6話「初スキル入手! 売買は計画的に」
換金を待っている間に店内を見ていると、聞き覚えのある機械的な声でアナウンスが流れた。
〈スキルを習得しました――購入金額大幅ダウン〉
〈スキルを習得しました――売却金額大幅アップ〉
な、なに!? 急にスキル覚えたんだけど?
俺は内心焦りつつも、ステータスを開いてスキルの詳細を確認してみる。
これって……今まさに必要なスキルだよな?
もしかして、これがユニークスキル"支援者"の効果なのか? これがギフトってやつなのか? だとしたらすごいユニークスキルだぞ、これは。
「待たせたね」
店主は机の上の物を片付け、布袋に入ったユニを用意している。
このスキルの効果を……試してみるか。
「全部でいくらになりました?」
店主は口を少しだけ開きボソッと答えた。
「本当は100ユニくらいにしかならないんだけど……あんたたち初めて見る顔だね? おまけで少し色付けといたよ。その代わり、また来てくれよ」
机の上に、ユニが入った布袋をカチャっと音をさせて置く。
その布袋に重なるように、半透明の水色の数字で⟬ 200 YUNI ⟭と表示されていた。
すごい! 売却金額大幅アップのスキル効果か!? 少し色付けるって……倍になったよ。
宿屋は大体一泊10ユニ、定食だったら5ユニで食べられるから……これは、しばらくは宿と飯には困らなそうだな。
それにしても、これは神スキルの予感! 俺は、こんな便利なスキルを何もせずに習得していいものかと、心を弾ませ店主にお礼を言うと店を後にした。
店を出ると大人しかったミナが、名残惜しそうにガラス張りの店内を眺めていた。
「ミナ、どうした?」
ミナは店内に飾ってある、色とりどりの宝石で装飾された杖に釘付けだった。
俺はすぐに、閉めたばかりの店の扉を乱暴に開けた。
「おじさん、この店って販売もしてるんですよね?」
「え……? あぁ、してるよ」
店内に飾られた一本の杖を手に取る。
「りょ、リョウくん!?」
店の外にいたミナが駆け入る。
「これ、いくらですか?」
俺はその手に取った杖を、店主の元に持っていき机に置いた。
「リョウくん、それ……」
「いずれ必要になるだろ?」
「ありがとう! リョウくん!」
店主は俺たちのやり取りを見ると、鼻を鳴らしながら口を開いた。
「50ユニだよ」
「あ、その服もついでに下さい」
俺は、店主の後ろに飾ってある、袖が扇状に広がっている桜色のワンピースのような服も一緒に購入した。
早いけど、冒険者になったミナへのプレゼントだ。
店主は、振り返り察したようにため息をつくとボソッと呟いた。
「あんたも大変だね。自分のものは買わずに彼女の物ばかり……」
「あはは……」
店主の言葉に答えるかのように、ミナが俺の肩を掴む。
「そうだよリョウくん! 武器と鎧くらいは買おうよ!」
「俺は……いいよ。ユニももうあんまないし」
杖と服を買ったら後半分って所か。
これから何があるかわからないし、多いにこした事はない。
俺はもっとユニが貯まってから買うから、今回はいいや……と、諦めていた矢先、机の上にドサッと何かが乗せられる音がした。
「なっ……!?」
「やっぱり、ミナだけ買って貰うのはダメだよ。ちゃんとリョウくんも装備を整えなくちゃ」
「で、でも……こんなの高いんじゃ」
ブレード部分は透明感があるクリアな青色、光沢のある鉄のガード、グリップは握りやすいように立派な鱗皮で出来ているようだ。
こっちの鎧は、緑色の大きめの宝石が胸の所に埋め込まれている。
こんな、いかにも高そうなもの、絶対に今の手持ちじゃ買えない。
「この剣はね、数年前……どっかの騎士さんが忘れてったものでね」
「そんなのやっぱり……」
どこかの騎士の置き忘れって……そんなもの、買っていいのかな本当に。
その疑問に答えるかのように店主は続けた。
「いやでもね、その後騎士さんが来た時にもういらないから捨ててくれっていうんだ。勿体ないからこうやって売りに出してるんだよ」
「そう……なんですね」
「こっちの鎧は、見習い魔道士が付呪に失敗したとかで押し付けていったんだ。何でも買い取る手前、いらないなんて言えないから仕方なく買い取ったんだよ」
騎士の忘れ物の剣に、見習い魔道士の宝石付きの鎧。これはとても値段が付けられないと思うんだけど……
「ちなみにいくらで譲ってもらえますか?」
高値だとわかりつつも一応聞いてみる。
「杖が50でこの服は……10って所だね。この剣が30で鎧の方は……いや、剣と鎧合わせて30にしとくよ。占めて90ユニだよ」
「そ、そんなに安くていいんですか?」
「あぁ、いいよ。あんたら、これが初めての装備か?」
「はい、俺たちこれから冒険者の試験を受けに行くんです」
「へぇそうかい。なら、初めての装備祝いで半額にしとくよ」
最初は態度悪かったけど、実はいい店主……なのかもしれない。
でも、本当にそんなにまけてもらっていいのだろうか……ただでさえ安いのに。
「本当にいいんですか!?」
「あぁ、いいよ。どうせ捨てるようなもんだし」
店主は、目線を下に落としながらため息を
「ありがとうございます。大切にしますね」
これも、スキル"購入金額大幅ダウン"の影響なのだろうか。90ユニが半額になり、合計45ユニになった。
俺は45ユニを店主に渡してお礼を言うと、店主は入口の横にある小部屋を指さし口を開く。
「着替えるならそこ、使っていいからね」
「あっ……ありがとうございます」
俺たちは、二つある小部屋にそれぞれ入り、買った鎧を身に付けた。
〈装備を獲得しました――
〈装備を獲得しました――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます