第6話 新たな試練
ふぅ……。今日も無事に営業終了っと。
く、しかしあのビッチめ。最後の最後まで何かとしつこかったな。
今日はこの前ほど飲んでなかったけど……。
だからって、どんだけ俺に話題ふってくるんだよ。
普通のお客さんでもあそこまでやらないぞ。
いや、まじで勘弁してくれ。
もう。ほんとに。
それに途中、マスターはニヤニヤしながらどっか消えてったし。
あれは一体なんなんだ。ガチで。
どういう意味か、自分にはさっぱり分からんが……。
まあでも。
俺が唯一、尊敬しているマスターのことだ。
きっとこれも、Barの一人前になるために必要なことなのだろう。
うん。そう信じたい。
「お、斎藤殿っ! ようやく戻って来たでござるか!」
「おう……。心配かけてすまんな。金田君」
ふ、でも俺にはまだまだ信頼している仲間がいる。
この人は金田聡志くん。
俺と同年齢で、お互いにここのBarで働いている者同士だ。
まあ、彼の方が二年早く勤めてるから、一応先輩に当たってしまうのだが。
うん。でも初対面で会った時に、すごく意気投合したんだよな。
この人、表と裏があってちょっと変な所があるけど、すげー面白いし。
まあ、中にはちょっと抵抗ある人はいるかもしれないけど。
でも、こう見えて、めちゃくちゃ優しくて紳士な人なんだよなぁ……。
「とんでもないでござる! 拙者も当初、客に酔い潰されて自分も泥んこ状態になったことがあるからナ!」
「ああ……。俺も一昨日、そういう感じになるとこだったよ。お互い、気を付けないとな」
「うむうむ。Barでの接客業ほど、難しいものはないでござるから。こればかりは日々練習してこなすしかないでござる!」
「く、それをやる忍耐力が俺にあればなぁ……」
まあ、いずれにせよ。
マスターみたいな達人になるためには、俺もまだまだ修行が必要ってことだな。
こういう地道な努力。地道な積み重ね。
これらをやることによって、最終的に大きな花を咲かせることができるわけだからな。
学生の頃、あんまりこういうのは好きじゃなかったけど。
それでも、大人になって気づくことだってあるわけだし。
うんうん。
まだまだここから学ぶべきことはたくさんあるな。
ふ、それに。
やっぱり持つべきものは仲間だな。うん。
これ、めちゃくちゃ大事。絶対に。
「ところで斎藤殿」
「ん? なんだ、金田君?」
「マスター殿から、話は聞いているでござるか?」
「いや、俺は特に何も聞かされてないけど……」
え、何だろう。話って。
って、そういえばマスター。今どこにいるんだ?
俺があのビッチの相手をしてる途中で居なくなっちゃったから、てっきり裏にいるかと思ったけど。
見渡す限り、全然人の気配も無いし……。
まあ多分、この感じだと外で煙草でも吸ってるのかな。
でも、それにしては随分と長いような気もするけど。
うーむ。さっぱり分からんな。
しかし、この金田君の表情の変わり様。
体もなんか、ガクガク震えてるし……。
これを見る限り、どうやらただの笑える話ではなさそうだな……。
く、今度は一体何なんだよ。マスター。
まさか、また何か俺たちに新たな試練を……?
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