第3話 突き出た手

 私、学生時代は京都で過ごしました。


 憧れの京都、憧れの大学。


 楽しい学生生活。


 でも、そんな日常にも、ふと非日常的なできごとが起こりました。


 あれは大学の三回生か四回生の頃。


 夏、といってもそんなに蒸し暑かった記憶は無いので、初夏か、もしかしたら初秋だったかも知れません。


 学生アパートの自室で寝ていました。一人で。


 ふと夜中に目が覚めました。


 おかしいです。


 部屋が暗くありません。


 といって、私が電気を消すのを忘れたとかいうのではなく。


 「赤みを帯びた光で部屋が照らされている感じ」とでも言いましょうか。


 私は何か嫌な感じはしましたが、薄手の布団一枚を頭から被って寝ようとしました。


 その直後です。


 ドスン。


 げっ!


 何かしら重い物が、布団の上に、私の身体の上に落ちてきた感じがしました。


 くっ、何かわからないが重いっ!


 その時、布団の中で目を開いた私は見たのです。


 布団から突き出した二本の腕が、私の胸を押さえつけているのを。


 思わず私は目を閉じて念仏を唱えました。


 気がついたら、朝の七時過ぎでした。


 外はすっかり明るくなっていました。


 夢にしてはリアルな重さであり、苦しさでした。


 これは私が京都での学生時代に経験した、一番怖い実話です。

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