第4話 スケッチブックと魔法の検証


 魔法の事を考えていると新しいページが開くようになった事から、スケッチブックと魔法が関係しているのは確かだが使用方法は分からなかった。

「神様、取説とかないのですか?」

 ボヤキながら天を仰ぐように天井を見上げた。

(そうだ!取説はここにあったんだ)

 初めてアイテムボックスを開いた時の事を思い出すと、三枚目の画用紙を切り取ってアイテムボックスに吸い込ませて、1ページ目をタップするとリストが現れた。


   ― ― ― ― ― ― ― ―   


 3ページ目の画用紙  スケッチブックの付属品。

            火属性魔法の媒体品。


   ― ― ― ― ― ― ― ―   


(火属性魔法か。画用紙には何らかの魔法効果があるんだなァ)

 画用紙を取り出してマッチ棒を描くと、先端に小さな炎を描いてみたが何も起こらなかった。

(違うのか?)

 絵を描いた画用紙をアイテムボックスに戻したが、表示されたリストは同じ内容だった。

(どうしたら魔法が使えるんだ? 上手く描けている思うんだがな)

 マッチをロウソクに変えてみたり、色鉛筆で炎を赤くしてみたが何も変わらなかった。

「どんな絵でもそうだが、自分が描いた絵を完成させるにはサインが重要なんだぞ」

 何が足りないか分からずに諦め掛けた時、美術部の顧問の先生の言葉が脳裏に浮かんだ。

「遣ったぞ!」

 炎を描いた絵に『Aizawa』のサインを書き込むと、画用紙の上で小さな炎が揺らめいたので思わず叫んでしまった。

「これが魔法か!」

 何もない所に炎と言うエネルギーが生まれた事に驚くと共に画用紙が燃えないかと慌てたが、空間に浮かんで揺れている小さな火は周囲に影響は与えなかった。

 恐る恐る手を近づけると熱さは感じるので、普通の炎と同じ熱量はあるようだ。

 スケッチブックを閉じると炎は消えて、3ページ目の画用紙は真っ白な紙になった。

 同じように四枚目の画用紙を切り取ってアイテムボックスに入れると、リストが表示された。


   ― ― ― ― ― ― ― ―   


 4ページ目の画用紙  スケッチブックの付属品。

            水属性魔法の媒体品。


   ― ― ― ― ― ― ― ―   


 早速、水滴を一滴描いてサインを入れてみると、雫が一滴画用紙の上に落ちて流れた。

 スケッチブックを閉じると、切り取った画用紙に絵を描いてサインを入れても魔法が発動しなかったのでアイテムボックスに入れると、


   ― ― ― ― ― ― ― ―   


 画用紙   スケッチブックから切り取った紙。


   ― ― ― ― ― ― ― ―   


 と、リストの表示がただの紙に変わっていた。

(他にどんな魔法があるんだ?)

 神様の前では全てのページが開いたスケッチブックだが、今は四枚しか捲れないのでそれ以上検証が進まなかった。

「昼食の準備が出来たわよ!」

 階下から女将さんの元気な声が聞こえた。

「直ぐに行きます!」

 時間を忘れて魔法の検証をしていたが、特に疲れは感じていなかった。

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