第13話 結成!我ら炎上戦隊燃えるんじゃー その2

「それでは最後に、現在大炎上中の歌姫クラゲちゃんの、今まで言えなかった本音です。どうぞ」


俺がそう言うと、クラゲちゃんは話し始めた。


「わ、私は元々ユメノミライに入る前から、彼と付き合っていました。彼は、私が歌姫クラゲになる前、歌の事で上手くいって無かった時に、手を差し伸べてくれました。そして、何より今の私があるのは、彼のおかげです。私の夢である、私の歌を世界に広める為に、彼は色んなことに手を貸してくれました。ユメノミライに入る事を勧めてくれたのも彼です。私がユメノミライに入れてからは、配信のやり方を教えてくれました。彼もあまり、vtuberに詳しくないのに、色々調べて教えてくれました。だから歌姫クラゲは、私と彼の2人で1人だと私は、思っています。」


そう話すクラゲちゃんの声は真剣そのもので、俺もハジメもその話を聞き入っていた。


「そして今彼は、自分のせいで私の夢を潰してしまったと思い、私に別れを告げようとしてきました。勿論、私はそれを断りました。何故なら私の夢は、ここユメノミライで無くても叶えられるからです。だけど彼が居なければ、私の夢は叶えられません。そう今の私の夢は、彼と一緒に私の歌を世界に広げる事です。配信をしている事を彼に話していなかったのは、私のミスなので私の事を悪く言うのは構いません。ですが彼を悪く言う事は、絶対に許しません。以上です。」

「成程成程、クラゲちゃん」

「は、はい!」

「いい夢じゃないか。出来れば是非その夢を、ユメノミライで叶えて欲しいと、俺は思う。勿論、その例の彼と一緒にね」

「あっ、もしユメノミライが嫌なら、その彼と一緒にアンダーライブにでも、来てみるかい?」

「おいおい何勝手に、勧誘してるんだよハジメ。うちの可愛い後輩は、絶対に渡さんぞ!」


コメント

:成程クラゲちゃんの彼氏いいやつじゃん

:彼氏はそのまま消えろ

:↑こう言うやつが居るから彼氏君が自分のせいだと思ったんだろ

:私もそんな彼氏欲しい

:彼氏もvtuber化する?

:めっちゃいいやつやん

:勧誘すなw


コメントを見てみると、思ったより視聴者の反乱はなく、歌姫クラゲの彼氏がびっくりする程、いい奴だったので何も言えなくなったのだろう。


まさかあの30分遅れてきた奴が、そこまでの奴だったとはな。


まぁこの様子なら、第二段階に移って大丈夫だろう。


「それじゃあ、配信が盛り上がってきたところで、次の議題は今のを、聞けばわかると思うけど、どうにかして、クラゲちゃんとその彼を、助けてあげたい。という事で、題して【助けてみんなの力で、一組のカップルを、救おう大作戦】だ。という事で、視聴者も交えて皆んな意見を、言ってくれ。頼むな」


コメント

:丸投げかーい!

:まぁ今の話聞いたら助けたるのも分からんでもない

:ユニコーンとガチ恋勢は帰ってどうぞ

:やっぱり彼氏のvtuber化じゃない?

:まずはクソ運営くんの正常化

:もういっその事開き直って彼氏君も配信に出すとか?


「成程な、彼氏君をこの配信に呼ぶってのは、まぁまぁ面白そうだな。ハジメとクラゲちゃんは、他に何か案ある?別にどんなでもいいよ、例えばユメノミライを買収して、自由にするとかでもさ」

「でも流石に、彼を配信に連れて来るのは、彼に迷惑かなって思うから……」

「そうだぞホムラ、一般人をこんな魔境に放り込むのは、流石に酷いだろ、そういうのは、クラゲちゃんと、その彼氏君が話し合って決める事で、俺たちがどうこう言う問題じゃないと思うぞ」

「それもそうだな。という事で、今の案は否決という事で、他の案を考えて行こうか。」


そしてならどうするかと悩んでいると、ハジメが何かいい案を思いついたのか声を上げた。


「はいはい、リーダー」

「どうかしたんだい?副リーダー?」

「俺的にはやっぱり、運営をどうにかするべきなんじゃない?まぁ2人の言葉だけで、会社一つを知れるとは思ってないけど、今回の炎上も、やることやる事全てが裏目に出てるし、それにホムラの事も、ずっと放置してたんだろ?流石に出来たばっかりの会社だからって、言い訳はちょっと出来ないかな。まぁ、今俺たちがやってる事は、もっと許されない事だとは思うけどね」


なるほどな、


「まぁ、この配信の責任は、全部リーダーである俺が取るつもりだから、その辺りは安心しといてね。それで、運営についてだが、全く連絡つかん、&今まで何度か抗議してみたけど変わらなかったから、正直難しいと思う。」

「やっぱりそうか……」


俺の今までの状況から、なんとなく想像していたのか、ハジメは残念そうにそう言葉をこぼした。


「まぁ、だからってうちの運営が全部悪いかって言ったら、今までさんざんボロクソに言ったがそんな訳ないんだけどな。」

「そうなのか?ホムラの事をずっと追って来た身からすると、相当酷く見えるんだが……」

「ハジメがそう言ってくれるのは嬉しいんだけど、実際ユメノミライが成功したのって、男女混合を完全撤廃して、男性Vとのコラボとかも完全に遮断した最近だしな。うちの運営もアンダーライブに追いつこうと、色々やった結果なんだと思うし、それにクラゲちゃんも言ってたけどvtuber運営は普通にやってるし、そこは多分不満は出てないと思うぞ。なぁクラゲちゃん」


俺がそう聞くとクラゲちゃんは、先ほどまでの攻める口調ではなく、淡々と事実を述べる様に話し始めた。


「はい、私はまだユメノミライに入って少ししか経っていませんけど、運営さんには色々とお世話になりました。」

「だよね。だから俺個人としては、ユメノミライが上へ上へ行くのは勿論嬉しい事だけど、上だけ見るんじゃなくて偶には下の方もしっかり確認してほしいってのが、俺個人としての感想かな。その辺りアンダーライブはめちゃくちゃしっかりしてるよね」

「俺がホムラにやらかした時も、俺の知らない所で色々やってくれてたらしいからな。うちはライバーを大切にを心掛けてるらしいからな」


それは何とも羨ましい。


そう思いながらもこれが最近有名になって来たユメノミライと、vtuberの大御所でもあるアンダーライブの差なんだろうなと、しみじみと感じてしまった。


その後も俺たち3人は運営にある不満などを話していたが、後半はほとんどこうした方がいいなやああした方がいいなどの、ライバー視点からの改善案を個人的に話し合い、今回の配信はそこまでコメント欄が荒れる事なくそのまま終了した。



そして配信が終了してから少し経った頃、俺のスマホに一件の連絡が入り、やっぱり今回の件はやり過ぎたかと思い、出来ればクビになりません様にと願いながらスマホを開くと、そこにはユメノミライの運営からではなく、アンダーライブからのメールだった。


その内容も俺への否定的な要件ではなく、今回の配信で話していた改善案の内容を使わせて欲しいとの連絡で、それを見た俺は他の事務所の1ライバーの意見でも、しっかりと聞きそれを取り入れる動きをするアンダーライブの運営の動きを見て、それとは真逆に自社のライバーの意見でも、自分達に都合の悪い事は聞かなかったフリをするユメノミライの運営との違いを見せつけられて、俺は何とも言えない気持ちになった。

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