより、クリアのため少しでも進む事を優先するだろう。
そして先に進んだ連中は戦力温存のために戦いは極力避けるはず。
もし互いに潰しあうとしてもそれはもっと後半だろう。
(そう考えると逆に浅い階数でウロウロしている方が危険な気がしてきた。)
「わかった、少しでも先に進むのが正解だな。より一層、力を尽くしてくれ。」
「承知した。」
「承知いたしました。」
「しょーち~。」
そうして俺達はさらに深い階層へと進む事を決めた。
(しかし勇者ターレスの事だが、奴とはどこかであった気がする。もちろん顔には全く見覚えがないが・・・雰囲気?いや、それとも別の何かだろうか?まあ・・・40年生きていたら似たような人間にはあってる可能性はあるか。)
俺は考えるのをやめた。
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