第60話 買い物と女
ここ最近はユメノミライが大型ライブをした事で、ユメノミライの名前が一般層まで広がり、今まではキラメだけがうちで唯一100万人を突破していたが、ライブの後は視聴者が増えた事で、更にミリーと金城の2人が100万人を突破したり、その他バーチャルキャバクラと言う自ら炎の中に突っ込む様な配信のおかげで、ホムラガールズの認知度も上がり、特に梅さんはその配信を見ていた人からお芝居の仕事が入ったりもしたらしい。
それにウィルシスさんとのコラボのおかげで、海外勢とのパスが作れた事によって、着実に俺のチャンネルも育っていった。
だがそんなに色々やっても、やはり俺の登録者数は他のユメノミライのメンバーから見たら少なく、更に問題なのが俺には今後大きく登録者数を増やせる様な案がない事だ。
人気vtuberとコラボしてその人に引っ張ってもらう作戦は俺には男性vtuber人気トップのハジメが居るし、他に頼れる知り合いと言ったらユメノミライのメンバーだが、ライブの影響で新規さんが多く入った事でより俺の存在はユメノミライで気薄になり、更に男性とのコラボでの炎上の威力と範囲が、爆増した事によってこの手は使えないし、かと言って他に知り合いがいるかと言われれば、居るっちゃ居るがそれは特別仲が良いとかではなく、単に俺がvtuberとしては古参の部類に当たるから、そのおかげで知り合いが多いと言うだけで、正直これも使えない。
他には例えば炎上商法と言って、わざと大炎上する事で世間に名前を広めると言う手段があるのだが、この案こそ論外だ。
なんでかって?そんなもん長年燃やされ過ぎだから、今更俺が普通のvtuberが燃える様な内容で炎上したところで、世間様はふーんって程度しか反応してくれなくなったし、もしそれ以上に炎上させるとなると多分俺がvtuberを続けられなくなる。
だからこの案も却下だ。
なら正攻法で画期的な企画をやって人気を得る?
これこそ不可能だ。
何故かって?例え俺が見るもの誰もを涙させる様な神企画を考えた所で、それは見て貰えて初めて発揮するもの、初めから見て貰えない俺にはどうすることもできない。
それにそんな神企画がポンポン出せるほど俺はvtuberとして凄くはない。
他にも大型のゲーム大会に出るとかも考えたが、そもそも俺は特別ゲームが上手いわけでも下手なわけでもない為、例え大会に参加できたとしても目立てて、尚且つそこから自分のチャンネルに持って帰って来れるかと言われると正直難しい。
いやー本当どうするかな……
そんな事を考えながら、今日の晩ご飯で使う食材を買い物籠に入れていると、偶々近くに居た高校生?ぐらいの男子グループの声がうっすらと聞こえた。
「なぁお前昨日の配信見た?」
「見た見たミリーちゃんのあのゲームのうまさ!神レベルだわ」
「それを言うなら八雲の方がうまいだろ」
「ハァ?どこがだよ!」
俺は聞こえて来た会話の内容に驚き、意味も無く物陰に隠れてしまった。
ちなみにさっきミリーと一緒に名前が出た八雲って言うのは、アンダーライブ所属vtuberの1人でよくミリーとコラボしては、ゲームの腕のうまさを勝負してるライバルみたいな人だ。
例え自分のことじゃ無くても、一般のそれも多分高校生と思われる集団から、vtuberについての話題が聞こえた事に、嬉しくなり俺はその集団の後をこっそりと付けて、よくないとは思いながらも、その会話の内容を盗み聞きした。
にしても今時の高校生はvtuberなんて見るんだな……
俺のチャンネルの視聴者層は20代から30代が殆どなので、そんな若い世代も見ている事に驚いた。
なら俺は、今度からはもっと若い世代に注目がいくように意識して配信をした方がいいのかな?
「そういや最近のハジメの配信結構面白いよな」
「わかる!この前のガチャ配信で大爆死してたのは笑ったわ」
「ハジメって偶に神に愛されてるよな」
「「わかる!」」
そんな事を考えながら後をつけていると、例の集団からハジメの名前も出て来て、その推定高校生達からの人気様から俺は、最近距離が近過ぎて忘れそうになるハジメの人気具合を思い出した。
それと少年達よ!俺もその気持ちわかるぞ!
俺もハジメの配信者適正の高さは、高過ぎて逆に嫉妬しないレベルで高いと思うからな。
まぁじゃないと男性vtuberで、登録者数100万人突破できてないと思うしな。
そんなこんなでその後も少しその集団の後をつけて、他数人のvtuberの話題を聞き、満足した俺は元々の目的である買い物をしに戻った。
俺は買い物を終え家に帰る前にハジメに、今日買い物に行った際に高校生に大人気だった事を伝えると、ハジメの顔が見えないはずなのにドヤ顔をして居るのがわかるメッセージを返して来た。
その様子にイラッとしながらも、実際ハジメはそれをやってもあまりある人気を持って居る為、俺は何も言い返せず安い嫉妬の言葉を大量に送りまくった。
一通りハジメとふざけ合った後は、家に帰る為にスマホをポケットに入れて歩き始めた。
その途中家の近所にある少し広めの公園から、いしやーき芋お芋♪と、とても聞き覚えのあるメロディー聞こえた。
「焼き芋か……」
ちょうど小腹が空いていた俺は、もう焼き芋の時期か……と思いながら、俺は真冬の分も一緒に焼き芋を買いに公園へと入っていった。
「おっちゃん焼き芋2つ」
「あいよ!って兄ちゃんイケメンだね〜昔の俺そっくりだ」
「何言ってんだよおっちゃん。俺から見たおっちゃんは今でも相当イケメンに見えるんだけど?」
「へへ、言ってくれるじゃねぇか!そんなイケメンな兄ちゃんには一個オマケしてやるよ」
「本当か?ありがとうおっちゃん」
そう言って俺は2つ分のお金で焼き芋を3つ手に入れる事が出来た。
けど正直3つ目貰ったとしても、俺も真冬も晩飯前に流石に焼き芋二つは多いと感じ、もし両親に残すとしてもそうすると多分だが、父さんの分がなくなると思うから残すのもどうかと思う。
そんな事を右手には今晩の食材、左手には先ほど買った焼き芋を手に家に帰ろうとして居ると、目の前に大量の猫が一塊になっている謎の物体があった。
犬派か猫派で言うと猫派な俺は、そんな謎の物体を目の前に無意識にそちらの方へと足が動いていた。
「おーいぬこ〜。おいで〜」
謎の物体の近くについた俺は、地面に片膝を付けてその物体に手招きした。
んな〜にゃ〜と、俺の声に釣られた何匹かのぬこ様が可愛らしい声で鳴きながら、その謎の物体から離れこちらの方へと歩み寄って来て、差し出していた俺の手に頭をなすり付けてきた。
んがわいいぃぃぃ!!
という訳で俺は寄ってきた数匹のぬこ様を、わしゃわしゃと撫で回して1人怪しくニヤニヤして居ると、俺の少し先にある謎の物体からまたしても、にゃーにゃーと可愛らしい声で鳴きながら離れたおかげで、その正体が判明した。
「女だ……」
そう1人の女が俺の目の前で倒れていた。
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