第9話 ナコとレコという(姉妹)の真実

この学校が面白い。

そうナコもレコも言った。

俺はその言葉に苦笑しながらも、そうだな、と答える。

それから中庭から空を見上げる。

青々とした青空を、だ。


「.....ナコ」


「.....何?」


「.....その。.....お前とさ。.....その.....」


「.....?」


何だか複雑な顔になる俺。

これを言っちまっても良いのだろうか。

風を感じながら思う。

瑛一さんと母さんが話していたのだが。

夜中に、である。


『ナコとレコは.....血が繋がってないんだ』


『!.....そうなの?瑛一さん』


『そうだ。.....母親が違う』


『.....嘘.....それで.....あんなに仲が良いの?』


『だが内緒にしてくれるか。これは。英治君に.....知られたくない』


そんな会話を盗み聞きしてしまった。

だからナコとレコの.....性格がこんなにも反転しているんだな、と思ってしまう。

姉妹と言っていたのは仮だったんだなんて。

そう思えたのだ。

その事を.....ナコとレコに聞くべきか、と悩んだのだ。


「ねえ。知ってる?英治」


「.....何がだ」


「お花の事。雄蕊と雌蕊ってあるじゃん?裸子植物とかそんな難しいのは置いて」


「.....そうだな。あるな。それがどうした」


「例えば.....雄蕊は結局決まった雌蕊しか独占出来ないじゃん?」


「.....そうだが」


でもさ.....私達って自由だよね。

自由な恋が出来るよね、と聞いてくる。

俺は?を浮かべながらナコを見る。

レコがナコに近付いた。


「.....つまり私と英治が恋をするのは自由だよね。どんな境遇でも」


「.....お前ら.....知っているのか。俺が何を話そうとしたのか」


「知っているに決まっているでしょ?.....私達も決断してきたんだよ。.....話そうねって。そろそろ」


「.....何で今までそれを黙っていたんだ。.....お前らの母親が.....2人居るって事を」


「ほぼ半分が嘘だよね。私達も薄々気付いたからお父さんに質問したの。そしたら前向きに話してくれて。それで今になっているけど。.....前から英治に話をしても良いかもって思ったけど.....でもその。.....英治を傷付けたくないなって」


「.....お前ら.....」


だから私が姉で。

レコが妹なんだよね、と言ってくる。

俺は複雑な顔をする。

するとレコは更にとんでもない事を言った。

私は捨て子、と。


「.....何.....」


「.....赤ちゃんの頃に母親に捨てられた」


「.....それで瑛一さんとナコが.....拾ったのか?」


「そう。.....だから私は何の不満も無い」


「.....強いんだな。レコは」


ナコが居たからだよ、と言うレコ。

それから、そして貴方が居たから、とも。

俺は少しだけ複雑な顔だったが。

それを止めた。

そして顔を上げる。


「レコもナコも俺が好きなのか」


「.....?.....当たり前じゃない。大好きだよ?」


「私だって」


「.....お前らの事をもっと知りたくなったよ。何だか」


「.....それはつまり愛の告白!!!!?」


し、姉妹丼!、と言いながら赤面するナコ。

そして、おお.....遂に処◯を捧げる日が、と言い出す。

何でお前らはいつもそんな感じで最悪に変態なんだよ!!!!!


俺は思いながら首を振っていると。

おーい、と声がした。

久仁子が走ってやって来ている。


「授業始まるぜよ?君達」


「ああ。久仁子。すまない」


「そうそう。あまりふざけた事をしないでね?お姉ちゃんに殺されちゃうから」


「.....し、師範か.....」


現生徒会長の山部國子(やまべくにこ)。

久仁子の姉だ.....が。

3年生で.....俺達を監視している。

頭がキレる相当な天才。

秀才だ。


何というか.....柔道場の師範である。

嘘だろお前、って感じだが.....これがマジなんだよな。

才能がありすぎて若くして師範になった。


因みにだがこんな伝説がある。

自らの痴漢の図太い腕を2秒でへし折った.....と。

國子先輩が1年の頃に、だ。


「.....ま、まあ殺されたくはないな」


「そうそう。だから真面目にしてね」


「.....そんなに怖いんだ.....」


「怖いよ。本当に。私は黒帯でめっちゃ空手も柔道も強いけど姉には勝てない」


「.....信じれない」


俺達は青ざめてゾッとしながら。

何とか次の授業に間に合わせる為に猛ダッシュで戻った。

それから授業を受ける。

だが.....その中でも。


『捨て子』


「.....」


捨て子と告白したレコの事が気になっていた。

何というか赤ちゃんを捨てるとかどういう気をしてんだ。

そんな事を思いながら。

授業中ながらも静かに腹を立てていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る