第29話 バイト開始
ノマドが俺の家に凸してから数日、あれから色々ありあっという間に時間が過ぎ、ユメノミライのライブまで既にあと1週間となったある日
「あぁぁあぁ!ライブ行きてぇ!」
何かいろいろ限界になっていた。
ツイッターを見れば現地のチケットが当たったとか外れたとか、俺の配信でもライブが楽しみなどうの話が出て来て、そのせいで俺の現地で見たい欲が沸々と湧いて来て、今まさにそれが爆発したところだ。
だが、どれだけ叫んだところでチケットの無い俺はライブを現地で見られない。
そんな事はわかっている!だが、だからと言って簡単に諦めれるものでもない。
そうしてどうにか現地に行けないかとネットで色々調べていたら、現地でライブを見る方法を俺は見つけた。
◯
そしてライブ当日
ライブは10時スタートで、9時から会場の門が開くのだが、今はまだそれよりも1時間早い時間つまり朝の8時、既に入り口の前にはユメノミライのファンで行列が出来上がっていた。
なぜ俺がそんな事を知っているかって?
それは今よりも少し、大体1時間前まで遡る
◯
今俺は1週間前に見つけた大きな会場の警備のバイトをする為に、その会社の車で他のバイトもしくは社員の人と渡された制服を着てその会場に向かっている。
そして会場についてからは、俺たち用の控室の様な場所に案内されると、警備長と言ったらいいのかわからないが、まぁ言ってしまえば今日の俺の上司の人がこの場で適当に3人組を組ませて、そして各々に警備場所を割り当てていった。
そして俺はこうなる事を見越して、事前にこの警備長に媚びを売りまくっていたのだ。
集合場所についてからは1番偉そうな人に目をつけて、その人の荷物持ちをやったり、飲み物を買いに行ったり、肩を揉んだりと本当に色々(あだ会ってから2時間も経っていない)やって来た。
そしてそのおかげか俺が入った3人組は、最初は列整理などの外での作業だったが、ライブ開始からは中の警備それも結構ステージから近い距離のだ。
ありがとう警備長!
という訳で俺は今日一日一緒に行動する事になる残りの2人の元へと向かった。
そして俺が向かった先には、海外から来たのであろう俺より少し身長の高い、多分推測だろうが俺が185はあるから190前後ぐらいだろう、金髪で筋肉が少しついたイケメンと、身長は160後半あたりであまり運動をしないのか、腹周りに肉がついている黒髪の男性なのだが、髪はボサボサで配られた制服のボタンもしっかりと閉めない、見た目だけを見るとあまり仲良くなりたいタイプではない男性、そんなアンバランスな2人組がいた。
「今日はよろしくお願いします。バイトの藤堂夏です。気軽に夏って呼んでください」
俺がそう礼儀正しく2人に頭を下げて挨拶をすると、金髪の男性も俺に続いて挨拶をし始めた。
「ヨロシクオネガイシマス。私アメリカから来たウィリアム=ロバートです。ウィリアムとお呼びください」
「よろしくウィリアムさん」
「ハイよろしくです。夏さん」
そう言って俺とウィリアムさんとで握手をした。
そうして俺とウィリアムさんは残りの1人である男性に顔を向けると、その男性はコチラを睨みつけながら大きなため息を吐きながら、びっくりするほど小さな声でボソボソと自己紹介をし始めた。
「…………半……カイ」
半壊?
男性の声が小さ過ぎて俺にはそうとしか聞こえなかったのだが、何とウィリアムさんは驚くほど耳がいいのか、さっきのボソボソとした声でもしっかりと聞き取れていたらしく、その男性に握手を求めていた。
「ヨロシクです。半沢カイトさん」
なるほど半沢海斗か、俺も名前がわかったのでウィリアムさんに続く様によろしくと言ったところ、その男性つまりは海斗さんは一瞬こちらを見ると、嫌味ったらしく舌打ちをしてそっぽを向いてしまった。
それを見た俺とウィリアムさんは、まさか舌打ちをされるとは思っても見なかったので、驚きのあまり俺はウィリアムさんの方を、ウィリアムさんは俺の方をと助けを求める為に向いた為、俺たち2人は全く同時に目を合わせてしまって、それが何だか無性に面白く感じてしまい、2人でお互いの顔を見合って笑い始めてしまった。
その後警備が始まるまで結局海斗さんとは一度も話せなかったが、それとは逆にウィリアムさんとはめちゃくちゃ色々と話し込んでしまった。
ウィリアムさんから聞いた話だが、ウィリアムさんも結構なユメノミライのファンらしく、ユメノミライがライブをするとの事で、わざわざアメリカから日本に来たらしいのだが、何と俺と同じで現地のチケットを外してしまい、これまた俺と同じ経路でこのバイトの存在を知って、もしかしたらと思ってバイトに参加したらしい。
「いやー、まさか俺以外にもライブが見れるかもってバイトに参加してる人がいたとは……驚いたよ」
「私もデス。夏さんが私と一緒ビックリしました」
「そうだ!ウィリアムさんもユメノミライのファンらしいけど、どの子が推しなの?」
「推しデスか?それはモチロン金城カネコちゃんデス!」
「あー、二期生の?」
「YESYES!」
「へー、どの辺か好きなの?」
「オー!夏さんキキマスカ!」
そうしてウィリアムさんはツラツラとカネコの良いところを語り始めた。
金城カネコとは俺の後輩のユメノミライの二期生だが、コイツもコイツでノマド同様ユメノミライの問題児の1人だ。
何処が問題児かと言うとそれは、コイツの実家が関係してくる。
カネコの実家は誰もが名前を一度は聞いたことのある企業で、カネコはそこの1人娘でそのせいか金遣いが荒く、配信内でも散財散財で金を湯水の様に使っているやつだ。
確かこの前やっていたガチャ配信では、合計で100万円をたった1時間で溶かしていたような奴だ。
「聞きたい聞きたい」
そんな頭オカな奴でも俺にとってはかわいい後輩だ。
世間様からどんな評価をされているかは一応気になる。
という訳で俺はバイトが始まるまでの時間ウィリアムさんから、カネコのいい所や推しポイントなどを時間が来るまで聞き続けた。
そして俺達はバイトの時間が来たので、列整理と外の警備をしに帽子をかぶって向かった。
◯
そして冒頭に戻りユメノミライのライブを見に来たファン達よ列整理を始めた。
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