第2話 この国で起きたこと

Ahd制度とは、文部科学省管轄外特殊兵役服務制度により国から認可が下りるものだ。博士や修士や学士のように認定されるもので、「この国」ではMBAよりも最近重視されてきている。MBAは経済学修士課程であるのに対して、Ahdは5年間の兵役を国に捧げることによって得ることの出来るライセンスだ。軍事関連科目の教員免許が取得できたり、PhDと合わせて持てば将来的に教授への特殊ポストが空いたりする。


この国では、戦争が当たり前に行われている。もちろん「あの」大きな戦争には負けたし、原爆だって落とされた。しかし、某大国の在中軍が認められることなく、自身の国の軍備を強化することこそが戦争を防ぎ平和をもたらすと考えられた。エンペラーを妄信する体制こそは崩れ去れど、あの熱狂的な躍動感は国民から失われることはなかった。

いつの間にか戦争産業は「一番開きやすい職業」とまで言われるほどになっている。何よりも、戦争産業は延々と需要が生み出され続ける。強い武器を作ればさらに強い武器が作られ産業としてはどんどんと発展していく。さらに、弾丸や対人ナイフのような消耗品需要も高い。飲食産業に次いで多くの学生起業家のような人たちがこぞって目をつけさまざまな軍事関連会社が乱立した。

すると、注目されるのは「誰が」その会社を運営しているのかということだ。ズブの素人よりも軍に従事したことがある人が設計した会社が信頼を得る。


ここで、国が提示したのはAhd制度だった。大学院や大学と同様国に勤務を5年間行うことで、Ahdという資格がもらえる。また、年齢制限は存在せずこの役に5年行えばライセンスが降りてくる仕組みだ。つまり、いつ取りに行ってもいい。また、具体的な内容については一切明かされておらず、防衛省関連の施設にいけば「Ahdのご案内は、スタッフまで」という張り紙がある。それ以上の説明は庶民にはわからない。


これが今のAhd制度と「この国」ぜんかの現状だ。この物語を見ている、みんなよりもよっぽど戦いが許容されて、戦いに従事したことが就職や将来に有利につながっていくそんな世界なのだ。

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