第4話 シルビアの秘密
>> シルビア
アベル様、漏らしてないと良いけれど。
でも、実力差を把握して、無理をしないのは、優秀な証拠だと思う。
流石、国を支えてきた元帥。
その後も、大波乱の連続。
私のファミリーが主な原因。
それをさくっと退けるファイン様は、やはり格好良い。
思わず応援にも熱が入ってしまう。
どよっ
再びのどよめき。
それなりに実力を認められていた、カインお兄様。
宰相として政務に携わっていた、父上。
激闘の末、父上がカインお兄様を下し。
それが衝撃であったようだ。
いや、父上の方が圧倒的に強いのは確かだけれど。
二人共、実力は出していない。
派手に魅せる戦いをしただけだ。
そして。
「お義父様……胸を貸して頂きますよ」
「ぬかせ」
ファイン様と、父上の試合。
勿論、両者共、本気は出せないだろうけど。
「万物を貫け、許す存在の剣!」
かなり威力を抑えた、攻性神聖魔法。
まず使用に素質が必要な、レア属性だ。
光の剣が複数出現。
父上は空間転移で躱し、上空で静止。
どどど
爆音、激しい土煙。
そして。
ボロボロになったリング。
「殿下が魔法を!?」
周囲のどよめき。
驚きのポイントはそこなの?
「アークフレア、アークボルト、アークウィンド!」
父上が流れるように、(かなり抑えた)魔法を行使。
「静寂に沈め、夜の帳」
ファイン様の魔法が発動。
父上の魔法が、全て消失する。
意味が分からない。
これまた素質が必要な、闇魔法。
人間が使える物なの?
でも、格好良い……
もはや周囲は言葉を失っている。
闇魔法の存在をそもそも知らない人が大半では無いだろうか。
父上は呆れた様な表情だ。
「火、水、風、地、重力、雷」
ファイン様が流れるように魔法を行使。
いや、光と闇に比べたら、修行次第でどうにかなる他属性とは言え。
それを複数種類、それなりの練度で使えるのはおかしい。
というか、逆に使えない属性はあるのだろうか?
「ワールドオブハーデス!」
父上が闇魔法でファイン様の魔法を消去する。
ち
ファイン様が、剣を構え。
ちなみに、安物の鉄製の剣だ。
本来であれば、鉄で父上を傷つけることができる訳が無いが。
ファイン様なら、できるんだろうなあ。
「むう」
父上も、杖を構える。
ロッドオブハーデス。
大陸の秘宝であるそれは……多分、まともに打ち合ったら、切られそう。
ガキガキガキィン
見た目だけは派手な打ち合い。
だが、本気ではない。
むしろ、魅せる為の技。
別に、手を抜いているわけではない。
あれだけの技を繰り出すのは、僕では不可能だ。
超常の存在だからこそ為せる技。
そして。
カキン
ロッドオブハーデスが飛び、転がる。
「降参だ」
父上の降伏宣言。
わああ
盛り上がる会場。
「流石はアズラ宰相。見事な腕前でした」
「完敗である。まこと、この儂が地の者に土をつけられるとは……」
父上が頭を振る。
もはや、初戦で負けた元帥の事など、人の意識には無い。
僕のファミリー達が、実力は隠しつつも、それなりの力を魅せ。
そしてファイン様と父上の戦い。
大会開始前の常識など、吹き飛んだだろう。
--
>> ディボラック
許せん……許せん……
あと一歩。
あと一歩で、息子に王位が転がり込んだ筈だった。
無能な馬鹿王子の王位継承権剥奪。
それにより、息子が王位継承権一位に。
学院は主席で合格、武も、元帥に次ぐ大会二位の実力。
国民からの人気も、馬鹿王子とは比べ物にならず。
だが。
あれから全てが狂ってしまった。
王子が連れてきた、絶世の美女、シルビア嬢。
あれこそ息子に相応しい伴侶と思ったものだが。
加えて、シルビア嬢の親族達。
無茶な人事で要職につけたまでは良かったが、そのいずれもが、十二分の働きを示し。
そして、神聖なる武術大会で、文句無しの上位独占。
加えて、王子自身は優勝。
何より。
文官として極めて有能だったアズラ宰相。
だが、武術大会準優勝の実力まで持つ。
国民の人気も、完全に王子に傾いた。
最早、息子の出る幕は無い。
むしろ、要職の席すら残されていない。
まだだ。
まだ、逆転の目はある。
全てを狂わせた元凶。
シルビア嬢。
あいつこそが、全てを覆す逆転の鍵。
あの女さえ押さえれば、王子も、その親族も、御せる……
そう。
我が先祖が天から認められ、託された、伝家の宝刀。
時を超えて法を護る番人。
時の蛇への連絡手段。
それを用いて、王子と、その手の者による、国の私物化を。
いや、世界のバランスを崩す、禁呪。
国民の搾取。
世界への脅威。
何でも良い。
とにかく影響の大きそうな何かを……何かを、でっち上げて……
--
>> ディボラック
「ご機嫌麗しゅう。シルビア嬢」
ここは、王城から離れた、辺境都市の、城。
ユグドラシル聖伐連合。
この地にちなんだ名の、魔に対抗する為の連合。
時の蛇への連絡は、上手く行った。
上手く行き過ぎた。
時の蛇の全面バックアップで、この居城を確保。
シルビアの確保。
そして王の暴走に不満を持つ同士達の集結。
近隣の諸外国からも、支援の手が。
「オリンファス卿!貴方程の方が、何故こんな真似を!」
シルビア嬢が叫ぶ。
「王子は、禁断の力に手を出した。神はそれを聖伐の対象と考えられたのだ」
「そんな事実はありません!」
シルビア
「貴方の秘密も、協力者の手によって暴かれているのです」
「私の……秘密?」
「そう……貴方は……本当は男だという事もね」
「なっ!?」
シルビアが、目を見開く。
その事実を聞いてさえ、信じられない程美しいが。
このシルビアは、本当は男らしい。
王子を騙しているのだ。
……案外、王子にその手の趣味があり、知った上で囲っていた可能性はあるが。
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