第6話 ストーリーが肝!
「うちの学校の文化祭は10月だけど、やっぱり色々あると考えて早めに始めるわ」
コンテストは12月だから余裕はあるし作品を出せばいいから大丈夫かな......
「伝統的に2人1組で小説を作ってもらいます。そうなると私は一人で......」
「遥ちゃんは琴葉ちゃんと作った方がいいわ。私が今年は一人で書く」
「で、でも......」
「方向性も違うんだし、合ったペアでやった方がいいと思うわよ」
「じゃあ......なんかごめんなさいね。じゃあ私は一ノ瀬と。一年生はそのペアでいいわね」
「はい!」
元気よく言ったものの城ヶ崎さんはあまり乗り気じゃないっぽい。
「.......あの!絶対二人で書かなきゃいけないんですか!?自分の書きたいものを書ければいいんじゃないですか!?」
「チームとして心を通わせあってほしいの。そういう経験大事でしょ?」
「あ、前田先生」
「一人で作る作品は自分の思うように書けて、そっちの方が気が楽でいいわ。けれども二人三脚で苦労して作ればとんでもない化学反応を起こして素晴らしいのができるかもしれない」
「......なるほど」
「ってまーちゃん遅すぎ〜。またソフト部行ってたんでしょ〜?」
「......ギクッ......もうせっかく先生らしいこと言ったんだから......」
「えっと.....とにかくそういうことだから城ヶ崎さんは雫さんと一緒ね」
「.....はい」
「がんばろうね」
と言ったものの返事はなかった。
こりゃ大変になりそうだな.....
「うちの部誌は妥協しないわ。だから遊び半分で適当には書かせない。小説っていうのは正しい作り方があるの」
先生が新入部員に顧問らしいところを見せろと一ノ瀬先輩が発破をかけるとやる気を出して語り始めた。
「ジャンル決めて、まずストーリーね。部誌に載せるのはかなり長めの小説になるからここがしっかりしてないと書いていけなくなるわ。書きながら考えるのはナンセンス。そうすると絶対に段々と書いてるうちは気づかないんだけど話が乱れ始めるの」
「ほんとこれは気をつけた方がいいぜ。去年テキトーに書いてたら出来上がったのがもうぐちゃぐちゃで」
「あれはちょっと無しよね......だって父親を殺した魔王が父親だったなんて......訳わかんないし......ていうか出来上がった時『めっちゃいいのできた!』言ってたくせに......」
クスッと山下先輩が笑う。
「そ、そこまで言わなくていいじゃん!」
「しかも一ノ瀬ってば指摘したら......グフッ!!」
一ノ瀬先輩が山下先輩の口を押さえる。
「それ以上は言わせねぇ!」
揉み合いが始まった!
「もーイチャイチャしないの」
「してません!」「してないし!」
ハモった。一ノ瀬先輩の話気になるなぁ。今度聞いてみよう。
「で、えっとストーリーね。これを1ヶ月あげるから考えてきてほしいの。あ、ノートパソコンって渡してなかったっけ」
「あ、まだ渡してないです」
「確か教材室よね。じゃ山下一年二人連れてノーパソ取ってきてくんない?鍵は職員室に桜先生がいるからそいつに貸してって」
「わかりました。じゃあ、ちょっといこっか」
「部の貸し出し用ノートパソコンを取ってくるように前田先生から言われて桜先生から教材室の鍵を、と」
「あぁ、なるほどね。前にってたわね。はい、鍵。1教室だったはずだわ。あ、私もう帰っちゃうから帰ってきたらあそこの鍵掛けの『教材室1』にかけといて」
「わかりました」
「あと......このメモ、葵ちゃんに渡しといて」
「あ、はい」
「よろしくね」
職員室を出て山下先輩について行く。
「そういえばさっきのメモって何だったんですか?」
「あぁ、なんか『お味噌は私が買っておくね!』って」
「......どゆこと?」
「同棲でもしてるんじゃないの?」
「でもいい年先生同士が同棲なんて......」
「前田先生と桜先生すごい仲良しらしいわね、よく一緒にいるところ見るし......あとで聞いてみましょう?」
「そうですね!」
教材室でノートパソコンをもらった。山下先輩は鍵を返しに行くということで二人で戻ってるように言われた。
「あなた、何書くつもりなの?」
「恋愛系を書きたいかなぁ......」
「一応聞いておくけど、ストーリーとかは考えているの?」
「うーんあんまり考えてないけど好きな男の子がいて、あの手この手でその子を虜にさせようとするけど男子が鈍感すぎて......みたいな?」
「......それじゃまるでライトノベルじゃない......」
「えっ?」
「私は純文学を書きたいの。そんなちんけなストーリーしか思いつかないなんてそこが知れるわ......」
ムッとしたけど、まぁ言ってることは正論だから言い返せないけど......
「賞を取りたいって言ってたわよね?一度受賞作品読んだ方がいいわよ。傾向とか掴んだ方がいいわ」
「へぇー」
「お、いたいた。こっちの階段の方が近道だよ」
やっぱ校舎広いなぁ......萌花と今度いろいろ回ってみようかな
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