#3 正立虚像

目が覚めると、また、例の倉庫。

「お前、遅いぞ!」

「今日もきちんと頼んだもん、買ってきたんだろうなぁ〜?」

また、いつもの風景だ。

「あ?なんだ、その目?」

「なんか文句でもあんの?あぁん?」

いつもと同じ。

「なんか言ってみろよ!」

腹に強い痛みが走る。

「うぅっ、、、」

また、大きな拳が僕の腹を正確に捉えていた。

奴らが、こちらへ、来る。

今日もまた、心の中で叫ぶ。

『助けて!!』

相手が振りかぶった、その時。

すっと伸びた、白い腕。きらりと光る、ネックレス。

また彼女は来てくれた。助かった。

どうして、助けを求めていることがわかるのか。僕にはわからない。でも、こういったところが、友達よりも近しいような感じにさせている気がする。


**********


「あなたね、そろそろ一人で奴らを倒せるようにしなさいよね」

街を歩きながら、彼女はそう言った。

「あたしだって、いつも駆けつけられる訳じゃないんだから。」

いつかは、ということだろう。なにせ、今のところ、タイミングこそ違えど、必ず助けに来てくれている。そもそも、あんなに大人数なのに、どう立ち向かえというのか。

「それにね、このままだと、あなた、まともに考えることすら出来なくなっちゃうよ!」

あたしの人生じゃないんだからさ、と彼女は笑う。

「いつかは一人で倒せるぐらいになりなさいよね〜。」

中3の頃にあった時にも、同じ台詞を聞いた。

やはり、彼女はあの頃の彼女のままなのだ。

「ところで、今日はなんの夢だった?」

唐突に聞かれて、少し思い出す時間が必要だった。

「えっと…確か、また授業だったような…」

「また〜?相変わらず大変だね〜!それで、そこにあたしはいた?」

どうだったか…確か…

「いなかった…気がする…」

「そっか…」

彼女は、やっぱりか、でも、そういうことか、などと言いながら、ひどくしょげていた。夢の中だけの話のはずなのに、なぜそこまで落ち込むのか、僕にはわからなかった。

そういえば。

「そういえば、最近夢のことばかり聞くよね」

「え?」

彼女はきょとんとしていた。

「あぁ、どうして夢の話ばかりするのかって?」

それはね、と彼女は続けた。

「最近あたし、考えてるんだ〜」

彼女は真剣そうな眼差しで僕を見た。

「ねぇ、ここは、夢の世界なのかな?

それとも、こちらが現実なのかな?」

そう聞かれて、僕は少なからず動揺した。

どうしてそんなことを聞くのか。僕にはわからない。というより、僕は彼女のことを知らない。僕は、彼女の名前までも、知らないのだ。

困惑する僕の顔を見て、彼女はこう続けた。

「だってさぁ、もし、こちらの世界が夢の世界だとしても、こちらにいる限りこっちが現実だなぁと思うでしょう?だから、どっちが現実なのかなぁ、って」

それを聞いて考える。どちらが現実か。

そして、答えは、出なかった。

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