第6話 私はリリー

目が覚めたら全く知らない場所にいた。


身体を起こして周りを見渡してみた。


うーん、、、ここは、どこだ?病室っぽくみえるが。


窓のない部屋だった。ベッド以外特に物が無い。


「ようやくお目覚めか」


部屋の扉から誰かが入ってきた。


青い髪の男だ。そして目が真っ赤。うーん、ということは...。


「ジパング人?」


「日本軍で魔法兵器を作っていたのはお前だな」


「いったい何がどうなってるんや」


「お前のせいで私たちの同胞がたくさん死んだ。責任をとってもらう」


...オーケイ。なるほど。


察するに、俺は怒りを買ったジパング人に拉致された訳か。多分。


「それは悪かった。言い訳をさせてもらうと、俺も作らないと軍から殺されるような立場なんだよ」


「まさか、私たちの魔法を利用した科学兵器を作るやつがでてくるとは思わなかった」


「まぁ、日本人の俺からすると俺らも東北と北海道獲られてるからな。みんな奪い返したいって思ってると思うよ」


「勝手にこの世界に召還しておいてよく言う」


「...で、責任をとるって?俺を公開処刑でもする気か?」


「俺はそのつもりだった」


割と冗談のつもりで言ったんだけど。いやいや、怖すぎ。


まぁ、仲間を殺した張本人がいたらそりゃ殺意も沸くか。。。


「お前には、我々ジパング人の兵器開発を手伝ってもらう」





この展開は予想していなかった。


いや、たしかに日本軍とかいうブラック企業から逃げたいっては言ってたけどさ。


なんで敵側の兵器開発を手伝わんといかんのだ。俺はどこにいってもそういう運命なの?


あれこれと文句を言ったのだが、強制的に別の部屋に連れてこられた。


ジパング人たちはいわゆる魔法使いっぽい衣装で、杖を持ちローブを纏った奴らだらけだった。


魔法で縄を操り、ガチガチに俺を縛って連行した。


どうやらここは栃木の宇都宮市あたりだった。


歩いているときに、道路に残された古い日本の看板が見えたのだ。


街は、異世界からきたジパングの文明と融合してなんとも言いがたい様相をしている。


ぶっちゃけジパングの街を始めて見た。


なんというか...江戸時代がそのまんま続いてかつ魔法ファンタジーが混ざったような感じだ。うーん、伝わんねーなこの表現。


建築物は全部木製で、屋根は瓦。鳥居があったり。けどみんな色が違っていて、ふわふわした光の玉がそこらじゅうに漂っていたり、蔦が生えて妖精が遊んでいたり。


ジパング人は和装なんだけどそれはローブっぽくなっていて、髪はみんな色が違くて。


うーん、一言で言うとカオスだ。だれかこれをAIイラストとかにいい感じのワードを入れて再現してくれ。


「勘弁してくれよ」


「お前に拒否権はない。日本軍を倒せる魔法兵器をいますぐ作れ。あの砲台のせいでジパング軍はまた押されはじめている」


砲台って、サイサリスのことか。


「俺には、、未来を約束した恋人がいるんだ。その人を殺す兵器なんて死んでも作りたくねーんだよ」


「ほう。ジパング人ならいくら死んでもいいというわけか」


「だからしかたねーだろーが。俺の立場をよく考えてくれよ」





「殺す必要はありません」


通された部屋で口論してた俺たちに、別の声が割って入ってきた。


「日本人を殺さずに無力化する魔法兵器を作ってほしいのです」


「えーっと、、すいませんどちらさまでしょう」


びっくりするほど美人だった。


透き通るような真っ白な長髪と赤い目。


長い耳を持ち、巫女のような赤い服を纏った異世界の妖精。


あまりにも人間離れしている神聖な出で立ちだった。


「申し遅れました。私はリリー。ここ、ジパングトチギ領の領主です」



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