第34話 無事ライブ終了

ユメノミライ初ライブが大成功で終了した翌日、俺は自宅で公式で出しているライブ映像を買い、警備のせいで見れなかった場所などを重点的に、プライベート用のスマホで何度も繰り返し再生し続けてはその度にこのライブの完成度を喜び、そして最後の曲で俺が皆んなの足を引っ張っていることを再確認し、少し憂鬱な気分になった。


そんな事をしながら俺は今朝から通知音で鳴り止まない、仕事用のスマホから目を逸らした。


何故俺がスマホから目を背けているかというと、皆さんご存知の通り昨日キラメ達一期生が、ライブの大トリで俺の名前を叫んだことや、俺と同じ様に最後の曲の振り付けや歌詞割りの違和感を持った人が、事実確認やら何やらのために俺に連絡を取ろうとしている、だけならよかったんだが、どこからか海斗が関係者意外立ち入り禁止区域に入ったことが広がり、世間様では俺が不審者と接触して怪我等をした結果急遽ライブに参加できなかった派と、日頃のユメノミライへの不満から俺が不審者を侵入させた派と、俺が今回の件とは何も関係ないが嫌いだから叩く派の三つの勢力によって、大規模な争いが生まれており、今までの比にならないほど炎上というか盛り上がりを見せており、ユメノミライやライブの事などと一緒に、何故か九重ホムラがトレンドにのっているという異常事態になっている。


そしてその副次効果で俺のチャンネル登録者数は1万3千人から一気に1万9千人近くまで、約6千人近くがこの1日で増えていた。


とは言っても過去にも何度か結構な大きさで燃えた時には、普通とは逆に何故か登録者が増え、そして炎上が鎮静化したら登録者がいつもと同じ数に戻っているので、今回の件で登録者がここまで急増したのはそこまで嬉しいことではなかった。


ここまで昨日の一件で俺の身に起こった事を色々と話して来たが、俺の身に降りかかった厄災はこれだけではなかった。


先程俺はライブ映像をスマホで見ていると言ったが、普通ならそういうのは出来るだけ大きな画面で見ようとする物では無いだろうか?

俺は断然大画面大音量で更には部屋を暗くして、出来るだけ環境を会場に近づける様努力して見る派だ。


なら何故俺はそこまで豪語する割にライブ映像をパソコンで見ていない、そう思う者が多いだろう。


その訳を話す為には、昨日のライブを終えた後のことを話さないといけない。



ユメノミライのライブが終わった後俺とウィリアムさんは、警備長にバイト中に何があったのかと事情聴取を受け、2人で途中にサボっている海斗の写真などを提出しながら、何があったかを出来るだけ事細かく説明した。


そんなこんなあり俺たちが警備長から解放されたのは、ライブ終了の1時間後だった。


その後ちょうど帰り道が途中まで一緒だった、俺とウィリアムさんは会場から離れ家に帰ろうとしている最中、ウィリアムさんが話しかけて来た。


「アノ夏さん」

「ん?どうかしましたかウィリアムさん」

「その……今から少し飲みに行きませんか?出来ればソノ、ライブの話をしたくて……」


ウィリアムさんは本当にこのライブの為だけに日本に来たらしく、明日にはアメリカに帰るらしくアメリカにはユメノミライと言うか、vtuberの話をできる相手が居ないらしく、出来れば帰る前にオタ仲間とリアルオフ会をしたかったのと、何よりライブの話をしたいらしい。


それを聞いた俺は勿論そのお願いを快く了承し、スマホで帰りの途中にある個室のある居酒屋に予約を入れ、俺とウィリアムさんはその予約した居酒屋へと向かった。


居酒屋についた俺とウィリアムさんは、初めの方はチビチビとお酒とつまみを食べながらお互いにライブのどこがよかったのかなどを話し合っていたが、時間が経つにつれて特に俺はみんなの足を引っ張ってしまったという後悔から、やけ酒気味にどんどんと酒の量を追加していき、何故かそんな俺に釣られて追加で自分の分も頼んでいたウィリアムさんは、案の定2人まとめて居酒屋に来てから2時間ほどで完全に酔い潰れていた。

それもかなりデロンデロンに……


流石これ以上はまずいと感じた俺たちは、今日のバイト代を使って居酒屋代を払って、お互い帰りにタクシーを拾って帰る事にした。


そうして家に帰った俺はその酔い様に真冬に驚かれながら、自分の部屋へとおぼつかない足取りで向かうと、そのまま一直線にベットへと向かうが、その途中何かに足をかけ一度思い切り顔面から地面にキッスをしてしまった。


そしてその衝撃と酔いのせいで俺はそのまま気絶する様にベットに一歩届かず眠りにつく事になった。



翌朝俺は昨晩顔面を地面にぶつけたせいで鼻血で床と顔を血で汚しながら目を覚ました。


俺は酔っていてもだいぶ記憶が残るタイプだったらしく、ある程度昨日の出来事を覚えており、鼻血の後処理をしながらそう言えば昨日の夜、俺は自分が何に足をかけたのかと思い、その方を見るとそこには昨日の衝撃で色々な部品が飛び出した、そんな無惨な姿に成り果てた俺のパソコンの本体があった。


「あ……うん。…………これどうしよう」


その惨状を見た俺の口から出たのはそんな頼りない呟きだけだった。


その後はその壊れたパソコンを持って松下の元に修理に出しに行った。

その際どうしてこんな感じに壊れたのかを聞かれ、正直に酔った勢いで思いっきり足をぶつけた事を話したら笑われた。


そして家に帰ってからパソコンが壊れたので配信ができない事をツイートしたら、それと同時に昨日の件についての質問などがバンバン送られまくって、それが少し嫌になって俺は最初に言った通り、少し現実逃避の為と昨日しっかりとライブを見れなかったから、その部分を確認する為にもスマホで昨日のライブ映像を見る事にした。



と、そんな事があり俺は今現在スマホで昨日のライブ映像を見ていたわけだが……


流石にそろそろ放置するのもダメかなと思ったのと、もし本当に大切な連絡が来ていたらどうしようかと思い、俺は意を決して仕事用のスマホの画面を開いた。


すると案の定そこには名前も見た事がない人や、ネットであっているかもわからない情報をベラベラと話している系の人からと、多くの人からの連絡が来ていた。


勿論そういう人たちのことは無視して、運営や知り合いのvtuberからの連絡があるか確認して見ると、特に来るだろうと思っていた運営からは特に連絡はなかったが、知り合いのvtuberからは結構連絡が来ていた。


それに適当に返していると、そこにはここ最近アンダーライブの4周年イベントで忙しかったハジメからの久しぶりの連絡があった。


『おひさホムラ!お前めちゃくちゃ燃えてるけどどしたw』

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