隼瀬、車を買う



2016年 10月



少し前、姉が海外赴任に行く際に貰った軽が故障し、修理の見積もりを取ったところ、思ったより費用がバカにならず買い替えた方がいいという事になって、隼瀬は冬未と相談していた。



「隼瀬、どうせなら新車にしとけよ」



「うーん、ばってん納車待ちがどしこかかるかとかあるしねえ」



「さしよりディーラーに行く前に電話して色々確認すっとよかたい」



「そうねえ・・・・・・」



というわけで翌週末、一旦電話してから冬未と子供達と一緒にディーラーに車を見に来た隼瀬はその車を見た瞬間に



「これにする」



と即決。販売員も呆気にとられながら、すぐさま契約の手続きを進める。



「えーと、それで色はこれで、オプションは・・・・・・代金の振込み確認後、手続きして比較的すぐに納車できると思います」



「助かります、ありがとうございます」



冬未もびっくりするほど早いこと話は進み、代金を一括で振り込んでからしばらく、ディーラーの言葉通り早めに納車の日を迎えた。新車という事もあり、引き取り時の確認もそこそこに隼瀬は代車を返して、チャイルドシートを移し替えていよいよ新しい自分の車に乗り込む。



「やっぱ新車っていいな・・・まずガソリン入れ行こ」



健軍のディーラーから出て、納車時の儀式とも言える最初の給油中もなんだかウキウキな隼瀬である。ちなみに今回、隼瀬が買った、正確に言えば冬未に買ってもらった車は排気量1300ccのコンパクトハッチバック、色は青である。その見た目の可愛さ、しっかりMT仕様もあって値段相場的にも安い方という事から彼は即決した。して、ガソリンを満タンにして、せっかくだし慣らしも兼ねてどこか行こうと思い立った隼瀬。



十数分後



「久々来たなあ」



懐かしいわあと隼瀬が来たのは、菊陽町の津久礼つくれにある大きめのスーパーである。ここは彼や冬未が子供の頃から暁美によく連れてきて貰っていたが、最近は付近の町名が変わったところに大型のモールができたりして、陽葵達もこちらに連れて来た事はなく、本当に10年以上ぶりに隼瀬は来たのだ。とまあ来たはいいものの食料品も買いだめしてあり、特に買う物もないというわけで、子供達と自分のおやつ用にお茶屋さんの蜂楽饅頭(他地域では回転焼きとか今川焼きとかいうアレ)だけ買って帰る隼瀬であった。

























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る