第33話
~中弓事務所~
「中弓社長、産国局から取材の取次が来ているのですがどのように返しますか?」
「そろそろこうちゃんのVも全国放送に乗せるべきかな...」
「正直に言いますがこの国において主に女性に関していえばほとんどの方が浩二様を見ていると思いますが...それと、その、こうちゃんと呼ぶのを社内ではやめておいた方がよいのではないでしょうか?もし従業員の方々に聞かれたら暴動になりかねませんよ?」
「やだっ!」
「はぁ....もう一回、いつもの私に戻るね、あのね志保、今やあなたの息子は日本で...いや世界で大注目されているの、これは今、とんでもない加速度で伸びてる配信業においても異例な伸び方よ、それに、今、松杉の人の登録者数とフォロワー数知ってる!?、登録者はもう1億人を超えて、フォロワー数は10億人なのよ?どこぞの国の大統領っての....そんな方がその事務所の社長と仲良くしてて、それだけなら雇い主と雇われている人って関係でまだ流されるけど愛称で呼んでるなんてバレたら冗談抜きでこの事務所に人がなだれ込んでくるわ....今でさえ、貴方の息子への手紙でうちの拡張したばかりの手紙専用倉庫が破裂寸前になっているのにこれ以上、ヤバくなったら本格的にまずいわよ」
「うぅ、うちの秘書が正論で攻めてくるよぉ...助けてこうちゃん!『大丈夫だよ、お母さん』...あぁ~いい!!」
「ちょ、ちょっと貴方、松杉s.....息子の音声なんて録ってるの!?」
「ん?今、なんか聞こえたなぁ~」
「///」
「......その可愛さに免じてこのこうちゃんボイスBOX EXバージョンから好きなボイスを一つだけしんぜよう...」
「....そしたら、この『愛してる』ボイスで....」
「........あなたって。欲望に忠実なのね」
「う、うるさい!なによ!何か悪い?家の壁中に松杉様の写真を張りまくってて、松杉様のボイスを聞かないと眠れなくなっちゃったし松杉様の声を一日に三時間聞かないとだめになっちゃった、私のナニガ悪いの!?」
「動揺しすぎでとんでもないことカミングアウトしてるうちの親友。」
「....はやく、頂戴よ...そのボイス...そういえば、その声、どこからもらったの?」
「まず。こうちゃんの声を録りまくるじゃない?」
「うん」
「その後にAIにこうちゃんの声をずっと聞かせて、こうちゃんの声のテンポとか音程とかを全部処理して、声を自然に言ってるように出力したものをこのレコーダーに録ったの、正直に言ってそのまま音をダウンロードする手もあったけど、ちょっとレコーダー特有の雑音が入ってる方が盗聴してるみたいで...その、興奮するから、レコーダーに録ってみたの、ちょっと試聴してみる?」
「う、うん」
「ほら...」
『愛してる....世界で一番お前を愛してるよ』
「....」
「大丈夫?」
「はっ!ここは天国?いま、目の前に天子様が現れた気がするの....」
「ほら、由香!現実に戻って!」
「....これさ....もし...そう、もしだよ?これをオークションに出してみようなら...」
「多分、軽く億...いや何百億とかのレベルかもね...たった5秒だけだけど....これを聞いちゃったら、並の女性は帰ってこなくなるし...」
「どこかにジュラルミンケースある?」
「まあ、持ち帰る方法は後で考えるとして、だいぶ脱線しちゃったけど、なんだっけ?」
「あ、そうでした、えーっと産国局から取材の依頼です」
「今一度知らしめるためにやってみてもいいかもね....こうちゃんしだいだけど」
「一応、そのことを伝えておきます」
「よろしくね」
「かしこまりました、志保社長....それでケースをいただけたらと思っているのですが...」
「すぐ用意しましょ」
「ありがとうございます」
「あ!注意点が一個、それ、絶対にスピーカーで聞かないでね、多分あなたの隣の家の人もおかしくなっちゃうから、オススメとしては最小音量にしてイヤホンとかで聞くのがいいと思うよ、音量を上げると多分、次の日、起きられないと思うから」
「心にとめておきます」
「そしたらちょっと待ってて」
「はい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます