第3話「君」と曲作り

(奇妙な出会い方だったけど、私たちは仲良くなった。

 二人きりでいられる場所では、いつもとりとめのない話をした。)


「ねえ…好きな女の子のタイプ…教えてよ…?

 えっ?べ、別に君に興味はないけどっ…、一応ね…。

 ほ、ほら、曲作りの参考にね…?

 曲、作りたいって言ってたでしょ…?私も手伝うからさ…」




 ギターを掻き鳴らす音。


「あっ、そのコードなら…こっちのポジションが弾きやすいよ」


「――」


「歌詞も大事だよねえ~。ポイントは、心を込めて…でも考えすぎずに…かな?」


(うんうん…どんどん上達してる。

 パソコンもしっかり使って、バンドの音も一通り録音できるようになったね)




「おお~。完成したんだねっ!んっ?イヤホンで聴いてみて欲しい…?

 そうだね、その方が良さが伝わるもんね。

 ねえ、君のおすすめポイントってどこ?

 ほら、この部分が格好いいだろ~みたいなところ。

 イヤホン片方付けてさ…、教えてくれない?」


(い、言ったはいいけど…距離、近すぎぃ~!き、緊張するぅ…)


 ここだよ、と君がうなずきながら教えてくれる。


「そ、そっか…サビ前のブレイクね~。

 そうそう、私もあそこ…クールだなって思った」


(うう…ちゃんと聴くなんてできないよぅ~。だって…なんか…なんかぁ~。

 すごく近くにいるからかな…?君のことで頭がいっぱいになっちゃって…)




「ふう…。一曲…完成だね。えっ?ダメ出しして欲しい?

 でも私、役に立つこと…言えるかな…?」


「――」


「思ったことでいいから言って欲しい?うん…分かった」


 改めてスピーカーで完成した曲を聴いてみる。


「あっ…ここのピッキングトリルは、もうちょっと小刻みな方がいいかな…。

 えっと、ピックを持つ力を緩めて…手首を回転させるように小刻みに…」


(はっ…!しまった…無意識に指とか手に触りながら教えてた…。

 あうう…どうしよう、私の顔…真っ赤になってるかも…。

 恥ずかしい…お願いだから見ないでっ…)




「うんうん…。本当にいい曲になったねっ!聴いてて和むなぁ~。

 癒されるっていうか…。優しい曲…。君みたいだねっ…。

 あっ、そうか…君が作った曲だもん、当然だよね?ふふ…」


(なんだかいい気持ちになってきたな…。眠い…。

 午前一時…もうそんな時間かぁ~。ふああ~)




「んん…むにゃむにゃ…。あれ?…まだ頑張ってるの?

 うわっ!…外明るくなってるじゃない!」


(この後学校だよね?大丈夫かな…)

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