第6話・ポーション作り(2)
俺は冒険者ギルドに向かっていた。
ドアを開くと、リオンさんとコニーさんがいつものように受付カウンターに座っていた。
俺に気づいたリオンさんに声を掛けられた。
「ちょうど良かったわ、アレックスさん。依頼が完了されておりますよ」
急いで俺はリオンさんのところに行く。
初めての依頼で、ちょっと昨日からワクワクしていたのだ。
「こちらで大丈夫でしょうか?」
と言いながらお願いしていた薬草を出してくれた。
ちゃんと、綺麗に揃えられており、束にされていた。
「はい。間違いありません」
「では受けていただいた『風の翼』さん達に報酬を支払って大丈夫ですね?」
「はい。実はそのことなんですけど、4人いらっしゃったので24000ペニーにしたんです。
ですから、24000ペニーを支払ってあげて欲しいんですが大丈夫ですか?」
「わかりました。そういうことでしたら、こちらの紙に書き直して貰っていいですか?」
俺はリオンさんに指示された通り、依頼書の報酬金額のところの数字を訂正した。
そうしていると「風の翼」のメンバーのカレンさんから声を掛けられた。
「あら? アレックスさん?」
「あ! カレンさん!」
「今、完了の手続きを終えて受け取ったところです。ありがとうございました」
「まぁ、そんなんでよかったら」
少しぶっきらぼうにカレンさんが答えた。
俺は、始めてのポーション作りにワクワクしていて、カレンさんとの挨拶もそこそこに終え、気が早るのを抑え、急ぎ家へと向かった。
早速薬草を持って台所に向かった。
手順は昨日の夜も何度も本を見て確認した。
一応テーブルの上に本を開いたまま置き、見ながら、作業を行う。
「ふむふむ。そろそろ潰すのはこれくらいでいいかな」
「鍋にいっぱいの水を火にかける」
ここでやはり、念じるべきかな?
一応やっておこう。
「
と念じてみた。
そして、先程潰した、薬草を鍋に入れる。
再び俺は
「
と念じながら、鍋の中をかき混ぜていた。
冒険者をやっていた俺はポーションは何度か飲んだことはあるが、とても苦く不味かった。
その記憶が強くあり、無意識のうちに「美味しいポーションになれ」と念じていたことは、本人はこの時気づいていなかった。
「よし、これくらいでいいだろう!」
大きめの容器に布を被せ、ゆっくりと鍋の液をこしていく。
「よくわからないが、取り敢えず、ここでも念じておこう!」
「美味しい良いポーションができますように!」
「あ、でもちゃんと回復ポーションって念じたほうがいいかなあ?」
「美味しい良い回復ポーションになれ!」
と念じてみた。
そうすると、淡い光のようなものが一瞬液体を包んだような気がしたが、一瞬だったのであまり気にせず、作業を続けた。
「よし、こんな感じかな?」
布でこされた液体の抽出が終わり、それを俺はポーション瓶に詰めていった。
今日できた回復ポーションは20本だった。
これと同じ工程で「魔力回復ポーション」も20本作った。
「これってどうやって、ちゃんとできているか試すんだろう?」
ギルドに持って行けば鑑定してくれるかなぁ……
そう思い急ぎ、その40本のポーション瓶を、袋に割れないように入れた。
急ぎ後片付けけを終え、俺はポーションの入った袋を持ち、家を出た。
「何か初めて、田舎から王都に出てきた日のようだなぁ……あの頃は、王都に行ったら何か凄いことが待っているような気持ちでワクワクしてたっけな」
「まあ、幼馴染に見捨てられるって言う、ある意味凄いことが起きたんだけどな……」
自分で自虐して、少し悲しい気分になったが、直ぐに気を取り直してギルドに向かった。
俺は商業ギルドの前に立っていた。
ポーションは冒険者ギルドでも、商業ギルドでもどちらでも買い取ってくれるが、商業ギルドだと、ちゃんと登録して販売することができるのだ。
登録すると保証金を引かれる為、商業ギルドのほうが買い取り値段は安くなるが、その分販売の斡旋や、仲介、それに万が一の時の為に保証もしてくれる。
その分登録するには一定の審査があり、ちゃんと品質の鑑定を行われる。
俺の場合、初めて作ったので、本当にちゃんとポーションとして出来ているか?
が不安だった為、鑑定をしてから販売する商業ギルドに持って行くしかなかったのだ。
「こんにちわー」
元気にドアを開け挨拶した。
先日、木材の件でお世話になった、美人の受付のお姉さんがカウンターに座っていた。
「あら? あなた先日の木材を依頼してきた、アレックスさんだっけ?」
「はいそうです! 先日は大変お世話になりました!」
俺は深く頭を下げお礼を言った。
「今日はどうしたの? また木材?」
「いえ、今日はこれを鑑定して欲しくて」
「ポーションかしら?」
「はい。回復ポーションと、魔力回復ポーションの2種類です」
「わかったわ。では預かり書にサインして待っていてくれる?」
ポーションを籠に入れ、その上に預り証を貼り付け、カウンターの上に置き、その美人の受付のお姉さんは奥の職員に声をかけていた。
俺はドキドキしながら、自分の作ったポーションを眺めていた。
「では、アレックスさん、案内しますので、こちらにどうぞ」
カウンター横のドアを開けられ、中に案内された。
依頼品を鑑定する為の部屋だった。
ああ、ドキドキする!
これが俺の初めての大仕事になるかもしれない!
と思うとドキドキと期待のワクワクが止まらなかった。
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