Episode.12


       ドアが閉まります。

     閉まるドアにご注意ください。



シュー バタッ バタタ!





シュー バタン




 「ふうぅぅぎりセーフ…」


         ガタン


  「はぁ…はぁ…」

  「…こんなにダッシュしたの、久々かも」



   毎度ご乗車ありがとうございます。

  この電車は初鐘行きの下り電車最終です。


 「美波ちゃんは帰らなくてよかったの?」


    次の管十川を過ぎますと、

   上り電車はございませんので

 お乗り過ごしのないようご注意ください。

  「…ふぅ」

                      ゴトン

    次は管十川、管十川です。


  「私もてっきりそう思ってたから」


  「「わたし残るぅ」ってギリに言われて


   …超焦った 苦笑」


 「そうだったんだ 笑」

         ガタン


  「うん」

  「いつもは私のほうが急かされてたから」


  「完全に油断してた 笑」



ゴトン


  「ねぇ」


 「ん?」


  「フントくんは置き去りにして大丈夫だったの?」


 「ああ 笑」



 「元々フントの、

  免疫力アップの為にサークル入ったから 笑」


 「諸先輩方に揉まれんのも、

  あいつにとっちゃいい機会でしょ」


  「そう言えばそうだったね 笑」


 「理美ちゃん、最寄りは?」

        ガタン

  「ん?藤代台」


  「まさくんは?」


 「霞町~」




 「駅から近いの?ウチ」


  「ううん、近くはないけど」


  「ママが迎えに来てくれるって、

   さっき連絡あった」


 「でた『元アイドル』」


                     ゴトン

 「ねぇ、お母さんが有名人だと、

  やっぱ他の人と生活は違う感じなの?」


  「『元』有名人ね 笑」


 「はは 笑」


  「うーん」


  「私からしたら、それが『ふつう』だから」

  「ふつうの人の『ふつう』が

   いまいち分からないんだよね 笑」


 「そっかぁ」


  「でも、美波やゆずき達に、

   時々ツッコまれる事があるから…」


  「自分の生活が、『ふつう』じゃないってのは

   自覚してる 笑」


 「んじゃ安心だ」


  「?」


        ガタン

 「いや、俺が先に降りちゃうからさぁ」



 「もし歩きとか自転車とかだったら、

  ウチまで送ろうかと思ってたから」


  「え?」



  「でもそれだとまさくんが

   帰れなくなっちゃうでしょ」


 「まぁそれは…どうにかなるっしょ 笑」

ゴトン



  じーっ



  「まさくんってさぁ…」


 「ん?」


  「やっぱり『超いいひと』だよね」



 「そう? 笑」




    ご乗車ありがとうございます。

  この電車は初鐘行き、下り最終電車です。



  「うん」

        ガタン

    まもなく管十川ぁ、管十川です。

     お出口は右側になります。


  「踊り、めっちゃ真剣にやってくれたし 笑」


    えー、まもなく管十川、管十川です。

  管十川を過ぎますと上り電車はございませんので

    お乗り過ごしのないようご注意ください。

                      ゴトン

 「はは 笑」


       管十川、管十川です。


 「『フントちゃん』の引き立て役だもん」

 「やるならちゃんとやらないと、

  台無しになっちゃうでしょ^^」


  「私1人だったら、

   絶対空回りして終わってたもん 笑」


 「まぁ…みんなよりも『歳上』だしねぇ、俺 笑」


  「直人くんも一浪してるんだよ、知ってた?」


 「あ、そうだったんだ」



  「フントくんもそうだけど、美波も

   …なに仕出かすか分かんないひとだから」


  「直人くんだから安心して任せられる、

   ってのはあるかな」


 「ん?あの2人付き合ってんだ」



  「え!?今まで気付かなかったの!?」



  「練習の帰り、いつも一緒だったり、

   隠れてイチャイチャしてたでしょ」



 「んー言われてみれば…って感じ?」

                   ピンコーン♪



                   シューーーッ




                  ガッ プシュー



      管十川ぁ、管十川ぁ。

   足元にお気をつけてお降りください。



 「誰と誰が一緒に帰ったとかあんま気にしないし」

      管十川ぁ、管十川ぁ。


 「『隠れて』イチャイチャしてたら気付かないし 笑」

      管十川、管十川です。



 「俺、男女の色恋沙汰って

  あんま興味ないんだよね~」


  管十川を過ぎますと上り電車はございませんので

   お乗り過ごしのないようご注意ください。


  「!?」


  「…って事はまさくんってフントくんの事

 「それは絶対ない」

    「はい、下り最終、まもなく発車しまーす!」

 


 「この話するといっつも言われんだよねぇ 苦笑」

            「まもなく発車しまーす!」


 「最終の電車で宣誓するこっちゃないけど…

  恋愛対象は100パー女性だから」


                      ♪~


          シュー バタッ バタタ! シュー

 「それに仮にだよ?」


        「駆け込み乗車おやめくださーい!」



   発車のベルが鳴り終わってからの

    ご乗車は大変危険ですので

  お止め頂きますようお願い致します。

 「仮に俺が女だったとしても…」

                      ♪~


                  シュー バタン








 「フントを好きにはならない 笑」







         ガタン


  「あはは 爆笑」


    ご乗車ありがとうございます。

  この電車は初鐘行き、下り最終電車です。


 「そんなに可笑しかった?(;´∀`)」


      次は宮ノ郷、宮ノ郷。


  「だって『一瞬の沈黙』でそれ言うんだもん 笑」


 「ああ、そっちか 笑」

                      ゴトン



  「友達にそう断言されちゃったら、

   フントくん、もうアウトでしょ 笑」


 「でも価値観は人それぞれだからね」


 「フントを好きになる…

  マニアな女性もいるかもしんないよ? 笑」



 「でも俺は」


 「『お出汁でひと煮立ち』は

  ぜってーされたくない 笑」



  「あはは 笑」

  「私も無理だ 笑」



ガタン

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