バカップル



ようやく厳しい残暑もおさまってきた頃、葛西家に冬未の父、隼瀬にとっては舅にあたる亮が1人訪れた。この世界での舅と婿と言えば、普通はそれなりに色々とあるものだが、隼瀬の場合は子供の頃から冬未の両親にも可愛がってもらっており、結婚後もさほど関係は変わらない。逆も然りだ。



「お義父さん、家さん来っと久しぶりね」



「まあ正直、こぎゃん近くおるけん逆に行く理由なかなあて思てね」



「はは、なんか分かる。はい、こちら粗茶ですが」



「なーん、隼瀬ちゃんそぎゃん気ぃ使わんでよかてから。てか女ん子ばっかてからこぎゃん綺麗にしとっとね、やっぱ隼瀬ちゃん凄いばい」



「んねんね、冬未も結構掃除とかしてくるっし」



「あの子も仕事ばっかりじゃなくてそぎゃんとこもちゃんとしよっとね」



「うん、お義父さんの前でこぎゃん言うとしゃが恥ずかしかばってん、僕にとっちゃ最高のダーリンよ」



「ふふ、隼瀬ちゃんにそぎゃん言うてもらうと親としても嬉しかばい」



照れながらも面と向かってそんな台詞を言ってくれて、冬未がこの子を選んで、否、この子に冬未を選んでもらって本当によかったなと思う亮である。と、そこへいつものように充希が隣から訪ねてくる。



「おお、充希ちゃん久しぶり!」



「冬未ちゃんの・・・・・・お久しぶりです、なんだかんだ冬未ちゃんと隼瀬にはずっとお世話になっております」



「そぎゃん堅苦しいとなよかて。そういや弥咲ちゃんなおっちゃん初めて見るばい」



「あーそういやそぎゃんだったっけ、てかお義父さん、璃華も実際に会うと久しぶりだろたい」



「うん、隼瀬ちゃんが写真は送ってくれよったばってんね、璃華も弥咲ちゃんももうこぎゃんふとなったか」



「そらもう7ヶ月なるけんねえ」



「ほら弥咲、陽葵ねーねと芳美ねーねのじいじよ」



パパに亮の顔を見せられ、ニコニコと笑う弥咲。



「はぁ〜、我が孫じゃなくたっちゃ可愛いか〜。ばってん充希ちゃんな久しぶりの赤ちゃんで大変ね」



「んねんね、隼瀬達にも色々手伝ってもろたりしとるけんですね」



「なんいいよっとね充希、そらこっちもたい」



「わー、なんか互いの家で助け合って、冬未と隼瀬ちゃんの時んごたね」



「冬未ちゃんも隼瀬もこぎゃんいい子に育ててくれてありがとうございます」



「充希、お前どの立場や」



充希もふざけつつ、笑い合う3人の主夫達。そして亮はやはり、充希に隼瀬と冬未の昔話をしだす。



「ほんで隼瀬ちゃんが冬未に「おむこさんにして」とか言い出して、美香さん、隼瀬ちゃんのお母さんな複雑な顔してねえ」



「あぁ、なんか想像つきますね(咲良のあの時の顔と一緒だろな)」



「孔ちゃん(隼瀬の父親)の方な笑いよったばってんね、ほんでから隼瀬ちゃんなこまか時変なおままごと好きでね・・・・・・」



「もうお義父さん!恥ずかしいたい」



「えー、隼瀬なんで止むっとねー、面白かつに」



「まあまあ隼瀬ちゃん、昔んこっだけん。芳美のお迎えの時間もまだだろたい?」



「そうばってん、てかお義父さん、お義母さんとなんかあった?いつもならちっとだけしかおらんでからすぐ帰ろうとすって」



「ぎくっ。な、なんもにゃにゃにゃあよ?」



「ならぎくってなんかぎくって。口に出して言う人初めて見たばいた」



「さすが隼瀬ちゃんね。実は・・・・・・」



亮が話したその夫婦喧嘩の理由は、隼瀬と充希からしたらまあなんともしょうもないものであった。



「納豆ご飯混ぜるか混ぜんかでそぎゃん・・・・・・まあ僕も冬未も人ん事言えん気はするばってん」



「隼瀬達もようくだらん喧嘩しよるもんね」



隼瀬達が結婚前からずっとアホみたいなバカップルなのは親達もそうだからなのかと、なんだか妙に合点がいく充希である。充希お前親友夫婦に言いすぎだろ。で、そのバカップルというのは仲直りなんかも早いもので、すぐ様涙目の春美が亮を迎えに来て、充希も隼瀬もなんなんだと思いつつ、バカップルを見送った。



















































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