第3話・商業ギルドに行く

 俺は今、商業ギルドに来ている。


 取り敢えずあの、切り倒した大木の山をなんとかしなくてはいけいない。


 そう思い、俺はあの後、大量の大木を、ある程度の大きさに使切り分け、雑木林を出てきた。


 あのままあそこに放置しておくわけにもいかず、こうして今商業ギルドに買取のお願いをしようと相談に来たのだ。




「お待たせしました。商業ギルドは初めてのご利用ですか?」


「はい。冒険者ギルドしか利用したことがなく……」


「わかりました。今日はどのようなご用件でしょう?」


 目がくりっとした笑顔が素敵な可愛らしい女性が聞いてきた。


「実は……雑木林で沢山の木を切りまして。ちょっと量が多くて……それで、こちらの商業ギルドで買い取ってもらえないかと思いまして」


「そうですか。それは何処に置いてあるんですか?」


「量が沢山あるんで、雑木林に置いてあるままです」


「そうなんですか? その雑木林は近くですか?」


「はい。ここからそんなに遠くはないんですけど、そこから運び出す手段が俺にはなくて……荷車に載るぐらいの長さには切りそろえてはいるんですけど……量が多くて俺一人だと難しいので、こちらでお手伝いをしてくれる方を斡旋して貰えないかと思って」


「なるほど。その量が多いと言うのはどのくらいの量ですか?」


「そうですねぇ。はっきりとはわかりませんが、荷車に山積みにして5台分? ぐらいでしょうか?」


「え?」


 受付のお姉さんが固まった。


「ちょっと、お待ちいただけますか?」


「はい。すいません。こんな無理なお願いしに来て」


 俺は申し訳なく思い謝った。

 暫く待つと、先程の受付のお姉さんと一緒に、一人の男性がやって来た。


「お待たせしました。アレックスさん」

 笑顔でお姉さんが言った。


「いえ、俺の方こそ、突然こんなこと頼んですいません」


「君がアレックスくんかい?」

 背が高く、端正な顔立ちをした男性に声を掛けられた。


「はい。すいません突然」


「いや、構わないが、大量の木材があると聞いたんだが?」


「はい。俺一人では運び出せないので、此方で運ぶのを手伝ってくれる人を紹介して貰えないかと思って……」

 申し訳なさそうに俺が言うと


「わかった。直ぐに手配しよう」


 そう言ってその男性は奥の職員に何か耳打ちしていた。


「アレックスくんと言ったね? 木材を運ぶ手間賃を引いた分と、それを売る仲介料を引いた分が君の取り分になるけど、それで構わないかい?」


「はい! 是非お願いします!」



 良かったーー!

 パーティーをクビにされ、明日からどうやって生活していこうかと悩んでいたところだったし。貯金もあまりない今、無職になった俺はどうしようかと思っていた。

 手数料を取られ、例え少ししか入らなくても、無職である今の俺にとっては貴重な収入にちがいない。

 直ぐに荷車を用意した職員さんが数名やってきた。


「近くにあるのかい? その雑木林は?」

 先程の男性が聞いてきた。


「はい、そんなに遠くはないです」


「なら私も一緒に行こう」


 その男性が言った。

 俺は、先程の受付のお姉さんにお礼を言い、その人達と一緒に商業ギルドを後にした。





────「ここです!」


「ほう。この雑木林の中かい?」


「はい。そうです」


「ところでこの雑木林は誰かの物かい?」


「ここは元々俺が住んでいる小さな家、それです」

 俺は直ぐ近くの俺の家を指さした。

「その大家さんだった、おじいさんが持っていた雑木林だったんですが、昨年おじいさんが亡くなってしまい……古くなったその小さな家を雑木林ごと貰ったんです」


「それは、大変だったね」


「はい…… 田舎から出てきた俺を、おじいさんは自分の孫のように可愛がってくれていて……」


「そうか」


 そんな話をしながら、雑木林を歩いていたら、木材を切って置いていた、広い場所にたどり着いた。


「ここです」



「これは……また、凄い量だねぇ……これは君一人で?」


「はい」


「これだけの量の木を切り倒して、長さを揃えて切る作業は大変だったろう? 君の若さで……」



 言えない……

 ほんの1時間程度で終わったことは。

 この雰囲気で言うのはちょっと……


「そうですね……」


 俺は誤魔化した。




 すいません……

 別に騙しているとかではないんですけど。

 何となく、言わない方が良いような気がしただけなんです。 

 悪気は無いです。ごめんなさい。

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