第81話 古ドワーフ王オーリー
俺たちは、兵士に付いてくるように告げられた。クロエが俺たちのことを古ドワーフの王に告げたらしい。
牢の外ではギミリが待っていた。ギミリも至急王宮に登頂し、旅の報告をするようと命令を受けたらしい。
王宮に向かいながら、ギミリがキハジに尋ねた。
「あの、赤い甲冑の男、名前はなんだったか聞くのをわすれてしまったが、どこにいるんだ」
キハジが俺を盗み見て苦笑いを浮かべた。
「赤い甲冑の方は、グレンさんと言います。私達の心強い味方ですが、神出鬼没なのです。いずれまた出会うことでしょう」
「そうか、不思議な男じゃった」
グッジョブ、キハジ。
ギミリは王宮に入るのは慣れているのだろう、まったく緊張していないように見えた。逆にデイジーはものすごく緊張し、動きがぎこちない。
ドニは、緊張するよりも先に好奇心がまさっているようで、周りをキョロキョロ見回している。俺は、盗聴のため呪術石をさり気なく落とすのでは無いかと心配し見守った。
マンノールとアルファエルは緊張といより警戒していると言った風情だ。
俺たちの中で一番、キハジが普通に振る舞っているように見えた。普段から偉い人との接点があるのかもしれない。
キハジは口の濁しながらも、古ドワーフとエルフとは、あまり仲がよくないと教えてくれた。
何回か、先導する古ドワーフが変わった。そのたびごとに、先導する古ドワーフたちの服装が華やかになっていった。否が応にも王座が近づいていることが察せられた。
宝石が散らばめられた壮麗な石の扉が現れた。その扉の前に立つと外側に扉が開き、玉座が現れた。
古ドワーフの王オーリーは、玉座に座っていた。頬はほんのり紅色で、唇は真一文字に結ばれ、目を閉じ腕組みをしていた。
何か考え事をしているのだろうか。部屋の中にいた警備の古ドワーフが俺たちの到着を告げた。
王が目を開けた。眠たそうだ。酒の匂いが香ってきた。飲んでる?
玉座の後ろから、クロエが酒瓶をもって現れた。
「これらが、儂の配下のものだ。よしなにもてなしてくれよ、オーリー」
王は、破顔し、宴会じゃと叫んだ。まったく、クロエのやつ。いつから俺たちがお前の配下に入ったんだ。
まあ、でもいいか。そのほうが話しは簡単でよい。王様もご機嫌のようだ。
俺たちはすぐさま隣の部屋に通された。そこには、すでに宴の準備ができていた。
俺は、デイジーが捧げてくれた料理、供物を頂きながら、周囲の言葉に耳を済ました。
クロエ来訪の知らせを聞いて、古ドワーフの重鎮たちが馳せ参じたという雰囲気だ。クロエの周りには、古ドワーフがひっきりなしに酒を継ぎにやってきた。
クロエの実力は古ドワーフの間で有名なのだろう。2人の老ドワーフがクロエに酒を継ぎながら話しかけた。
「最近、地下が騒がしくて困っております」
「誰かが大掛かりな洞窟、地下都市をこの近くにでも作っているかのようなのです」
別の老ドワーフもやってきて、クロエに酒をついだ。
「最近、何人か、この里から人が消えています。警備は固めているのですが、こんなことは今まで無かったことです」
「クロエ様が推薦する冒険者たちに調査をお願いしたい」
クロエは、酒を継がれるたびに、ぐいっと一気に酒を飲み干した。火酒というぐらいで、この酒のアルコール度数は高い。
実際、火種を近づけたら発火するのでは無いかと思うぐらいである。それを、一気に飲み干すなんて酒好きにも程がある。
「お主らの話はわかった」
3人の老ドワーフは笑顔でクロエに酒を注いだ。
「しかし、儂が直に出向くほどではない。儂の部下に調べさせよう」
クロエが俺を指差した。だから、いつからクロエの部下になったんだ?
「話は聞いていたであろう」
俺は、返事をせず、火酒を舌の先で舐めた。カーっと体が熱くなった。
「もちろん報酬は考えておるぞ」
「僕たちには、旅の目的がある。知っているよね」
「案外、同じ根かもしれないぞ」
「どういう意味」
「儂は、この依頼受けるべきじゃと思う」
「ただ、食い意地がはってるだけではないの? どうして、この問題と同根なの」
「女の感じゃ。実際に調べてみればわかるじゃろう」
ただ、クロエが約束してしまっては、今から嫌だと断るわけにも行かない。洞窟の探検などやったこともないが、これも経験だと諦めよう。
俺が、部屋を出ていこうとすると、ドニが小走りでやってきた。
「トムさん。実は頼みがありまして」
「今度は何?」
「この街で少し商売をやってみたいと思うのです。ですから、エルフの国で仕入れたものと、元での金貨を貸してくれませんか」
「わかったよ。がんばれよ」
俺は、今夜の宿に品物は置いておくと伝えて部屋を出た。
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