年越し編 後編
冬未の温もりに落ち着いてついつい眠ってしまうものの、15分程ですぐ起きた隼瀬。
「あ、寝とった・・・冬未、枕なってくれとったと?」
「うん、まだちっと休んどくたい」
「そぎゃんわけいかんたい」
そう言って部屋を出て下の台所に向かう隼瀬。
「お義父さんごめーん、寝ちしもとった」
「んねんね、ちゅうかそぎゃん15分くらいで休めたね?あれならまだ休んどってよかばい」
「んね、なんか冬未に抱かれて寝よったら結構回復したけん」
恥ずかしそうにしながら言う隼瀬を見て、本当にこの子可愛いなと思う亮である。して、ここから急ピッチで作業を進め、何とか年をまたぐ前に終わらせた隼瀬と亮。
「「あー終わった!」」
「後は年越しそばだけか、もうしよかんとしゃが年内間に合わんばいね」
「うん、冬未呼んでくんね」
おせちの準備は早めに終わったとはいえ、この時点で時計の針は11の数字を回っており、すぐに年越しそばの準備に取りかかる亮。年越しそばというものは明ける前、年内に食べきらないと縁起が悪いと言われているのだ。
「冬未ー、そば食べるばい・・・あ、陽葵も芳美も起きたか、ちょうどよかった。今ね、じいじがおそば作ってくれよっけん皆降りてきて」
「「はーい」」
というわけで下の居間に葛西家全員揃って亮が作ってくれた蕎麦を食べ、皆食べ終わって隼瀬が後片付けを終えたタイミングでカウントダウンを迎える。
「3、2、1・・・あけましておめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでと!」
隼瀬を皮切りにおめでとうを言い合った後、特に隼瀬と亮は疲れており、すぐに寝る葛西家の一族。
翌朝
疲れていても早めに目を覚ました隼瀬が早速台所へ行くと、亮も既に起きていて雑煮のだしを作っていた。
「あらー隼瀬ちゃん、まだ寝とってよかて」
「いやーなんか目ぇ覚めちしもて。てか僕するつもりだったて、ごめんお義父さん」
「なーん、僕もまだ年寄りじゃなかっだけん、隼瀬ちゃんになんでんかんでんさするわけいかんもん」
いつも実家に帰る度、亮は自分を気遣ってくれて、本当にこんな人が舅でよかったなと思う隼瀬である。そのうち、春美も冬未も子供達も起きてきて皆でお屠蘇を飲む。普通なら熊本の正月のお屠蘇と言えば赤酒(砂糖醤油のような味の赤褐色の酒)で、今年も用意されているが、冬未と隼瀬は陽葵や芳美がどこか行きたいと言い出した時の事を考え、その娘達と同じ甘酒を飲む。して、おせちを少し食べた後、子供達を連れて向かいの隼瀬の実家の方に挨拶に行く冬未と隼瀬。
「ただいまー、あけましておめでとう」
ちなみに今ただいまーと自分の実家のように言っているのは隼瀬ではなく、冬未の方である。出迎える隼瀬の父、孔も普通にお帰りと出迎える。葛西家で隼瀬がそういう扱いを受けているように、こちら斎藤家でも冬未は昔から我が子のような扱いなのだ。して、こちらの親達と挨拶を交わし少し話した後、初詣ついでに買い物に出かけ、翌日2日には自分達の家に帰った葛西家であった。
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