第5話 魔の手

谷川タニガワさんってスポーツとかやります?僕テニスするんですよ。今度、業者の人とテニスやろうって言ってるんですけど参加しません?結構皆さん参加される予定ですよ。」


うっとうしい。


美里ミサトは思う。あの最悪の出会いのおかげで距離が取れる、私はエリア外だと高を括っていたのに颯斗ハヤトが何かとマトわりついてくる。


颯斗ハヤトのことはさておき、職場の人との最低限の交流は必要かな。テニスは得意だし。  


「わかりました、参加します。で、Aさんの処置ですけど、今お願いできますか?」


ふたりは並んで病室へと歩く。一切喋らない。ピリついた空気。病室に入り処置を始めると


「なんか気が合わないね。」


颯斗ハヤトが言う。そう補助のタイミングがいまいち合わない。今のふたりの関係そのものだ。美里ミサトはこのノチ颯斗ハヤトの魔の手に引きずりこまれることになるとは想像もしていない。


週末のテニス、億劫オックウだな。たまたま休みだったばかりに。ああ、仕事だったら良かったのに。でもこの週末スルーしてもまた誘われるに違いない。一度だけ行っておくか。今までの感じ、明らかに悪そうな人ではない。むしろ普通に良い人。仕事もできる。女癖だけ悪いの?


颯斗ハヤトの後ろについてカンファレンスルームに戻りながら、美里ミサト鬱々ウツウツとしていた。


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