第3話 放課後野外調査!?
チャイムの音が響く
「では、実際に演習会場を見たいものをこの後私の下に来なさい。特に用がないものは帰れ。」
霧散のように去っていく生徒たち。残った生徒は約4人。安田の姿はない。おそらく、もうさっそく実験室へ急いで行ったのだろう。先ほどのポニテの桃胡田の姿もない。いつも通り、ショッピングに帰るのだろう。また、スマホの裏に彼氏でもない男とのツーショットのプリクラが増えることは、想像に難くないのだった。
先生は、残った生徒たちを見ながら言った。
「まあ、こんなもんだろうな。まあちょうどいい、人数で助かっているんだがな。」
「へ?どーゆ―ことですか?」
河野、やはり彼だ。必ずこういう時に残っている。
「まあ、来れば分かるんじゃないか。」
そう言い含めると、先生は振り向きもせず歩き出した。4人はカルガモのようについていく。ついて行くといつも先生が休憩時間にタバコ休憩に利用する学校の隣のコンビニについた。そのままタバコを吸うでもなく先生は無言でコンビニに入っていった。生徒たちは、困惑して顔を見合わせたがぞろぞろと後についていった。
「一人、1000円以内だ。」
振り返らずぼそっと言う、先生。
生徒たちは一度意味が分からずまた顔を見合わせた。
「え、先生の奢りっすか?」
河野が無遠慮に聞く。
「上官の命令は基本、一度で聞くようにといったはずだが?」
「いや、先生の説明が悪いだけっしょ、ま、いいっす、皆~、先生の奢りで晩飯だってさ。」
そういうと、生徒たちはカップ麺コーナーに走っていった。
「待て、汁物の扱いはちょっとな。まあ汁物であることよりもそれを運ぶのに少し問題がある。もし、お湯を注いでから5分以内で食べられるなら買ってもいい。」
「えー、でも千円つったら一風堂のたっかいラーメン買ってデザートと相場が決まっているのに・・・」
彼は、田中。河野の無遠慮な態度から、この先生はここまで行けると踏んだのだろう。
「でもさ先生、流石に色々説明不足じゃないっすか?放課後にいきなり野外演習っていわれても、何もわからなくて誰もピンとこないでしょう。」
「買ってから、話すつもりだからな。余り、外で話すことでもないしな。あとは、生徒の積極性も評価したかったというのもあるしな。」
生徒たちは、先生から千円を手渡しでもらいそれぞれがレジに並んで買ってきた。
「はい、おつり。」
「ああ。」
河野が率先して渡す。
渋る顔をしたものもいたが先ほどの『積極性の評価』という言葉が生徒に響いたのだろう。素行評価にも関わるかもしれないと怖くなり、生徒全員はレシートとともにおつりを渡していた。
「さて、行くか」
「いや、だからどこに行くんすか」
「まあ、車に乗れば分かる」
そういうと、先生はコンビニの前に駐車していたハイエースの鍵を開けた。
聞いているのは、横川。ショートカットでメガネと少し知的な感じがする。
「えー、先生それ無断駐車じゃないですか?」
「軍用車であれば、コンビニなどへの長時間駐車は認められていると、授業で教えたはずだが?」
「いや、それまじでやるんすね。しかも、ハイエースで。」
「まあ、法律だしな。」
「最大限利用するってやつですか。」
「まあ、そうともいうやつはいるだろうがな。」
先ほど、駐車場が空いていなくて、変なところに止めるはめになったのだろうか。恨めしそうに男性が生徒たちを見ている。このコンビニはそもそも駐車場の枠が4しかない。その一つをずっとうめられているのだからたまったものではないのだろう。そもそも隣の学校の駐車場に停めてくれと思われているだろう。地元住民と仲良くいかないと言われる所以も垣間見えるところだ。
「さあ、乗れ。横須賀基地まで行くぞ。」
「え、まだ遠いじゃないっすか。」
「ちなみに私の車は飲食禁止だ。」
「いや、どこで食えと・・・」
「まあ、着いてから説明する」
そう言って、後部に生徒全員を乗せると、先生は運転席に乗り込んだ。
「え、先生、ホットサービスのチキン買ってしまったんだけど?」
「私の車は飲食禁止だ。」
「はい、・・ケチ・・・」
「横須賀には、10分くらいでつく。」
「でも先生、合同演習は県外であるって」
「そこからは、輸送ヘリCH-47に乗って佐賀県まで移動だ。」
「は?佐賀県?」
「まあ、空路だからな、すぐ着くだろう。1時間もかからないのじゃないか?」
「え、まさかその中で飯食えっていうんですか?」
「ああ、無論そうだが。」
生徒たちは、信じられないといった顔をしていた。やるせない沈黙に耐えかねたのか、先生はCDの再生ボタンを押した。
~こころぴょんぴょん、まじ~
決まずい空気が流れる。また、先生が焦ることなくその曲を待っていたかのような顔をするから生徒たちは反応に困っていた。
気まずい空気のままトンネルに入っていった。
ユニバース30 また冬 @tsubakisaki
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