冬未、歯医者に行く
「本当に1人で行かんとだめ?」
「何ば言いよっとね、子供じゃなかっだけん。ほら、女がそぎゃんうだうだせん!はよ行かんね」
「うぅ・・・行ってくる・・・・・・」
ある日の週末の朝、そんな会話をする冬未と隼瀬。冬未が昨夜、食事中に奥歯の方が痛いと言い出して、隼瀬はすぐに歯医者に行けと言って怖がる冬未を何とか送り出していた。
「行ったか・・・よし。ったく、いつもの定期検診も怖がって行かんけんそぎゃんなるてから・・・・・・」
冬未の車が歯医者の方向へ行くのをしっかり見届ける隼瀬。して、このまま行くふりして逃げようかとも思ったがずっと歯が痛いのも困るし、バレて隼瀬に怒られる方がよっぽど怖いので素直に歯医者に来た冬未。
「あら、葛西さんお久しぶりですね」
「すみません仕事が忙しくて中々(流石にこの歳で歯医者怖いとは言えん)・・・あの、左の奥の方が痛くて・・・・・・」
「わかりました、見てみますね・・・ちょっとコツンてしますよー」
「そこは痛くないですね、そこも・・・・・・ああだっ!」
「あーここの1番奥、7番の歯ですね」※人間の歯は親知らずを除くと28本あり、前歯の中心から1番2番と数え親知らず手前の一番奥が7番となる、8番となる親知らずは冬未も隼瀬も全て抜歯済
一応他の歯も見てもらったところ幸い何事もなく、すぐに痛い歯の処置を受ける冬未。
(タオルで覆ってくるっとはよかばってん、これはこれで何されとるか分からんけん怖いつたいな・・・)
ソワソワしつつ、大人しく口を開け治療を受ける冬未。麻酔もしてもらい治療中の痛みはないが機械の音などに対する恐怖心は拭えず、隼瀬の顔を思い浮かべる。
(そういや隼瀬はちゃんと検診も行って、虫歯なんかあっても早い段階で治療してもらいよるもんなあ、子供の頃の歯医者さんごつ怖いイメージは確かににゃあし、私も今後はちゃんと行こ・・・・・・何より隼瀬とキスできんとか嫌だし)
そのうちソワソワもおさまり、眠りかかっていた冬未はタオルを取られ、眩しさに目を覚ます。
「虫歯を削った所に詰め物を作るために型取りを致しますので、こちらを噛んでください」
「はい・・・・・・」
若干の気持ち悪さに耐えて型取りを終え、その後、仮の蓋をしてもらい治療前と比較のために改めてレントゲンを撮ったりして、お金を払って次の予約を取って帰る冬未。
「ただいまー、もういっちょん痛くなくなったばいた」
「おかえり、ほら、行ってよかったたい。どうせ銀歯とかすぐできんけん次も行かにゃんとだろ?今度もちゃんと行ける?」
「もう何も怖くなくなったけん大丈夫。てか子供じゃなかっだけん」
「ふふふ、おりこうさんね」
「芳美にするごつ撫でんなよ」
と言いつつ、内心隼瀬に撫でられて喜ぶ冬未であった。
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