第12話:話し合い
「まず・・・俺たちの目的について説明したい。」
その一言で彼女達は俺に注目する。
そしていかに簡単に伝えるかを少し考えて、
「この場所の迷宮にいる悪魔を7日以内に倒すことが俺たちの目的だ。」
彼女達を見回すと、きょとんとした表情をしている。
そのリアクションに俺は不安になった。
「その・・・何か質問があるかい?」
するとココノがジト目で見ながら、
「勇者様、それは知っている。私達に説明は必要ない。」
驚いたことに目的をすでに理解しているようだ。
なにより驚いたのは、自己紹介の時のようなカタコト言葉ではなかったことだ。
とはいえ少し乱暴な口調だ。
「そうなのか?」
その問いにみんな頷く。
「私達は前々から今日勇者様達が異世界召喚されると知っている。だから勇者様の力になるよう、何年も前から修業をしてきたし、覚悟もしている。」
(そういえば基本ゲームでガチャで引いたキャラに目的など説明しているのを見たことがない。これは愚問だった。)
しかしその言葉に違和感があった。
「勇者様達?俺以外に今日召喚された奴がいるのか?」
「もちろんだ。私達は勇者様の誰かに召喚されて仕える。そして他の勇者様より早く迷宮の奥に存在する悪魔を滅すれば、私達には名誉と褒美が与えられる。」
(俺以外にテストプレイしている人間がいるという事か?それなら目的の悪魔を先に倒した人間が100万貰えるというルールなのかもしれないな。)
「ちなみに勇者は何人召喚されたんだ?」
「それは知らない。ただ、迷宮攻略を急ぐべきだ。」
(早い者勝ちなら急ぐべきだが・・・急いだ奴らが勝手に潰しあってくれる可能性もある。もっと情報を集めるべきか?)
「他に役立ちそうな情報はあるかい?」
「・・・。」
ココノは何か考え込んでいるようで黙ってしまった。
(そうか・・・NPCに曖昧な質問だと答えられないのが普通か。ついゲームという事を忘れてしまうな。)
「そうだな・・・迷宮についての質問なら答えられるのかな?」
「・・・少しでも時間が惜しい。とにかく迷宮に行く準備をしよう。」
「なぜそんなに急ぐ?まずは情報を集めるのも必要だろ?」
「それならば、道中に話せばいい。先に進んでいる勇者達が潰しあうなどの期待はしないことだ。私闘は禁じられている。」
「なるほど、色々な情報を持ってるじゃないか・・・飯を食う間だけでも質問させてくれないか?みんなもそう思うだろ?」
俺は仲間達に同意をもらうために、周りを見回しながら話しかけた。
ただ他の2人は黙々とご飯を食べていた。
(なんだ?今まで俺に友好的で積極的だったのに・・・。)
「みな気持ちは同じなのだ。私の言う事を聞いていればあなたは最高の勇者になれる。つまりは今すぐ迷宮に行くのが正しい。」
(随分と高圧的な言い方だな。NPCのくせに俺をクグツ扱いか?こういうキャラなのかもしれないが面倒だな・・・。)
「勇者である俺に命令か?口調も気に入らないな・・・」
「・・・。」
ココノは目を伏せ黙ってしまった。
すると今まで黙っていたミコが、
「私達は神の使命を全うするために運命に導かれし仲間です。言い争いはやめましょう。」
「そうそう、喧嘩はよくないよ~。」
「ココノさんは人間の言葉が苦手なだけで、悪意はないのです。」
(悪意はないのかも知れないがゲームでプレイヤーに命令するってどうなんだ?)
「わかった、とりあえず食事を終わらせて迷宮探索の準備に移ろう。」
「ありがとうございます!さすが勇者様です!」
(随分と調子のいい子だな・・・チョロいと思ってたけど、一番したたかなのかもしれない。)
どんな反応か気になってココノの方を見たが、彼女は黙々とご飯を食べているだけだった。
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