第3話 マーカス叔父様

貴族街の入り口からしばらく行ったところに、エルストベルク家のタウンハウスはあった。


入り口に入ってすぐのホールに父様とアリサ姉様と妹のマーリエが待っていた。三人は先行していた馬車に乗っていたんだ。


王都で商会を経営している叔父様の姿もある。


叔父様は母様に挨拶をした後、僕と兄様の頭をなでた。


「久しぶり。二人ともおおきくなったね。」

「マーカス叔父様、お久しぶりです。」


僕達が挨拶をすると、叔父は僕をひょいと抱き上げた。


「ソーマ、君が考えた温風の魔道具が大人気だよ。予約が殺到しているんだ」

「そうなのですか? やった!」


商会を経営している叔父様に、僕は何度かアイデアや魔法陣を提供している。


叔父様は僕のアイデアをおもしろがって商品にして商会で販売しているんだ。


今考えると、ドライヤーとか冷蔵庫とか前世の知識だったんだね。


僕は魔法陣を考えるのも大好きで、作り始めるとつい夢中になっちゃって部屋にこもりきりになるのでよく母様に怒られてる。


叔父様はアイデア料だとか開発費や売り上げの一部を僕の口座を作って入れてくれているらしい。


「ソーマ、叔父さんちの子にならないかい? まだ気が変わらない?」


叔父様は、時々そんなことを言う。


叔父様は、祖父がもっていた伯爵位を譲り受けている。


僕が次男だから、独身の叔父様としては養子にして跡をつがせたいそうだ。


魔道具開発の才能もあるから商会でも活躍できるだろうって、一時期両親と叔父様の間で具体的に養子縁組みの話が進んでたときがあった。


父様の跡は兄様が継ぐ予定だから、僕のためにもいいだろうと両親も考えたみたいだったんだ。だけど僕が泣き出したんで話がそこでストップしちゃったんだ。


だって、両親がいるのに、なんでよそにやるのって思ってしまったんだ。


今から考えると前世で早くに両親を亡くして親戚の間をたらい回しにされていたから、なんだろうな。


それに、叔父様は今は独身だけど僕を引き取った後に結婚して子供ができたらどうなるんだろうかと。その子に跡を継がせたくなったりしないだろうかってちょっと思ったけど口には出さなかった。


叔父様が僕をかわいがってくれているのは本当だと思うんだけどね。


「叔父様、僕は父様とか母様といっしょにいたいよ。兄様姉様、マーリエとも」

「そうかそうか」


叔父様はくしゃっと笑って、俺を抱きしめた。


「あ、叔父様のことも大好きだよ」

「うんうん」


ふふっと叔父様は僕の髪に顔を埋めた。

兄様が、ずいっと近づいてきた。


「マーカス叔父上は、すぐ僕の可愛い弟を連れて行こうとする。」

「勝手に連れて行ったらダメなんですからね」

「そうよそうよ」


姉様と妹も参戦してきた。


「じゃあ、みんな連れてっちゃうのはどうかなー」


叔父様がおどけていうと父様がつっこんだ。


「もっとダメだろう」


母様が「あらあら」と笑っている。


そんなやり取りを叔父が訪ねてくるたびにやっている気がする。


いっそ、叔父様がうちの子になればいいんじゃないかな。


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