錫婚式
ここで時系列は少し飛んで2017年の4月28日。この日と言えば、冬未と隼瀬の誕生日、そして節目となる10回目の結婚記念日、錫婚式である。というわけで例によって咲良と充希が親友夫婦の記念日のお祝いに訪れていた。
「はい、これ私達から」
「「ありがとう」」
「あの学校での結婚式からもう10年か・・・早いね」
感慨深げにそう呟く充希。
「あん時は充希達が先生達に働きかけてくれたつよね、ありがとう」
「まあ親友として当たり前の事したまでたい、ねえ咲良」
「そうそう、それにあれきっかけで私も充希にプロポーズする決心ついたし、こちらとしても感謝しとるよ」
あの時の感謝を伝え、返って来たその言葉に隼瀬も冬未も本当にいい友達を持ったなと、あの時と同じように目頭を熱くさせる。と、隼瀬は先程くれたプレゼントとは別に充希が何やら荷物を持っている事に気付く。
「充希、それ何ね?」
「お、さすが隼瀬、目敏いなあ。今準備するけん待って、テレビ借りるよ」
そう言って充希が取り出したのは一台のノートパソコン。彼はせっかくだしとそれをHDMIでテレビに繋ぎ、動画を再生する。そこには育美や広海、碧、恵美ら冬未、隼瀬の友人やあの結婚式に携わった当時のクラスメート達からの祝福メッセージが次々に映し出される。
「皆・・・これいつの間に・・・・・・」
「あ、美紀だ、懐かしい・・・・・・」
「年明けくらいから皆に連絡取って送ってもらったつたい」
「何人か連絡先分からんで大変だったばってんな・・・・・・ってまた泣きよるなこん夫婦は」
総勢40人近くのメッセージ動画を見終わって双眸を崩す冬未と隼瀬にやっぱりなと笑い合う咲良と充希。
「だって皆・・・ねえ冬未・・・・・・」
「うん・・・こぎゃんと泣かんわけなかろが・・・・・・」
「ま、ほんなもんのサプライズはこれじゃなかつばってんね」
「「え?」」
「まあついてきて」
そう言って充希に促されるまま外に出て車に乗り込んだ夫婦が連れられた先は・・・・・・
「「四高・・・?」」
母校、そして10年前に結婚式を行った場所。そして10年前と同じく冬未は咲良に、隼瀬は充希に介添されそれぞれ着替え、あの時と同じように体育館で待つ皆の前に姿を現し、祝福の言葉を投げかけられる。
「10周年おめでとう!」「隼瀬、あん時と変わらんで羨ましかー!」「冬未、これからも隼瀬ちゃん大事にしろよ!」「私なんかまだ独身てから相変わらず見せつけやがって!」「羨ましい!」
祝福の言葉に混じって一部妬みのような声も飛び交う中、夫婦にとってのキューピット的存在の恵美が輪の中から歩いてくる。
「冬未、隼瀬ちゃん、10回目の結婚記念日おめでとう。ほんなこてあん時から2人はずっと変わらんな・・・」
皆が見ている前でも相変わらずのバカップルぶりを見せつける親友夫婦に苦笑しつつ、言葉を紡ぐ恵美。
「これからも末永くそぎゃんして見せつけてはいよ。ま、私が言わんだっちゃ変わらんどばってんね」
そう言って笑う恵美に隼瀬も冬未も微笑み返し、彼女の言葉を肯定する。
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