第140話 宿営地
風向きが変わり、むせるような血の匂いが、押し寄せてきた。一変の雲も無い晴れわたる空に数十匹の死肉をくらう鳥が舞っていた。
俺は、グレンにヘンゲし、小山の上から戦場を見下ろしていた。俺の隣に、サコンがやって来た。俺は、サコンを見ずに言った。
「サヨさんと、他の仲間は、無事に国外に脱出した」
「ありがとう。今回の戦いでオーガの安住の地はこの世界から消え去った。グレンが敵から奪いとってくれたこの指輪と杖のおかげた」
サコンには、多少なりとも魔力を使う能力があった。そのため、呪詛の指輪と大地の杖をつかって、常に戦闘は有利な状態で行うことができたようだ。
「これまで、オーガを攻めあぐねていたのが不思議なぐらいだ」
それは、そうだろう。砦に立てこもろうものなら、大地の杖で地震を起こせば、壊れない砦はなかなかない。また、トロールを指揮していたペリトの持っていた石は、持っている者の意思を狙った相手に遠く離れていても伝えることができるというものであった。
戦略眼にすぐれたサコンの意思を戦闘中でも伝えることができるのは、恐ろしいほどの効果を戦場にもたらしのだ。
「グレンが連れてきた魔族の捕虜は、兄者たちにきっちりと引き渡したから、詳しいことはじきにわかるかもしれない」
「ありがとう。奴らがどうやってここまでやってきたのかが知りたい」
「それも伝えてある。まあ、少し時間はかかるかもしれないが、分かり次第、連絡が入るだろう」
「一つ頼みがある」
俺は、金の指輪を懐から取り出した。
「この指輪を持っていてくれないか」
「何だ、それは」
「これは、開封の指輪というらしい。これを使おうとした魔族が灰になって死んだ。だから、使うことは考えないでほしいのだが」
「持っているだけでいいなら、預かるよ」
俺は、指輪をサコンの手のひらに置いた。
「他の仲間が動き出したようなんだ。少し心配だからもう行かないと」
「ああ、これからもよろしくな。ここの処理が終わったら、すぐに追いかける」
「ああ、期待している。ジンベイのところで落ち合おう」
俺は、鳥にヘンゲして、シビアの戦場を後にした。
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