DANGEROUS AIRSPACE ~危険空域~

@12{アイニ}

PROLOGUE  Go to SKY!

 暗い紺色の空がとある機体を包み込んでいるが、それを気にしないように音速で飛翔し続けてどこかの地点を目指している。


〈イーグル・ワン。 本当にこの空域なのか?〉

《ああ、レーダー照射しても一切進路を変えずに飛んで行ったらしい》


 機内無線で会話をしている2人のパイロットが居た。


〈なるほどな〉

《ん? 前方、ターゲット発見!》


〈よし、近づいて警告をしようか〉

《Copy》


 二機のF-15Cが近づいて警告活動に入ろうとした時、ロックオン・アラームが突然的に鳴り響いた。


「――PYYYYyyyyyy!!!!」


〈うぉっ! フレア展開!〉


 フレアを放出して回避機動に入ると、遅れて気が付いたイーグル・ワンの機体が空中で爆散した。

《クソッ! 嫌だ、母さん――ザザッ!》


〈SHIT! こちらイーグル・ゼロ、イーグル・ワンが爆散した!至急、増援を――!〉


 刹那、F-15CEAGLEの機体が操縦者を乗せたまま爆散した。


*****


司令室で見ていた操縦者が居た、名前はおおぞら正儀まさき1等空士だ。黒髪黒目のどこにでもいる身長179センチのこの世界では珍しい男性だ。すると、女オペレーターの一人が「イーグル・ゼロ、イーグル・ワン。共にロスト!」と声を上げた。それに反応するように、司令官が「精鋭の操縦者パイロットだぞ! 私達は、人類はもうあらがう事が出来ないというのか・・・」と落胆した声を出した。


 約3カ月前、突如として世界中の空に現れた謎の機体は瞬く間に世界中の民間機や軍用機を堕として行った。人類は幾度となく残った軍用機で謎の機体UFMと戦ったが全て努力の無駄になっていた。


 そして今、2ヶ月という短さで訓練された精鋭空自部隊のイーグル部隊も堕とされた。


「司令、俺に行かせてください」


「ん? ああおおぞらか、止めておけ。レーダー画面を見ていただろう、死にたがりなのか貴様は」


 おんな司令の片山かたやまなぎさが、「第一、キミはまだヒヨッコだ。新人を発艦させようとするなんて、アタシの恥だ」と首を振った。


「片山司令がダメなら、俺の独断で行ってきます!」


 そう言うと艦橋を出て行った、その後ろ姿を片山は見送ることしか出来なかったが別の女オペレーターの一人が「良いんですか?アイツ、未帰艦みきかんになりますよ」と心配した声で話しかけた。


「じゃ、聞くが・・・お前ならどうする?」


「そうですね・・・、私なら彼にばつを与えます」


 この提案に、他のオペレーターが口を開いた。

「しかし、アイツはばつ程度で食い下がる男じゃないですよ」


「ん? どうしてだ?」

「アイツとは同期でしたが、ホットな心を持っているよ。どんな無茶な指示でも必ず帰艦してきたからね」


*****


 その頃、霄は格納庫で愛機のF-2SSTEALTH ZEROのコックピットに座っていた。昇降機が上に向かって上昇する中、計器類や背後を確認してフラップやラダーの確認をしていた。


 完全に甲板に上がった霄の機体はステルス塗装が施されたF-2の改良型でミサイルを格納するウェポンパネルや開閉式扉の付いた機関銃ポッドが付いたF-22RAPTORを思わせる白銀プラチナの機体色をしている。


『This is the ship bridge, Stealth Zero. Use second steam catapult. (こちら艦橋、ステルスゼロ。2番目の蒸気式カタパルトを使用せよ。)』


 最終確認として武装の種類を見ていた時、機内無線にオペレーターからの声が入ってきた。


「・・・え? 良いのか?」


『なんだ? 発艦したくないのか?』

「い、いや・・・」


『司令がって、あ、ちょっと! ――さっさと行って、必ず顔をまた見せろ。馬鹿野郎!』


 オペレーターの声から片山司令の声に変わると怒号が返って来た。


「・・・はぁ。 後でみっちりと理解の無いこの僕にお灸を据えてください」

『わ、ちょっと! はぁ・・・、お前。本当に世話が焼けるな』


「そりゃどうも。 ――Stealth Zero, Use second steam catapult. Take-off! (ステルスゼロ、2番目の蒸気式カタパルトを使用する。 発艦!)」


 黄色の服を着て2本指を必死に振っていたカタパルト・オフィサーに合図を出すと、すぐに腰を落として片腕を前に出す発艦の手信号に切り替わると同時に、左手にあるスロットルレバーを前に倒してA/Bアフター・バーナーを全力点火させた。


『Come back alive, 1st Class Airman. (生きて帰って来いよ、1等空士。)』


 発艦と同時にオペレーターの声が機内に響いた。それに合わせるように、「Roger, Gear up! Good shoot. (了解、ギア・アップ! いいシュートだ。)」と言うと航空無線周波帯に変更しランディング・ギアが機体に収納された。

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