第11話「君」の初めて

(ん…。もう朝なの?頬をツンツンされてる…。

 誰…?眠いよ…まだ寝てたいのっ…。

 ひゃあっ!?君の顔が…すぐそばにっ…!?

 な、何…?キ、キスぅ~!?

 ちょ、ちょっと待って、まだ…心の準備がぁぁ~)


「はっ…!ゆ、夢!?あ~っ、びっくりした…。

 あれ…なんで私…ベッドで寝てるんだろう…?」


(あっ…ひ、膝枕はどうなったの?眠ってる君の頭をなでて…それから…、

 うそ~っ!?ぜんっぜん覚えてないっ!せっかくの私の人生初膝枕がっ…!

 ど・う・し・てえ~っ?)


「――」


「あっ…。ごめん…騒がしくしちゃったね…。起こした?」


「――」


「そんなことない…?良かった…。

 それより…いい加減ベッドで、その…私と一緒に寝たら…どうかな?

 寝袋じゃあ…疲れも取れないよ…」


「――」


「えっ…?大丈夫なの…!?本当に…?見るからに眠そうだけど…。

 私たち、好き…同士なんだし…、その…そういうこと…になっても私は構わないけど…」


 ガシャーン!


「うわっ!だ、大丈夫っ!?あっ!足…はさまってるっ!」


(ハンガーラックの下敷きになってる…。外してあげないと…!早くっ…!)


「いたっ…!」


 バタンッ!


(焦ってつまづくなんて…もうっ。ん…?

 ち、ち、近いっ!完全に君を押し倒しちゃってるぅ~。

 どうしよ…どうしたらいいの~っ?君も驚いて目をそらしちゃってるし…)


「あわわわ…。ごっ、ごめん…わざとじゃないんだ…。それより足…大丈夫っ!?」


「――」


「よ、よかったぁ…

 さ、さっきね…君と…その、キ、キス…する夢見ちゃったんだ…。

 それでね…あの…その…、え、えいっ!」


(きゃーっ…。勢いで…一瞬だけどキス、しちゃったぁ~。

 でも…でもでもっ…、どう思われたんだろう~?うう~っ。

 あっ、君はすごくびっくりして…目をパチパチしてる…)


「い、いつもありがとうの…お礼の…キスだよ。だから、気にしないで…、ね?

 …えへへ…。めちゃくちゃフレンチな…あいさつ代わりのやつだからっ♪」


(うわ~っ。君…顔真っ赤…。かっわいいっ。対して大人な私は…、

 きゃーっ!なにこれ…!この手鏡…色ついてない?

 私…タコみたいに真っ赤なんだけどぉ~!!あううう…)


「――」


「えっ…?手、震えてる…?

 そ、そんにゃこと…、はうう…、そんなことないよっ…。

 私は君より年上なんだから…、余裕に決まってるでそ?」


(いやあああああっ!!なに…今の噛み方…「でそ」って…、ゲソ?…イカの足?

 …あうううっ…恥ずかしすぎ…、いくらなんでもこれはひどいっ!

 可愛くなさすぎっ!あ~もう…、どうしよう!?)


「へっ?」


(頭を…なでてくれてる…)


「うん…?ドンマイ…?あ、ありがと…。

 ちょっと私、背伸びして…無理しちゃってたね…。たはは…」


(雰囲気も何も…あったもんじゃないね…、これ…。君に悪いよぉ…)


「ほんと…ごめんね…。もしかしてファーストキスだった?

 …私はそうなんだけど…」


「――」


「そ、そっか…君も初めて、だったんだね…。

 …これじゃあ、せっかくのファーストキスが台無し…。

 よ、よし…真剣にいきますっ!

 か、花憐のことっ…、好きになって下さいっ…!ちゅ、ちゅううう…」


「――」


「なんで爆笑!?…えっ?一人称も変だし、キャラがおかしい?

 …ま。まあ確かにそうかもだけど…。真面目にやったつもりなんだけどなあ~。

 ふむふむ…意識してやるからおかしくなる…?自然が一番…?

 そっか…そうだよね…、自分を作ってちゃ…ダメだよ…ね」


(落ち着け私、大丈夫…。今の今まで…ごくごく自然に君と話せていたはずだよ…。

 絶対に…、いや多分…、おそらく…、きっと…。

 ああもう、シンプルに…私はどうしたいの?…)


「…キス、していい?」


 黙ってうなずく君。


(い、いくよっ…。君をこれ以上変な目に遭わせられないから…。

 …はうっ…熱くて、でも冷たくて…、どっちなのか分からない君の唇。

 きっと君も私の唇を、そんなふうに感じてる…。

 時計の針の音がすごくおっきいよ…。

 それから心臓の音も…。くっついた唇から、君に伝わってるかな…)


「ううっ…」


(ち、近い…君の顔が、近すぎるよぅ~。

 でも…真っすぐ目を見て、たずねるんだ…。君のためにも…。もう逃げないよっ)


「はうぅ…、私の…大好きって気持ち…伝わった…?」


(よかった…うなずいてくれてるね…)


「――」


「ん…?…慣れてなくて、ごめん…?…そ、それはお互い様だよ…。気にすることなんてないよっ!

 …ねえ君、何度でも言わせて…。大好きっ…。

 ずっと…ずっと…、ずーっと…一緒、だか…ら…ね…。ううっ…くうっ…うええんっ…」


(君も…泣いてるんだ…。ほっぺたに君の涙が、つたってきてる。

 ほっぺをくっつけて…抱きしめて…、またキスをして…)


 コンコン…。


(やばいっ!妹さん!?)


 ガチャッ。


(びっくりした~っ!!ふう…、またギターの中に戻されて…、

 あれ?おかしいな…。私、一体何に入っちゃったんだろう?

 全然部屋の景色が見えないんだけど…。あと、なんか温かい…。

 …ということは…前みたいに、君の着てるものかな…?

 でも、それにしては変だね…。部屋の様子が見えるはずなのに…)


「――」


「え…?どうしたの…君?」


(んっ…?下の方にチラチラと、まあるい光が二つ見えて…。

 はっ…!ま・さ・か…?ここは…君の…パ…、うぎゃああああっ…。

 ちょ、ちょっと…いくら何でもこれ…刺激が強すぎない~っ!?ひえええ~んっ!)

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