第14話:迷宮

ついに迷宮攻略を始めることとなり、迷宮と記載してある扉の前にみんな集合していた。

(もう午後2時か・・・気の早いプレイヤーはだいぶ先に進んでいる可能性があるな。凶と出るか吉と出るか・・・。)


「これから扉を開けて迷宮に入るが、問題は無いな?」

仲間達の顔を見ながら問いかけると、みな静かに頷く。

扉のドアノブに手を掛けゆっくりと押し込みながら開けると、人ひとり通れるぐらいの下り階段へと続いていた。

中を観察すると、壁、階段、天井とも青く発光しており薄暗いながらも周辺は目視で確認できるようになっている。

ただ、階段の奥は真っ暗で見えない。


(薄暗いがまだ見えるな。とにかく慎重に少しづつでも進んでいくしかないな。)


「これから階段を下りていくが、薄暗いし何が起こるかわからない。敵に襲われた時に対処しやすいように、順番を決めて降りよう。」


するとミコが一歩前に出て、

「私が一番前で先導致します。私は魔力を察知する能力で、魔物の接近をいち早く感じる事が出来るので適任だと思います。」


(たしかにそんな事言ってたな。戦士としてのレベルもあるし、接近戦もある程度可能か。)


「了解した。一番前はミコとして、二番目は盗賊技能のあるココノ、そして俺、しんがりはナナミだ。これで行くが問題ないか?」

「承知した。」

「わかったよ~。」


彼女達は俺の指示通りに隊列を組み、階段を下りていくことになった。

警戒しながら進んで行くと、思ったよりすぐに開けた場所に出た。


「ミコ、魔物の気配はあるか?」

「ありません、ここは安全です。四方20mぐらいの場所ですね。」

「薄暗いのにそこまでわかるのか?」

「ええ、空気の中にも魔力が満ちていますので、その流れを見ればわかります。目を閉じているからこそより感じられます。」

「凄いな・・・しかし俺はこう薄暗いと何かが出たとき対処できないな。」

「それなら方法があります。」


すると彼女は部屋の中心まで歩いて、手を組み祈りのポーズ取った。

組んだ手を開いた瞬間光が溢れ、天井へと放たれると光が部屋全体を覆う。

暗闇に慣れた俺は思わず目を閉じた。


(なんだ、何をした?目を開けていられない!)


狼狽していると、正面から大きなものが覆いかぶさってきた。

強い力で体を拘束されているが、顔には柔らかいものが当たっている。


「こわくな~い。こわくな~い。」

「ナナミか!苦しい!」


おれは体をバタつかせるが凄い力で外せない。

どうするかと困っていると、


「ナナミ!勇者様にこんな事をするとはどういうつもりだ!」


今までの話し方と違って怒気を含んだ口調でココノが叫んだ。

ナナミの体がこわばったのを感じた。


「私は勇者様が眩しいだろうと思って、目が慣れるまで壁になっただけなの~。怒らないで~ごめんするから~。」


彼女はすぐに飛びのき、視界が一気に開け光が飛び込んでくる。

「これは明るい・・・、本当にさっきまでの部屋か?」

さっきまでの薄暗さはまったくなく、部屋の壁の汚れや傷まではっきりと見える明るさになっていた。

天井を見ると手の大きさぐらいの光の球体が浮きながら発光している。


「ミコ、これは魔法か?」

「これは神から与えられた奇跡の力です。神官の力を持つ者は自らを高めることによって奇跡を習得していくのです。これはその一つです。」

「奇跡?魔法とは違うのか?」

「大昔に魔法というものがあったらしいですが、今はないですね。奇跡とはまったく別の力とも言われていますし、近いものだとも言われています。」

「ん・・・じゃあ魔術師は魔法を使えないのか?」

「魔術師が使うのは詠唱魔術です。失われた魔法を再現しようとして生み出したものらしいですが、詳細は知りません。」


(魔法と世界観の設定かあ。一応そういうのがあるんだな。)


「ただ・・・勇者様だけは失われた魔法が使えると聞いていますが本当でしょうか?」

「え・・・そうなのか?いや俺は魔法は使えないが・・・。」

「謎の魔道具を持っていたので、それで魔法が使えるとかないのでしょうか?」


(スマホで使えるのは、鑑定とかステータス確認とかぐらいで・・・たしかにまだ使用していないアプリが何個かあるが、これを使えば炎魔法とか氷魔法とか使えるんだろうか?)


「うーん、今のところ使えそうにはないな・・・。すまないがこれからも助けてほしい。」

「もちろんです!私は勇者様のためにはなんでもしますので、いくらでも頼ってください!」

「ああ・・・頼むよ・・・。」


(現実で「なんでもします」とか言う人っているのかなあ・・・まあ命乞いとかではあるか・・・。そのせいか、どうにもうさんくさく感じるなあ。)


「では迷宮探索を続けよう・・・とその前に、彼女達をなんとかしないとな。」

「そうですね。」


彼女達の方を見ると、大柄なナナミが正座させられて小さくなっており、ココノから説教を食らっているところだった。


(体の大きさではなく、レア度で力関係が決まっているのだろうか?)

ふとどうでもいい考えが浮かんだ。



























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