第9話 墓が鎮座している中庭で…
音楽室を出て窓の外を見る、すると中庭に異変が起きていた。
五つあった墓が四つに減っていたのだ。
「えっと……なくなったのは
他四つの墓と比べると、猫脚以外はそれほど尖がったモノがなかった墓だ。
もしかしたら、こんなに形が整ったいい苗字なのだ、持って生まれたその特徴を生かすために他の四つと違い、余計なモノをつけなかっただけなのかもしれない。
「ふむふむ……天下井、と……」
曜丙はまたメモをとっているよ。
でも、この数分で起きたことをメモをとらずに覚えていられるかと言われれば、無理だ。
墓をすべて壊したら出られるという保証はどこにもない限り、この場で起きたことを覚えておく必要性はある。
「墓石、撮りたくないけど……」
祖母の遺影以外に俺がランドセルに入れたモノ、それはスマホである。
学校に持ってきていいのかと言われると、普段はダメなのだが、卒業式などの特別な日は持ち込んでいいことになっている。
近所にフィルムカメラを使っている、売っている場所ないからなぁ。
一昔前は近所に現像してくれる写真屋さんもあったらしいが、今はない。
混音市の中央区にまで足を運べはあるのだが、ここから自転車で一時間弱。山あり谷ありの脚の筋力と相談しないといけない地形。気軽に行ける距離ではない。
思い出の写真は、自分が持っているデジタル家電やスマホで撮るしかないのである。
「この先画像記録も残しておいたほうがいいに決まっている」
変なものが写っていても、気を確かに持つしかあるまい。
パシャリ。
動かない被写体なので、難なく撮れる。
「三觜、勧夕、草、香迷……あれ?」
墓石の数と配置は目に見える通りだ。
ただし、天下井の墓があった場所には、何か青い……影がうっすらと現れている。
「心霊写真だな」
心霊現象に絶賛巻き込まれ中の俺たちが言うのもおかしな話なのだが、ありえない現象は何かのヒントにつながる可能性があるから、スマホの画面を見せ、おかしいポイントを指差し、曜丙に包み隠さず情報共有する。
間違っても、怖いモノを見てしまったから、道連れにしたいという邪な感情はないぞ。
ただの報連相だよ、報連相。
……恐怖を分かち合うことで、仲間意識が出てこないわけじゃないけどさ。
怖い話を広げたくなる心理が今ならわかるよ……。
「写真を撮るとこうなるのってことは……消滅したわけではないってことだな」
残骸があることが後に何を意味することになるかわからないが……とにかく、俺たちはこの場で目にした怪異、わかっている範囲の怪奇現象を記録として書きとめると、音楽室の隣、放送室へと入った。
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