第3話 "襲撃"
「今日はよろしくお願いしますね」
E級ダンジョン転移扉の設置されたいつもの5区教会ではなく、同じダンジョン内行きだが通常の入口ではなく、会場の海辺そばに出る直通の臨時転移扉として設定された組合神殿奥。招待客の案内もまだまだ先な早朝、待ち合わせ場所にはすでにアイ、ユイ、メイが来ていた。
生成色の貫頭衣を黒革のコルセットで胸下から腰を締め上げ、足元はしっかりとした造りの編み上げブーツ。
黒髪は緩く背中でまとめ、服の上から左半身を保護する胸当てと籠手を着けたアクティブな格好。
ダンジョンの中という事で移動の間は探索者時代の弓手装備にしたそうだ。
「では、入りましょう。会場周辺の封鎖は完了済み、道中も組合の依頼ですでに警護の探索者が多数巡回を始めているとの事ですが、一応前衛をティア、後衛に私とミキ、紗雪が上空を。皆さんが中央という形で進みましょう。」
「承知しました」
隊列順で転移扉の黒い渦を抜けると、潮騒の音がかすかに聞こえてくる。
前方を見れば、きらきらと、昇りかけの日の出の朝日を赤く照り返す海のさざ波。
コロニー内の人口光では決して見ることができない、今や映像記録の中でしか見ることができない美しい自然が広がっていた。
「スターのお越しだね」
転移先の傍で周辺を警戒していたごつい体格の黒髪を逆立たせた男性が声をかけてくる
「僕は今回組合から依頼された探索者のまとめ役を務めている、B級探索者のクリムという。こんな格好なので握手ができないのが残念だ」
「数日こちらに籠りきりと伺っています。ありがとうございます」
「なあに、お偉いさん方の自分達の身可愛さってやつさ。僕の率いている探索者集団”宵の明星”が会場周辺にいる。このシンボルが目印さ。今回会場内警備は立ち入れないが、何か困ったことがあったら、外周にいるから頼ってくれ」
宵時のグラデーションが美しい空を背景に星が散る中ひときわ光を放つ星が描かれた刺繍のシンボルを、ごつい金属で覆われたこぶしで示す。
「ありがとうございます。ご紹介が遅れましたが、こちらはわたくし達が個人的にお願いした探索者のナオさんとパーティーの皆様になります」
「若輩者ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそだ!」
軽くこぶしを充てる挨拶を交わすナオとクリム。
「見えているが、あの海に浮かんでいるのがステージだ。近くに行けば誰か案内が出てくると思うぜ。ここからも見てるが、一応道中気を付けてな」
軽く手を振り分かれる一行。
下見の時にはしばしば遭遇した蟹や空飛ぶ魚等の敵生体も現れることなく、道中いたって平穏に海際へだどりついた。
「本日はお越しいただきありがとうございます」
間もなく10時となり、浜辺に据えられた観覧席にはカクテル片手に談笑する老若男女、種族混合の人々の姿。
白いテーブルクロスの掛けられた机に、手前半分側だけ椅子がセットされ、会場側を眺められる設営だ。
海上には立派なフロートの上にステージが設けられ、奥には複数の大きなモニターがそびえたっている。
今はユイたちが入場口で招待客に一人一人挨拶するのを少し離れて見守っている。
Aラインの裾が長い比較的シンプルな、青空映える海に似合う、お揃いの空色のパーティードレスに身を包む3人。
ほっそりとした背と、流れる黒髪が陽に照らされ美しい。
10時となり、開場のあいさつに出てきたのは横に巨大な巨漢。
ごてごてと飾り立てられたはち切れそうなスーツに、籠手かと見間違えそうになるほど、宝石のついた指輪の山で膨れ上がった手指。何が不満なのかしかめられた顔でステージ中央に立つと、睥睨するように会場を見渡す。
「皆様、よくぞお越しくださいました。探索者協会組合長、兼、ダンジョン管理局支部長でございます。」
この肥えた男性が組合長だったらしい。初めて知った。
彼の視線が入口周辺を見渡した時、視線から身を隠すようにミキがそっと寄ってきて、袖の先をつまんできた。
上役にあたるので知らないということはないだろうが、苦手意識があるのだろうか。
探索者組合、組合長からのダンジョン運営状況に関する報告と銘打った基調講演が進む中、次の昼前の出番に向けステージ衣装に着替えるユイ達に付き添い、会場に設置されたフロート裏手に続く通路を行く。
異星体技術の賜物か、海上に鎮座するフロートの中で揺れは一切感じられない。
これから着替えという事で楽屋の中に女性陣を、入口傍でナオがドアマンよろしく警護にあたる。
ナオたちパーティーメンバーはもちろんいつもの探索服だ。執事スタイルは客席を通る際いらぬ誤解を招きかねないため、ナオは白のサーコートスタイルにしている。
胸元に縦の編み込みが走り、フリルが上下を飾る白のビキニスタイル。
薄紫のパレオストールを胸元から広げ、引き締まった首から肩のラインが艶やかに覗くその先、二の腕を覆うランタンスリーブがフェミニンなアクセントを加えている。
この水着と同じお品を、後でもらえるのか~……。
紗雪、やわらかボディ姿で着てくれるのかな。
妄想の世界に旅立ちかけるナオ。察せられたのか、わき腹を紗雪につつかれる。
お・し・ご・と・ちゅ~ と、口の動きで怒られてしまった。
端末に連絡があったようで、そのままステージへ向かう。
普段の楚々とした表情から一転、流れる音楽に合わせ、明るく元気な姿でステージへ飛び出していく3人。
フロート上は海の一部に沈み込んだかのように、波が寄せる浅瀬の情景がホロ映像で重ねられている。
ステージ裏には特徴のあまりない黒髪の青年の姿がちらほらと。
揃いの白いシャツに短パンを着て、やり取りをしているのであろうホロウィンドウを一様に浮かべているので、スタッフだろう。
30分ほどのステージが終わり、舞台裾にひけるまで手を振っていたユイ達が軽い汗を浮かべ戻ってくると、組合のロゴが入ったボトルが青年の手から渡された。
「ありがとうございます」
受け取り、ほてった体を冷ますように勢いよく飲む3人。
「この後は楽屋でしばらく待機、お昼が用意されているはずなので一緒に食べましょう」
息が落ち着くのを待ち楽屋に戻る。
ボトルを渡した青年は再度登壇すべく出てきた組合長に、何かを伝えに駆け寄って行っていた。
「後は午後に来場されるコロニー長を交えた対談に出席。夕日が沈む中、クロージングライブ。お見送りをしたらお終いです」
会場で供されている料理のおすそ分けらしく、天然物の海鮮素材をふんだんに盛り付けた海鮮丼を仲良くつまみながら楽屋で雑談に興じる。
舞踊で使う魔法カードのセット、使用に耐えるMPに育つまでの空想探索者生活の苦労。
弓3人というか頼った編成ながら、乱れ一つない連携での攻略はなかなか堂に入ったもの。
位階も1に上がり、F級探索者の資格を得ていたと懐かしそうに語ってくれた。
架空体のゴーレムを前衛として使っており、その提供を受けたゴーレム教団からの紹介という事で、ナオの出場したタイムアタックイベントの舞台を任せられたそうだ。
住居は空想舞踊で得られる権利と収入で4区に構えているとの事。探索者は活動を続けている限り税は各種売買で天引きされ、住居はランクに応じた提携の場所が無償で利用できる。他方、空想舞踊の場合そのような補助制度が無く、相応の額の居住料が発生すると知った。
「コロニー長がお越しになられたみたい。お出迎えに行ってくるわね」
多少の出入りに分かれて付き添いをする程度のまったりとした時間が過ぎた後、端末で通知を受け取ったユイが席を立つ。
「アイとメイはこの後の座談会の直前確認のために組合長の控室に行きます」
一応フロートの外に出るためユイ側の人数を厚めに、どことなく組合長を避けたそうなミキの印象を考慮し、ミキとナオ/紗雪がユイに、ティアがアイとメイに付き添う事にする。
「ミキお嬢ちゃんではないか、こんなところでどうしたね」
見事な白いひげを蓄え、老練な魔法使いのようなローブを着た
「現在はこちらのナオ君とともに探索者をいたしておりまして。本日はナイトリーリエの皆様の個人的な護衛を務めさせていただいております」
「ほう、では組合の指示ではないのだね」
「はい、個人的な仕事でございます。もちろん正式な依頼として手続きしておりますので、組合も了承しております」
「ふむ。ふむ、そうかね。」
そこで紹介されたナオへ視線を移し、
「ナオさんと言うたね、ミキお嬢ちゃんをよろしく頼む」
「はい、もちろんです。こちらの方がほとんど一方的にお世話になっているのが実情ですが」
いまいち理解できずともとりあえず無難に返事をしてしまうナオ。
「そうかねそうかね。近いうちに、ミキ嬢ちゃんの様子でも聞かせてもらおうかの。大分やんちゃが戻っておるようで、ちぃと心配じゃしの」
「おじい様!?」
「仲がおよろしいのですね。お邪魔をしてしまって恐縮ではあるのですが、そろそろ参りましょう」
そっと先を促すユイに、軽く赤面しそっと後ろに控えなおすミキ。
コロニーとして異星体向けに発信するコンテンツの今後の有りようとか、その中にあって一つの目玉となっている空想舞踊への補助制度がどう等、様々な話題が取り交わされる様子を舞台袖でじっと待つこと1時間ほど。
コロニー長は次の予定が詰まっており、このまま会場を後にするとの事で、ユイとミキが見送りに行く。
組合長に呼ばれたアイはティアに付き添われ、彼の控室へ。
ナオと紗雪は他の出演者へのあいさつに回るというメイに付き添う事とした。
控室を周ること3か所目。
端末にメッセージ着信。開くとミキからだが、空白メッセージで内容が無い。
いぶかしみ、イベントの時の空白メッセージについて、結局聞かずじまいだったとふと思い出しつつ、ミキにコールしようとした矢先、斜め前を歩いていたメイが、すっと力が抜けるように膝から崩れ落ちる。
何事かと、慌てて頭を打つ前に支えるナオの腕の中、完全に脱力し、焦点の合わない目を見開いたまま、首をカクンと垂れ下がらせている。
手を目の前で振ったり、脈をとりながら
「どうした、大丈夫か」
呼びかけてみるも全く反応が無い。
と、端末に着信。ティアからだ。
「主様、ユイさんが倒れました。組合長室を出て、控室に向かう途中です」
「ユイも?こちらでメイさんも倒れている」
グループ通話に招待する形でミキにコールする。が、つながらない。
「ミキにつながらない」
「ユイさんもダメです」
「救護室を確認していなかった。まずは急ぎ楽屋に運ぶ。ユイさんも連れてきてくれ」
抱き上げ移動を開始しながら、
「ティアはそのまま2人を楽屋で看護、俺はユイさんの方に急ぐ。おそらく入口と楽屋の間のどこかにいるはずだ」
外から喧噪や想定外の音などが無いことを、耳を澄ませ確認しつつ、指示を出す。
「以後通信はつないだまま行動するぞ」
「承知しました」
「紗雪、何が起きているかわからない別行動はせず俺と動く」
「わかったわ」
楽屋へ向かう道すがら、午前に見たスタッフがいればと気を配るが誰ともすれ違わない。
上昇した身体能力のおかげで数分もしないうちに楽屋に着くや、ポーションや解毒剤を取り出し机に置くと、合流したティアにあとを任せ、ユイとミキを探しに飛び出す。
コロニー長を迎えに行った順路を辿る。
フロートの通路終わり際、浜辺に続く出入り口の通路側に、いた。
壁に背中をもたれ、倒れているミキ。床に桜色の髪が広がっている。まだ距離があるが見える範囲に外傷や血の跡はないように感じる。
ミキを背にかばうかのように、明かりを背にする人影と対峙しているのは白い髭の老人、コロニー長だ。
「儂も侮られたものじゃ。護衛を付けておらぬ意味くらい考えられんかったか」
逆光で気が付くのが遅れたが、人影は白いシャツに短パン、スタッフと思しき青年たちの一人だ。
ユイを横抱きに抱え上げている彼の後ろには同じ白いシャツに短パンの青年たちが4人、うつぶせに倒れている。
入口外にはまだ2人、同じ格好の男が呆っと、直立している。
何が起きている?と疑問に感じつつ、紗雪には空を飛びミキの様子を見てもらい、ナオはミキの前、コロニー長に並ぶ形をとる。
「来たか」
「状況は」
素早く言葉を交わすコロニー長とナオ。
「あれは人間の抜け殻じゃ。寄生種が入っておる。目的はユイの誘拐。許可する、無力化を。殺して構わん。生きた人類ではない」
矢継ぎ早に説明と指示が飛ばされる。
「渡さない、これ、連れてく」
「主様、アイさんとメイさんが気が付きましたが、急用があると楽屋を出ました。止められず追っていますが、出口、主の向かった方へ進んでいます」
つないだままの通信からティアの報告が入る。
「脈正常、息もしてる、気絶しているみたい」
ミキの様子を見ていた紗雪からも声がかかる。
とりあえず柄頭で気絶させるかと愚者の剣を取り出し、ユイを抱える青年の元に飛び込む。
ユイを抱えたまま後ろに跳躍する青年、入れ替わるように立っていた青年2人が予想外の速度で胴体目掛けしがみついてくる。
よけづらい胴体中央へのタックルを、極限まで身を低く倒し、滑り込むようにかわす。
ミキとコロニー長の所に抜けさせるのもまずいと、とっさにすれ違いざま、2人共の足首を切り落としてしまった。
培養ポッドで生やせるだろうと、気を落ち着け、さらに後退するユイを抱えた青年を追う。
脇構えから抜き打ち気味に、低くした身の起き上がりの勢いと共に柄頭を、青年の膝目掛け叩きつけ……、
直前、視界が塞がれる。誤ってユイを打ち据えてはまずいと身を捻り、青年の横を抜けるはずの軌道に体を投げ出す。
高速に流れる視界の隅、目の前を遮ったのは青年に抱えられたまま手を大きく広げ、腕を伸ばしたユイだった。
「ユイさん?何を」
『汝、後ろじゃ』
愚者の剣から飛ぶ警告は少し遅く、後ろからやわらかな感触に腰を、首を、抱きかかえられる。
「アイさん?メイさん?主殿を離してください」
動きを阻害するようにしがみついているのは、護衛対象の2人らしい。
「やむを得ない、連れてく、運べ」
青年の指示らしきものに、予想外の強い力で抱き上げようとしてくるアイとメイ。
ユイも青年の腕から降り、ふらふらと、離れるように歩いていく。
状況に戸惑いつつ、アイを引きはがそうとするティア。
と、ズドン、鈍い音が響く。
額に穴をあけた青年が後ろ向きに倒れこむと、アイ、メイ、ユイの3人が膝から崩れ落ちた。
後ろを見れば、紗雪が呼び出した装備マスケティアーズのマスケット銃が油断なく浮いていた。
彼女の狙撃の1射。うがった穴からはしかし、血の一滴もこぼれていなかった。
「すごい音がしたが、何事だい」
駆け寄ってくるのは今朝会った外周の警備にあたっているはずの探索者クリムだった。
「それが、こちらも何が何やらで。ユイさんが攫われたところを助けた、といったところでしょうか」
「ふむ。中の警備は何やってたんだか、あんたらがいてくれてよかったってところか?」
とにかくユイ達3人を砂に寝かせておくわけにもいかなかろうと、クリムの手も借り、ティアと3人手分けし楽屋に運ぶかと相談しているところ
「これは何事ですかな」
でっぷりとした腹を突き出しやってきたのは6人の探索者と思しき護衛を連れた組合長だった。
「クリム殿、外の警備を頼んでいたはずですが?」
「大きい音がしたんでな、様子を見に来たらこのありさまさ」
「あとはこちらで面倒を見る、外の警護に戻りなさい。コロニー長、お帰りのところ災難でしたな、申し訳ない」
こちらに関心は無いとばかりに指示すると白い髭のコロニー長に向き直り語りだす。
「この者達に送らせます。どうぞ」
もの問いたげにしつつも雇い主の指示とあってはか、クリムは警備担当の外周、ダンジョン内部へと去って行く。
「大分、”問題”があるようじゃが?」
「なに、こちらで処理します、お手を煩わせるほどでも。おい、ミキ、踊り子たちを癒せ」
乱暴に声を掛けられると、パチリ、と目を見開きミキが唐突に立ち上がる。すたすたと、ユイ達の元へ歩み寄ると、懐から小瓶を取り出し、そっと口に含む。止める暇もあればこそ、ユイ、メイ、アイ、順に口づけ。口移しで、含んだ液体を流し込んだようだ。やおら立ち上がり、普段見ている回復魔法の光を立ち昇らせる。
その様子をじっと見つめていたコロニー長だが、護衛として紹介された男たちに促され、臨時転移扉の方へと足を向ける。
すれ違いざま、ナオの肩に手を置き、
「いや、ナオ君といったね、助かったわい。礼を言うぞ」
と、大きな声で礼を言い、握手のため手を差し出される。握り返すと、すたすたと歩み去っていった。
ナオの手の中には小さな紙の感触が残されていたが、自然な仕草を心掛け、気が付かない風を装い、とりあえず見ずにポケットに放り込んだ。
「ナオと言ったか、ゲストを守ってくれたようで感謝するよ。彼女たちは組合で予後の観察と事情聴取をする。後はこちらで面倒を見るので、君たちはここで成功裏の依頼完了として良い。手続きも組合で責任をもって行う。ミキは知っての通り魔法治療もできる上、こうした事後手続きにも慣れているのでね、しばし借りるよ。ああ、夕方のプログラムの事なら心配しないでくれたまえ、代わりの踊り子を用意してある」
変わりがすでにいるとはどういうことかと問う隙もあればこそ、問答無用とばかりに一方的に告げると、コロニー長の去った方角へ手のひらをかざし、退出を促される。
「ミキ、大丈夫か?気を失っていたのに」
「ナオ君、はい~大丈夫ですよ~元気いっぱいです!」
「あとで、また連絡する」
釈然としないながらも、指示された通り、ダンジョンからティアと紗雪を連れ、教会裏の神殿への転移するのであった。
ミキに”少しでも体調に違和感があったら抜け出してくれ。心配している。無理はするな”とメッセージを送って。
しばし転移扉の外で待つことも考えたが、組合管理下の建物の中と思い直し、部屋まで戻る。
ティアにリビングで待っているよう声をかけ、紗雪を抱きかかえたまま風呂場に向かう。
紗雪のドレスの背に手を回し、ファスナーを引き下ろし、そっと口を耳元に寄せ、興奮したような吐息と共に、低い、精一杯艶を感じられるような囁き声を意識して
「のぞき見、とめて?」
異星体ネットワークからの監視を、パートナー権限で一時的に止めてくれるよう頼む。
意をくんだ紗雪が
「もう、荒事の後で高ぶってるの?仕方のない人ね。あまり乱暴なのは、やぁよ?」
と返しつつ、ほどなく軽くうなずくのを確認し、行為を止める。
ポケットから取り出した紙片を紗雪も見えるように広げると
“明日13時、1区本庁舎ビル。ミキは連れずに。”
とだけ書かれていた。
「で、続きはしてくれないの?」
いたずらな笑顔で下から覗き込んでくる紗雪に赤面しつつ、
「意気地なし……」
という声を背に、逃げるようにリビングに駆け込んだ。
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