第3話 橡葉の森

橡葉の森

 

水仙の花は肩寄せ春を待つみぞれまじりの雪の降る朝

赤々になお透き通る赤に染め春嵐(しゅんらん)一過の夕焼け去りゆく

やって来たカブトクワガタススメバチ橡(くぬぎ)の森の居酒屋開きに

あっラズベリーの群生だ石垣の笹の中より刈り分ける夏

ファイアーの残り火囲む子どもらは和解のプロセス始めているよ

礼拝堂の小さな庭のここかしこオオマドボタルの幼虫光れリ

ニイニイにアブラにクマにミンミンにツクツクカナカナ猛暑過ぎ行く

「一刀両断」求め来たりし我に問う戦闘能力奪う剣あり

レンジャーの訓練終えての昼食会頬こけた君に清さを感じて

降り積もる橡(くぬぎ)の落葉を照らす影夜半の月は凛と光れり

    

 (『年間歌集』 平成二十年十一月 兵庫県歌人クラブ)


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