第138話 白鳥城

「おお、サコン様。よくぞ戻られました」


 サコンは、出迎えに来た老人を置き去りにして大股で、風魔の城、白鳥城の門をくぐった。


「話しは、後だ、ジイ。それに俺はもう風魔ではない。こちらのグレン殿の部下だから、よろしくな」

「はい。話しはライゾウ様よりお聞きしております。ですが、もしも、サコン様が城に入られるときは、指揮を任すようにいいつかっております」


「了解した。後ろの10人は、今後俺の手足となって働いてもらうことになる。兄者によろしく行っておいてくれ」

「よろしくとは、どのように」


「この戦いが終わったら、俺たちは、この国を追い出されるということだ」


 老人は渋面を作り、返事をしなかった。


「そんな顔をするな。まあ、しばらくは、厄介になる」


 サコンは、話しながらもどんどん城の奥へと進んでいった。


 白鳥城の名前の由来はわからないが、岩山を切り崩して作られた城のようで、平屋の建物があるところは水平だが、それ以外は、たいがい傾斜がついていた。建物同士は、緩やかな坂道の回廊または、階段、洞窟などでつながったていた。


 サコンは、一番てっぺんに立つ建物の中に入っていった。そこには、大広間があり、巨大な円卓と椅子が置かれていた。


 その部屋に入ると、サコンは、一番奥の椅子に躊躇なく腰掛けた。俺は、その後ろに立った。俺の部下なのに、俺より偉そうなのは、今回は目を瞑ろう。


 後ろから、続々と、風魔の首脳と思しき者たちが入ってきて、予め決められているのだろう、迷うこと無く、各々の席に着席していった。


 すべての席が埋まったとき、サコンが口を開いた。


「状況を説明せよ」


 そうして会議は始まり、昼過ぎに一端会議が休憩に入った。


 俺は、会議を抜け出した。ここいらで別れて、自分の役目をはたすべきだろう。いつまでもやはり問題から逃げ回っているべきではない。城門までやってくると、サコンとサヤが駆け寄ってきた。


「サヤさん、走っては駄目ですよ」

「心配いりません。これぐらいで転ぶように見えますか」


「サコン。俺は、魔族を葬ってくる」

「ほんとに一人で大丈夫か」


「一人のほうが都合がいい。心配無用だ。ああ、そうだ。これを渡しておこう」


 俺は、魔族から取り上げた大地の杖をサコンに渡した。


「これで地震を起こせるはずだが」

「いいのか、こんな貴重なものをもらって」


「俺には無用の長物だから。サコンに使えるかどうかは、わからないが。もし使えるなら、役にたつと思う。なんせ、犬神の大城を破壊してしまうぐらいだからな」

「わかった。少し研究してみよう」


「グレン様、どうかご無事で」

「サヨさん。もうあんなことは駄目だよ」


「はい」


 俺は、城門を出てトロール戦線へと向った。

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