第4話 推し活

颯斗ハヤトは自分にまつわる噂話は知っている。知っていて自分のスタイルは変えない。


彼には溺愛するかわいい妻と二人の子どもがいるが法律上も倫理的にも問題はない。なぜなら彼の「各病棟に女がいる」と言われるスタイルは医師という激務の中で楽しみを見出すためのものにすぎない。浮気でも不倫でもない。「推し活」みたいなものだ。


各病棟に「推し」的ナースがいれば楽しい。ときめくしコミュニケーションもとりやすくなる。全て気分良く円滑に仕事をこなすための戦略だ。


そしてなぜか皆にずるいとか最低だとは言われない。「推し」なのよねと笑いながら同僚と話せるようになる。必ず、それもあっという間に周囲に認められてしまう。


なぜなら、彼はすこぶる頭が切れて仕事ができる。医師としての能力、判断力、決断力に富んでいて天職と言っても過言ではない。さらに患者はもちろん同僚や後輩、出入りの業者にさえ優しく、思いやりがあり、ユーモアもわかる。そこにスタイルの良いイケメンとくる。彼だからすべて許されてしまうのだ。そう、颯斗ハヤトは完璧な人間だった。


そしてその彼が今最も気になっている人間。あの偉そうなナース。美里ミサトだ。なんとかしなければ。仕事がやりにくくて仕方ない。何か共通点を見つけなければ。あの最悪な出会いのせいで、美里ミサトの思いとはうらはらに、彼女は彼の標的となってしまった。

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