第12話 「復讐」
幻晶なんたらは数はいるがスペック的にはグラニュールよりも遥かに格下なので、奇襲と数の不利の二点をどうにかできるのなら敵ではなかった。
わざと手加減して瀕死にした後、俺のクソ雑魚ステータスによる打撃で痛めつける。
石か何かを蹴飛ばしている感触だったので、あんまりすっきりはしなかった。
ただ、弱々しく逃げようとしている姿を見て少しだけ気分が良くはなる。
取りあえず襲って来た連中と途中で湧いて来た連中は皆殺しにしたが、何か足りないなと思っているとイアベトゥスとかいうボス格が居ないじゃないか。
逃げたのかまだ来ていないのは知らないが、ここのゴミ共を率いていたのは間違いないのでアルフレッドを殺した主犯だな。 絶対に殺そうと思っているのでさっさと見つけておきたい。
それに
こうして使ってみると免罪武装は明らかに他との並行利用を前提として作られているのではないかと感じてしまう。 まぁ、一つ取った時点で他も無理矢理ついて来た事を考えると、別物扱いではあるが本質的にはセットで一つなのかもしれない。 派手に使って副作用にどっぷりと浸かっている身としてはもうどうでもいい話ではあるが。
免罪武装に文字通り魂を売って得た力は大したものだった。
姿を晒して攻撃を仕掛けて来る奴は
その繰り返しだ。 連中は面子があるのか理由が他にあるのかは知らないが、逃げずに向かって来る。
俺としては好都合だが、肝心のイアベトゥスが見つからない。
幻晶将軍とか偉そうな肩書を持っている割には勝ち確にならないと出てこないチキンなのか?
まぁ、見つからないなら見つかるまでここで暴れるだけだからいいけど。
俺は文字通りこの階層を虱潰しにした。 万が一の取りこぼしも発生しないように
雑魚を潰していると何故か緩衝材をプチプチと潰している気持ちになった。
感情の伴わない――一応、伴ってはいるが、すぐに消えてなくなるので、最終的には無心で行う駆除作業となっている。 虚無だ。
復讐を実行している最中なのに驚く程に何も感じない。
いや、ゴミ共を捻り潰せる事に一瞬だけ嗜虐心が刺激されるが、早々に消えるからその僅かな刺激を求める事を原動力に俺は仇を狩り続ける。
出し惜しみをせずに派手に使った事もあって免罪武装の能力はかなり落ちたが、ここらの敵を駆るぐらいならまだまだ余裕がある。
それに嬲り殺しにする事で多少は回復しているので思った以上に消耗は少ない。
もう何度目になるか分からない
「――あれ?」
――筈だったが、今回は少し別だった。
炙り出された雑魚の数が多かった事もあったが、形が違う奴が引っかかったからだ。
他と比べて明らかに強そうな全身鎧のような形状。 一回だけしか見ていないが遠くで高みの見物を決め込んでいた事はよく覚えている。
「イアベトゥスじゃないか」
お前、こんな所に隠れてたのかよ。 俺が居るのはかなり奥まった場所で先がない行き止まりだった。
まさかこんな逃げ場のない場所で釣れるとは思わなかった。
イアベトゥスは
このカスが。 探させやがって。
一瞬、怒りが湧き上がるが、それも僅かな時間で即座に消えてなくなる。
イアベトゥスは俺への対処が先とでも考えたのか持っていた剣を抜いて俺に斬りかかろうとしたが、
取り巻きを全て潰した後、俺はイアベトゥスを踏みつけた。
どうにか立ち上がろうとしていたが抵抗させる気も逆転の可能性も与える気はないので、四肢と頭を砕いて何もできなくした。 グラニュールで散々練習したから死なない程度に痛めつけるのはすっかり得意になったんだ。
……こいつに関しては二つの理由でこうしようと決めていた。
第一にこいつはアルフレッドを殺した連中を率いていた。 つまりは主犯だ。
他にも同じ個体がいるかもしれないが見分けがつかないので、鑑定をかけてイアベトゥスって表示された奴は全員主犯で有罪だ。 そんな奴を楽に死なせる訳がないだろう。
少なくとも俺が受けた精神的な苦痛を等量の苦痛で賠償させる。
第二に俺はこいつを死ぬほど憎んで
要はこいつを苦しめれば苦しめるほどに武器が回復し、俺の気持ちも晴れると一石二鳥という訳だ。
我ながらなんて無駄がなく合理的で賢い選択なんだと思ってしまった。
復讐は不毛な行為とかどっかで聞いた事があるけど、何を言ってるんだ? 俺には得しかないぞ。
声を大にして言いたい。 復讐にはしっかりとした実益がある!
俺は武器を引っ込めて籠手が付いた拳を握ってイアベトゥスを殴りつけた。
使うのは
他に比べればゴミみたいな性能だが
鑑定をかけて耐久値を確認。 うん、いいね。 一万発は殴れそうだ。
拳を打ち付ける度に僅かな愉悦が湧き、瞬く間に消える。
その感覚に恍惚さを覚えた俺は夢中になって叩きつけた。
抵抗できないイアベトゥスは弱々しく明滅する事しかできず黙って俺の拳を受け続ける。
空間に拳を打ち付ける音だけが規則正しく延々と響いた。
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