EPISODE01 Intercept

 発艦してすぐに「――PYYYYYYYYYYYYyyyyyyyyyy!」と、ロックオン・アラームが突然的に鳴り響いた。


「――うぉっ! 回避する!」


 回避機動に入ると同時に右後方や左後方を、何度も振り向き敵を探していると見えた。風防キャノピーが鉄板になっているA-10THUNDERBOLT Ⅱだ。


「I met enemy! A-10, give me clearance to engage! (敵と会敵した! A-10だ、交戦許可をくれ!)」


 それに対する答えが返ってくると同時に、警告音がまたもや鳴り響きだした。


『――片山だ、おおぞら1等空士へ。 Weapons Free. 交戦を許可する』

「し、司令!?」


『そうだ、嫌か? ああ、そうだ。聞いたぞ。 航空学校時代で異常・・なほど、帰艦して来たそうじゃないか』

「はっ、はは・・・。 じゃあ、今回は未帰艦のお願いですか」


『答えはノーだ。 くだらない冗談を言うほどひまなら、さっさと帰還しろ。馬鹿垂れ』


「了解です。 交戦を受理、必ず帰艦します」


 機内無線に切り替えずにそのままの周波帯で、急旋回してドッグファイトを始めた。


*****


 ドッグファイトを始めて暫くすると、女性オペレーターの悲鳴交じりの声が入って来た。


『――1等空士、聞こえますか? おおぞらさん!』

「んぁ? なんだ?」


『現在、母艦が攻撃を受けている! 至急、迎撃戦闘のために帰投してください!!』


 空母が? まさか、ありえない。


 そう思って右後方を見るとA-10の姿が無く、かわりに飛行甲板が火を上げて炎上しているのが見えた。


「Oh my god. (なんてこった。)」


 さらには、迎撃のために発艦しようとしていた蒸気式カタパルトで待機していた戦闘機群も破壊されて行っていた。


『もう、持ち応えられない! 助けて!』

「分かった、迎撃する。 その前に、司令は無事か?」


『え、ええ。 無事よ、士官室に退避したわ』

「Okay. あとは任せろ」


 空母の上空を高速でロー・パスすると、必死に死に物狂いでVLSを発射させて対空戦闘をしていた。


「あの機体・・・、くせが有るな」


 その癖とは、攻撃が終わると旋回時に大きく旋回する事だ。


「A-10なら、小回りが利くはずだが・・・。なにか、試験しているのか?」


 そんな考えをしていると、対艦ミサイルを母艦である天蒼てんそう型戦術航空母艦の一番艦天蒼てんそうに放って離脱しようとしているのが見えた。


「俺から逃げる気なのか? そうはさせない!」


 操縦桿そうじゅうかんを手前に勢いよく引くと同時にスロットルを最大にして直角ターンを決めると、射線上に敵機を素早く入れて操縦桿そうじゅうかんについている赤いボタンを押し込みながら「FOX2, FIRE! (ミサイル、発射!)」といった。


 胴体下兵器倉ウェポン・ベイのドアが開き、中から中距離空対空ミサイルのAIM-120C AMRAAMが2発出て来て宙を飛び、ロックオンされた敵機のA-10に命中した。そのまま、エンジン部分から火を噴きだして速度をそのままにしながらクルクルと機体が回転し始めて高度を落として行き、遂には海面に叩きつけられるように落下し爆発した。


「Enemy Destroy! (敵機撃墜!)」


 墜落した場所には、A-10の残骸が浮かんでいたが、それに混ざるようにして操縦者が気絶していた。


「敵機パイロットを発見、気絶している模様。 救助活動を要請」


『了解した、その海域の方位を送信して下さい』

「Copy (了解)」


 徐々に曇って来た蒼空そらを、おおぞら愛機F-2Sが飛行機雲を出しながら飛び去っていった。


*****


飛行機雲を出しながら飛び去っていったジェット戦闘機を薄目で見ていた・・・・のは、気絶した操縦者だった。しかし、小声で「化け物め・・・、アタシを堕とした代償を喰らいやがれ」と悪態を吐いて意識を手放した。

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