年越し編 中編
「冬未ー、陽葵ー、芳美ー、ご飯よー」
おせち準備は一旦中断して、夕飯の焼肉の用意をして冬未と子供達を呼ぶ隼瀬。ちなみに春美は向かいの隼瀬の実家に料理を持って行ってからまだ戻っていなかった。
「春美さんなまた孔ちゃん達と飲みよって帰ってこんとだろ、まったく・・・」
「毎年だんね」
「もうあぎゃんぬすけどん(ふざけた人)なほっとっちかぁ僕達だけで食べよこだい」
「ばってんお義父さん・・・」
「よかよか、帰っちこん方が悪かもん」
というわけで春美抜きで食事を始める一同。朝からほぼほぼ台所に立ちっぱなしで疲れている隼瀬と亮はビールが体に染み渡る。
「「かぁ〜、うまか〜、こるこる!」」
「隼瀬とお父さんなほんなもんの親子んごつしとっ」
まあ両親の昔の話を聞けば、隼瀬が自分の父と似ているのも分かるなと冬未は思う。して、食べ始めてすぐに春美が案の定酒の匂いをプンプンさせて帰ってくる。
「ただいまー!あ、なんやもうご飯食べよったつか」
「あたがいつまっでん帰ってこんけんがら隼瀬ちゃんにももうほっとけち言いよったったい、たーだ料理届け行っただけでぎゃ〜ん酒ん匂いプンプンさせちかぁ」
「なーん、私すぐ帰るけんち言うたばってん暁美ちゃんの一杯付き合って言うけん」
「ほんでいつも一杯じゃ済まんと自分でん分かっどだい?!隼瀬ちゃんもギリギリまでお義母さんなまだかねて待っとってくれたっだけんね」
「はーい、ごめんなさーい」
酔っ払ってふざけた様子で謝っているのかよく分からない春美。隼瀬は一応笑って流すが、その婿の内心を慮る亮はガチギレし、孫達の見ている前で怒るのもあれだからと別室へ妻を連れていく。
「なんやさっきの態度な!隼瀬ちゃんも冬未も優しかけん何も言わんばってん、家族揃ってご飯食べようて、あたが肉好きだけんちっとよか肉ば用意したて隼瀬ちゃん言いよって、そぎゃんえくろちから(酔っ払って)今頃帰って来てから、隼瀬ちゃんも表面は笑いよったばってん、顔ひきつっとったたい!本心じゃ何思とるかてあたな考えんとな!」
「・・・・・・」
「酒ばいっちょん飲むなとは言わん、ばってんあん子達帰って来とっ時くらい親としてしゃんとせんか!陽葵も芳美もばあばがそぎゃんごたったらどぎゃん思うかよっと考え!」
「・・・すんませんでした・・・・・・」
亮の本気の説教にすっかり酔いが覚め反省する春美は自ら娘夫婦の元に戻り改めて深々と頭を下げる。
「隼瀬ちゃん、ごめんなさい、冬未も・・・・・・」
「お母さん、私なよかけん隼瀬にしっかり謝って」
いつになく厳しい表情の冬未。
「隼瀬ちゃん、本当に本当にごめんなさい・・・・・・」
「・・・・・・お義母さん、もう酔いは覚めたごたんね」
「うん・・・」
「まあお義父さんがぴしゃっと言うてくれたろし僕もそれに免じて許すよ。ほら、お義母さんの好きな豚トロ、とっとったけん食べね。あ、お酒はなしよ」
そう言ってニコッと微笑む隼瀬。その後改めて皆で焼肉をつつき、その後片付けを春美にさせる亮。
「付き合わせたつはうちん姉ちゃんだし、なんかちっとかわいそか気がしてきたな」
「ばってん一杯だけですぐ帰れたろけんね、隼瀬ちゃんもそぎゃん考えんちゃよか。ずっと向こうで飲んでばっかおったっだろけんこんくらいなしてもらわんとしゃが」
して、まだやる事はあるが、とりあえず食後の歯磨きをして一旦部屋に戻る隼瀬。
「ふぅ、やっとなんか落ち着いたばい」
「お疲れ様、ごめんね隼瀬、お母さんが迷惑かけて」
「んねんね、もうお義父さんがしっかり言うてくれたけん」
「そっか・・・」
「てか子供達全員寝たつね」
「うん、陽葵も芳美も日付変わるまで起きとく言いよったばってん、昼間結構遊びよったけん疲れたっだろね」
「ふふ、まあそぎゃんもんよね」
「隼瀬もちっと寝とく?」
「んね、起きれんだったら困るけんね。ばってんちっとこぎゃんさして」
そう言いながら、冬未の肩にもたれかかり目を瞑る隼瀬。その頭をそっと撫でる冬未。
「冬未に撫でらるっとすき・・・」
「よっぽど疲れたつな、よしよし」
「うん、だけん冬未成分ば補給せんとしゃがにぇ・・・・・・」
そのまま肩で眠りに落ちる隼瀬を愛おしく見つめる冬未である。
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