第4話 文芸部、はっじまっるよー!

学校を終えて放課後。私は文芸部へ向かった。今日から仮入部期間が始まり、部活動がスタート。萌花とは他の部活見るということで別れることとなった。

やや迷いつつもなんとか部室にたどり着いた。

コンコン

「失礼します」

……返事はないがとりあえず入ることに。鍵は開いていた。

部室には誰もいない。あ、机にはカバンが一つおいてある。うーんどうしようかな。

ひとまず自分の荷物も机に置いて、昨日の部誌を読むことに。

「ここらへんにあったような……」

ごそごそ漁っていると

ガラガラ

「おっすー、って誰!? 不審者か!?」

「えっ!? いや、見に来ただけですっ!!」

「冗談だよー、会長の妹さんでしょ?」

「え、なんで知ってるんですか!?」

「さっき部長に鍵取りに行った時に教えてもらったんよー、一年生の子がいるはずだって」

「あー」

ちょっと一安心。びっくりしたー.......

「この部室に新入りの子が簡単に来るのは難しいしね。仮入部だよね?」

「はい」

「オッケー。そこの椅子にでも座って待ってなよ。あ、部誌探してたの?それなら、こっちだよ」

一つ隣の段ボールだった。

「今先輩達は勧誘に行ってるからぼちぼち一年も来ると思うし、とりあえず四時ぐらいから部活が始まるから待ってて」

「わかりました」

そう言って一ノ瀬先輩は文芸部の立て札を取り出して部室の前で立ち始めた。

少し経って

「すいませーん、仮入部に来ましたー」

「どうぞー、そこの机に荷物置いて座ってて」

「1年生?」

「ええ。3組の城ヶ崎芽衣よ」

「よろしくね。私は4組の松本雫」

「あなたはなんでここに来たの?」

「えっとね、『夜桜詩織』って言う作家さん知ってる?」

「ええ、もちろん。あの有名な中学生作家でしょ」

「うん。わたし彼女の小説がすごい好きでね、彼女のファンなの。それで……」

「その作家に憧れて、なりたいっていうわけね」

「そうなんだけど、彼女は三島社の人じゃない。だから三島文藝コンテストで大賞を取って彼女と会いたいなって」

「三島文藝コンテストってあの有名なコンテストよね」

「それで大賞をとると好きな作家さんの指導を受けれるって……」


「なるほどね」

「!?」

 突然の別の声に二人同時に振り向いた。

「驚かせちゃったかな、ごめんごめん」

「全然大丈………!?」

彼女の姿に絶句した。黒い眼帯、腕に包帯、左脇に黒い分厚い本。

 もしかして………

「……けがされてるんですか?眼帯とかつけられて」

「え?あぁ、この眼帯かしら?これはわたしの体の秘められたダークエネルギーを封印するためで、この本も気になっているでしょう?これはねわたしが今作っている魔導書なの」

やっぱり本物だ。やばい人だねと思い同意を求めるため城ヶ崎さんに目を合わせようとしたが……彼女を見つめたまま小声で

「……かっこいい」

ポツリと呟いた。感性が違うなぁ......

「勧誘終わりー、遅くなったけどじゃあ部活始めましょ」

「ちぇー、二人しか集まらなかったのかよー」

「あら、あなたの代一人なんだから二人集まっただけマシじゃない。そんなこと言ってたら後輩減っちゃうわよ」

「……っは‼︎今日はお集まりいただきありがとうございます‼︎」

「もー調子がいいんだから……じゃあ早速だけどまず自己紹介から始めましょうか。名前と文芸部に入った理由でも言いましょうか」

「じゃあまずわたしから。部長の三年、山下遥です。主に俳句や短歌を嗜んで自分で作ったりしてます。小説とかも好きでよく読みます。文学好きなので入部しました」

「副部長で同じ三年生の登戸みなみと申します。古に伝わる魔導書を完成させるために文芸部に入りました。よろしくね」

「一ノ瀬琴葉、二年生! 楽ちんそうだから入りました!」

「城ヶ崎芽依です。さまざまな文学作品を嗜んでおります。一番好きなのは川端康成の『伊豆の踊り子』です。よろしくお願いします」

みんなよくスラスラといえるなぁ。

「えー、松本雫です。一番好きな作家は夜桜詩織さんです。文芸部に入りたい理由は三島社文藝コンテストで大賞をとるためです。よろしくお願いします‼︎」

「はい!みんなありがとうね。文芸部の顧問は今日はいないんだけど現代文の前田先生です。活動内容としては基本的には各自に任せるんだけど全体では年に一回文化祭で部誌を発刊しています。それを作るっていうのもあるわ」

まさに今の自分に合った部活だと思った。自由にできるならいい環境じゃないか!

「おまえたち〜今やまちゃんの話聞いて楽ちんだと思っただろ〜?残念ながら部誌の書く量半端じゃないぜ?」

「んーそうね。部誌の制作は結構ハードに感じるかもしれないけどその話はおいおいしようと思うわ」

「慣れれば大丈夫だと思うけれどねー」

「後は……あらもうこんな時間なのね。じゃあ今日はここまでにします。また明日来れたらきてね。あと文芸部の入部届を先生に出したらわたしにも伝えてね。じゃあみんなお疲れ様。いつもよりははやいけど今日は解散にするわ」

_________________________

というわけで今日の部活は終わった。部誌の話が気になったけど小説を書く仲間が身近にいるのはここしかない。そう思うとここに入るのがいい気がする。

帰り道、

「ねぇ、松本さんって書いた小説がコンクールで入選したりしたことがあるの?」

「ううん。書いたりはするけど応募したことはないな。書くのが好きなだけだったから、そういうのは高校入ってからがんばろうと思ってる」

「へぇ、そんな甘々じゃ三島コンテストで大賞なんか取れると思わないんですけど」

「え?」

「当たり前じゃない、三島コンテストって出版歴のない新人作家の登竜門だけどそこで大賞を取るような作家は他社のオファー蹴って三島コンテスト一本で受賞目指したりするような人たちなんだから。それくらい権威のあるコンテストなのよ」

 ………

「あなたそんなことも知らずに大賞取りたいなんて言ってたのね。もう少し世間を知った方がいいわよ、わたしこっちなの。じゃあね」

そうだよね、納得。

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