第61話 ゴスロリクソ女
俺がぬこ様と1人ニヤつきながら戯れて居ると、地面に横たわって居る女性を発見した。
「へ?女?」
まさかの事態に俺は驚き動揺し、ぬこ様から惜しみながらも手を離すと、ゆっくりと倒れて居る女性の元へと歩み寄った。
「大丈夫ですか?」
倒れて居ると言う状況でも流石にいきなり見知らぬ女性に触るのは、後程色々な問題がのしかかってくると考えた俺は、まずは出来るだけ大声でその女性に声をかけた。
のだが、何度声をかけても返事は帰って来ず、流石にまずいと思った俺は女性に、一度謝り女性の口元に手をかざし呼吸をしているかと、脈があるかを急いで測った。
その結果女性の呼吸と脈両方共正常に稼働して居ることが確認でき、俺は安堵と共に流石に倒れて居る女性を地面に寝かせて居るのはまずいと思い、近場のベンチに俺が羽織っていた上着をひいて、その上に女性を寝転がせた。
そして流石にこのまま放置してもしこの女性に何かあったら悪いと思い、ポケットにしまっていたスマホから救急車を呼ぼうとした時に、先程俺が女性を寝かせたベンチの方から物音があり、そちらの方へと目をやると女性が目を覚まして伸びをしていた。
それを見た俺はスマホを必要ないなと思い、再度ポケットに仕舞うと、女性の方へと近づいて話しかけた。
「目を覚ましてくれてよかったよ。それで目を覚まして早々で悪いんだけど、どうして君がこんな場所で倒れてたか話を聞いてもいいかな?」
そう俺が出来るだけ優しく声をかけると女性……いや、よくよく近くで見ると多分だが高校生ぐらいの年齢に見えるから、この場合は女性じゃ無くて少女か?
それにこれまたよくよく見ると今までは単なる黒い服に見えていた服が、大量のフリルを散りばめられている、普通の人じゃ着るのが恥ずかしい部類の服である、ゴスロリだった事に気がつき、それに気がついた俺は内心マズったな……と思っていた。
そして次の瞬間ゴスロリ少女はいきなり立ち上がると、その場で高く飛び上がり容赦なく土足で人の上着の上へと飛び乗った。
「よく聞いてくれたなぁ!我が名は……」
そう何かをゴスロリ少女が変なポーズを決めながら話し出そうとした次の瞬間、今まで黙って踏まれて居るだけだった俺の上着が、いきなり飛び乗られた事に腹を立てたのか、今絶賛上着の上で決めポーズをして居るゴスロリ少女に反撃として、俺の上着はその痛いゴスロリ少女と共にベンチの上から地面へと滑り落ちた。
そうしてカッコつけて居る最中に無様にも地面に落下して、頭をぶつけたのか後頭部を両手で押さえつけてのたうち回って居る、ゴスロリ少女見た俺はこのゴスロリ少女は、ノマドや金城と同じ人の都合や迷惑など考えない、自己中心的なクソ女だと言う事を確信した。
「おいゴスロリクソ女」
「……はぇ?ゴスロリクソ女?…………ゴスロリクソ女がぁ!!!貴様ァこの私に対してなんたる無礼!今なら首を垂れ我に永遠の誓いを誓うのなら許してやっても良いぞ!」
その余のクソさに俺は、さっきまでした手に出ていたことが馬鹿馬鹿しく感じ、無意識に舌打ちが出ていた。
「チッ」
「チッって言った!貴様今舌打ちしただろ!あーやーまーれ!」
そのゴスロリ少女の傍若無人っぷりは、本当に初期の初期まだ仲良くなっていない時の、ノマドと金城を見て居る様で本当に腹が立った。
……いや流石にあの2人ほどこのゴスロリは酷くないか。何たってあの2人はあのストーカークソ野郎こと久瀬ヤウロよりも、俺個人としては本当に酷かったからな。
「おいゴスロリ」
「な、何だ。この我に首を垂れる準備が出来たのか?」
「謝罪を求めるのは結構だが、その前にお前がさっきから下敷きにして居る、俺の上着を返してくれないか?」
そう言われたゴスロリはようやく自分が俺の上着の上で座って居る事に気がつき、急いで立ち上がり片面には誰かの足跡が2つ付いており、もう片面は土や泥で汚れに汚れた上着を拾い上げた。
そしてそのドロドロな上着と俺の顔を何度か見比べると、軽くドロを叩くが全く取れない事に冷や汗を流し始めた。
「拾ったならさっさと返してくれ」
正直こう言う輩とは関わっても特段いい事はなく、逆に迷惑をかけられる事が過去の経験からわかっていた俺は、出来るだけ早くこのゴスロリと離れるべく上着を回収しようと手を差し伸べたのだが、何をどう考えたのかゴスロリは上着を返してくれなかった。
「は?」
ゴスロリのまさかの行動に俺は呆気にとられ、更には変な声まで出てしまった。
そしてそこから俺とゴスロリでの俺の上着を勝手に賭けた鬼ごっこが始まった。
「おらっ!さっさと上着を返せ!」
「まだだ!まだその時じゃない!」
「その時だから早く返せ!」
「ならこの私に追いついてみろ!」
そう言って逃げ出したゴスロリを俺は両手に荷物を抱えながら追いかけたのだが、何とびっくりゴスロリは単なるゴスロリではなく、動けるタイプのゴスロリだった。
俺も荷物を持って居ることから全力では走れていないが、それにしても成人男性からギリギリ追いつけない様な速度で走るゴスロリは、シンプルにすごいと感心した。
だがそんな事に感心していても俺の上着は返ってこない。
そんな訳で俺はゴスロリを追いかけ走ったのだが、その様子を見ていた誰かが、荷物を持った男性が変な格好をした少女を大声を出して追いかけ回して居ると通報したらしく、わざわざそんな変な通報を受けて来てくれた40代のお腹が少し出た警察官に、俺とゴスロリは今度からは変に誤解される事をしない様にと、お叱りを受けてしまった。
その際警察官がゴスロリに何故上着をすぐに返さなかったのか聞いたところ、度々変な事を喚きながらも自分が汚してしまったから、洗濯してから返そうとした事を教えてもらった。
それを聞いた俺は別にそんな事はしなくてもいいとゴスロリに話したのだが、その度にゴスロリが厨二病全開で偶に若干何を言って居るかわからない時もありながら断って来たため、正直これ以上話していても埒があかないと思った俺は、ゴスロリにプライベート用の連絡先を交換してその日は別れる事にした。
それからゴスロリの方が忙しいらしく、俺の上着が俺の元へと返ってくるまでに1週間ほどかかった。
それだけならよかったのだが、何故か俺はゴスロリから気に入られたのか、認められたのか分からないが、その後定期的にゴスロリから連絡が来て、変な勝負を仕掛けられる事になった。
正直俺としてはそんなお誘いを受ける必要性は無かったのだが、初めの頃は無視をしても何度も連絡が来る事に苛立ち、ゴスロリが立ち直れないほど一方的にコテンパンにしてやれば、連絡も来なくなるだろうと勝負を受けていたのだが、このゴスロリは動けるだけでなくそこそこ頭もよかったため、俺との勝負はいつも五分五分の実力で、更にはその勝負と言うのが結構配信でも使える内容が多かったため、俺とゴスロリは定期的に遊ぶ仲となった。
ちなみに俺はゴスロリの事をゴスロリと呼び、ゴスロリは俺の事を勝手にライバル認定して、ライバル呼びをする為、その後も何度か遊んだ仲なのに、俺達はお互いの本名を知らないまま、新たな友人を得た。
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