第28話 幕間
健太郎が深いため息をついた。
「おじいちゃん、トムは怖くなかったんだよね」
「何が」
「死ぬって思うと、それは怖いんだよ。でもカーバンクルがそばにいてくれたから、最後の最後は怖くなかったんだと思うんだ」
「どうだろう」
「寂しくないって、最後に言ったんでしょう」
「ああ」
「それなら、トムはきっとカーバンクルと一緒になれたんだよ。だからずっと一緒にいれることがわかったんだ。それって、すごいことじゃない」
「そうかもしれないな」
「僕にも、カーバンクルがやってこないかな」
健太郎は、窓の方を見つめた。
能無しのカーバンクルなんかに来てもらっては困る。ヤツは結局、トムを助けることができなかったのだから。
「健太郎には、おじいちゃんが付いているだろう」
「そうだね」
健太郎は、返事はしたが、不満げだ。
たしかに、健太郎にとって俺は役不足なのかもしれない。
廊下をこちらに向かってくる足音がした。
「今日は、ここまでだ。また明日くるよ。何かほしいものはあるか」
「続きを聞かせてよ」
「ああ、もちろんだ」
俺は、音を立てず病室のドアを閉めた。
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