第3話 高校生デビュー1時間目

「あ、4組!同じクラスじゃん!」

「え、まじ!?よかった〜」

まさかまた同じクラスになれるなんて裏で何か強大な力が働いているのではないかと勘繰ってしまうほどだが、ひとまずこれからの学校生活が楽に送れることは保証された。

といっても見渡してみると私立高校なだけあって知り合いばかりってわけでもないらしい。だがクラスはざわついていた。

ガラガラ

「はーい、席につきなさーい。ホームルーム始めますよー」

少しざわついていたクラスが落ち着いた。

「皆さん、八雲坂へようこそ。わたしは前田葵といい、現代文を教えてます。文芸部の顧問をしています。よろしくね」

文芸部あるんだ!

「さっそくなんだけど、すぐにね入学式をしますので体育館に移動しましょう」

_____________________


入学式は思ったよりあっというまに終わってよかった。中学の入学式は長すぎて一人倒れた人がいたらしいなぁ......

そうして教室へ戻ってきた。

「じゃあみなさんまだ時間があるので一人ずつ自己紹介をお願いします!」.......


いろいろな雑務を終え今日は早めに解散した。といって帰っても暇なので今日は部活動は見学だけならオッケーらしいので文芸部を萌花と見にいくことに。

「文芸部ってどこにあるんだろ?先生に聞いとけばよかった〜」

「それ一番大事な情報じゃん.......」

うろうろしていると

「しーずーくーーー!!!!」

ギュー

「ちょっとおねーちゃんくるしいのと、公衆の面前でこれはちょっと......」

結構恥ずかしい......

姉の友達だろうか、少し驚きを隠せないような顔をされてより恥ずかしい

「あの聡明な松本さんが.......」

聡明なキャラだったんか

「あら〜萌花ちゃんも一緒じゃない。ふたりしてどうしたの?」

「文芸部を探してて、ちょっと迷い中」

「なるほどね、じゃあ連れて行ってあげるわ」

「うん、お願い!」

「あ......あら、松本さんこの方達は?」

「わたしの妹の雫と友達の萌花ちゃん。新入生よ」

「「よ、よろしくお願いします!」」

「あら、そうだったのね!てっきり松本さんの恋人とかなにかと勘違いしてしまいましたわ〜」

恋人......?

「ごめんね、今から妹たちを部室に連れて行ってあげるからみんなは生徒会室に戻ってて」

「わかりましたわ」

「よろしくね、じゃあついてきて」


「楓さんって人気者なんですねー!」

「あら、そんなことないよ〜」

人気者っていうかモテモテじゃないっすか

_______________________

「ここね」

学校の端っこの教室だった。

「高校って広いんだね......まるで迷路だ〜」

「ねー」

『文藝部』と書かれた木板が掲げられている。

「入るわよー」

ガラガラ

「んっ?楓さんじゃない、どうしたの?」

「見学したいって子がいてね、入っていいかしら?」

「もちろんよ!ここに座って!」

部屋には大きな本棚と段ボールが数箱横にきちんと並んで置いてある。

「あ、松本雫って言います」

「橘萌花です」

「松本さんってもしかして.....」

「わたしのかわいい妹よー」

ギュー

「えっ......」

「また引かれてるよ!おねーちゃん!」

「えっと.....あ、わたしの名前は山下遥。ここの部長をしているわ。二人とも入部希望?」

「わたしは入部するつもりなんですけど、萌花は......」

「わたしはいろいろみてからかなーと思って」

「それはそうよね。仮入部もまだ始まってないもの。今日は特に活動もないから......」

「じゃあわたしは生徒会の仕事が残ってるから戻るわね」

「いろいろ本があるから見てみて。わたしも教室に用事があるからいなくなるから」

「はーい」

「楓さんありがとうございました」

じゃーねと姉は手を振って山下さんと部屋を去った。

「ちょっと本棚見てみてもいい?」

「おっけー」

純文学からSFまでいろんなジャンルの有名作がある。どれも硬派なものばっかなのでしっかりとした部活なのかなーとか思う。

本を読んで時間を潰していた。

すると

「ねね、この部誌の名前見てよ。『前田葵』って先生の名前だよね。先生もここのOGっぽいよ」

「あ、ほんとだ」

萌花が引っ張り出した段ボールには表紙の色が違う部誌がいっぱい入っていた。

部誌の名前は『八雲(春)』

「ってこれ分厚いね」

本の表紙をめくろうととした時、チャイムが鳴った。

「もう5時だね。今日は帰ろっか」

「そうだね」

なんとなく中身が気になるが諦めて帰ろう。明日また来よう。

こうして初日を終えた。

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