第6章 過去の思い出
第68話 何の面白味もない俺の日常
無事に配信が終わり一晩、ここ1ヶ月は色々な資料を書いたり、権利関係の何やらで配信と家事に加えて、色んな場所へと行っていたせいもあってか、その騒動がひと段落した今、これまでの疲れが一斉にやって来ていた。
「んー!疲れたぁ〜」
本日何度目かの欠伸をすると、だんだんと眠気が襲って来た。
俺は掃除機の電源を切ると、近くのソファーへと腰を下ろした。
「あーやばいなコレ……」
そう言って俺は自分の目を何度か手でゴシゴシと擦ってみるが眠気は取れず。
そしてソファーに座ったのが悪かったのか、俺はそのまま眠気に押されて、家事を放り投げた状態で眠りについてしまった。
◯
4年前
俺は今年から大学生になったのだが、特別何かをやりたいから大学に入った訳ではなく、かと言って将来有利になるから入った訳でも無い。
言っちゃ何だがうちの家は大金持ちとは言わないが、一応世間的には金持ちの部類で、母方の実家を頼ればそこそこの企業にはコネ入社出来るほどのコネクションを持った家に生まれた、俺は俗に言う人生勝ち組の1人だ。
なら何でそんな人生勝ち組の俺が、大学それも有名大学などでは無く、一般大学に入ったのかって?
そんなもんなんとなくだ。
俺には将来やりたいこともないし、かと言って今を全力で生きる為の趣味という趣味はない。
一応知り合いからアニメやゲームを勧められて、やっているからコレを趣味と言ってもいいかもしれないが、それもそんなに本気になってやりたいという訳でもない。
そんなどこにでも居る何に対しても無気力な男が、この俺藤堂夏だ。
「おーい!夏今日も合コン来てくれよ!お前が来るんだったら行くって、この前ミスコンで優勝した子が……」
「ごめん。実はこの後用事があってな」
「えーまたかよ」
「すまんすまん」
「じゃあその代わり次は絶対だからな」
「おう」
今日の分の講義が終わり家に帰る為に、帰り支度をしていると名前の知らない1人の男子学生が、いきなり声をかけて来た。
合コンと聞けば、普通の男子ならホイホイ参加したいだろうし、それに聞いた所この前やっていた大学が主催していたミスコンの優勝者が、参加するならその合コンに参加したい男子の数は、数えきれないだろう。
俺も大学に入って早々は今の様に何度か誘われた合コンに参加した事があるのだが、そのレベルの低さに逆に不快感を感じてからは参加しない事にしていた。
何が不快ってまず顔が悪い、別に生まれつき不細工だとかは気にならないんだが、厚化粧だったり髪の手入れをせずに来ていたり、服のセンスが終わっていたり、その他にも単純に話がつまらない。
話す内容が名前も知らない男女の恋愛話だったり、下ネタだったり、他人の悪口だったりで、逆に聞くがこんな内容聞いて誰が嬉しいんだ?
悪口が言語道断なのは当然として、特に仲良くもない異性からの下ネタ、それも笑える下ネタでは無くただただ下品なだけな下ネタを話す女は、気色が悪くてたまらなかった。
あとボディータッチが鬱陶しかったり、息が臭かったりその他色々あるが、これ以上は俺が不快になるだけだからやめにする。
そんな訳で俺にとっての大学は、若干行くのが億劫となる場所になっていた。
「あ、夏バイバイ」
「ああ、さよなら」
「おーい夏またな」
「ああ、さよなら」
今の様に帰りに何人かに挨拶を返されたのだが、もちろん相手の顔は見たこともないし、あったとしても名前も知らない間柄なのに、何故かこの大学では相手が一方的に俺の名前を知っていて、少し不気味だ。
そうして家に帰った俺は、手洗いうがいをしてから、適当に冷蔵庫の中にあるもので簡単にサンドイッチを作って、それを自分の部屋へと持っていった。
部屋に戻った俺はサンドイッチ片手に、適当にネットサーフィンをし、気になったサイトに入っては見て、入っては見てを繰り返しているうちに、時間はあっという間に過ぎ、外は茜色に染まり今が夕暮れだという事を俺に伝えて来た。
そんな事はお構い無しにとネットサーフィンを続けていると、家の玄関が開く音と同時に高く可愛らしい子供の声が聞こえた。
「ただいま〜」
その声を聞いた俺は椅子から立ち上がると、空になった皿を持って台所へと向かい、その途中に出会った今年で9歳の可愛く、俺とは違い勉強と運動のできる、自慢の妹真冬に声をかけた。
「おかえり真冬」
その声を聞いた真冬は、パァ〜!と顔を輝かせた。
「ただいま夏兄!」
うちの家は両親が共働きで、それも今は忙しい時期らしくここ数年は帰りがほとんど夜遅くになっているせいで、家の事は全くできていない為、家の家事全般と真冬の勉強を見たりなんだりは俺の担当となっている。
とは言ったものの真冬は小学生にしてすでに中学校の範囲の勉強をしている為、正直そこまで教える必要があるのかが不明なのだが、本人がやる気になっているので俺は家事の合間などで真冬に勉強を教えている。
これが俺の日常だ。
そんな無気力で何の面白味もない俺の日常は、とある怪しいサイトを見つけた時から、毎日が楽しく仲の良い仲間と切磋琢磨し合う日常へと変わり始めた。
「vtuber事務所ユメノミライ?」
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