第5話 こいつか

おそらく、女性になんでもするって言われた男が思いつく限りのことをやりました。


ええ。そりゃあやるでしょう。


俺は鈍感で清楚なタイプの主人公ではない。


やるときはやり、来たチャンスは逃さずきっちり掴むタイプだ。


よく考えれば、武器開発をやる気配のない俺にたいして、あのハゲ上官が差し向けたのが四条隊長だったのかもしれない。


しかし、そんなものはどうでもよい。


男っていうのはそういう生き物だ。みんなそうする。俺だってそうする!




「これが新しい武器です」


四条さんとやるべきことをやった次の日。


あまりにもやる気が爆上がりしたのでその新兵器はたったの半日で完成した。


ぶっちゃけ、構想自体はずっと考えていた。


要は敵から奪われず、前よりも強い武器をつくればよいのだ。


「ふぅむ。前よりもかなり大型の銃だな。狙撃銃か?」


「そうです。3km先から相手を撃ち抜ける魔法狙撃銃です。出力は前の銃のさらに10倍」


「10倍!?」


「ええ。なので魔法石一個につき、撃てる弾は1発だけです。ですが、破壊力はやばいです」


俺たちは銃の実演のため、少し離れた丘の上へ来た。


「あの山の上を撃ちます」


「山の上?」


「まぁ見ててください」


ドガーーーーーーン!!!


俺が銃のトリガーを引いた瞬間、山の頂上に穴が開いた。


とんでもなくながい光線が山を貫いたのだ。


「こ、これは....なんとすごい。山が消えた???」


「狙撃銃っていうより、レーザーキャノンみたいなもんですね、もはや。撃つとそこにあるものが50m範囲くらい焼き消えます。魔法壁とかはもう意味がないですねこの威力だと。相手は死にます。以上」


「なんという兵器だ...。これでわが日本軍は勝ったも同然」


「それ、負けフラグになるんでやめません?」




そしてまぁ、、1週間後。今回も例のごとく前線につれてかれた。


俺に拒否権はないのか。だってこの前死にかけたぜ?貴重な研究者を失っていいの?


「俺、この戦いが終わったら、四条さんと結婚するんだ...」


「え!!!?」


「結婚式は身内で行って、家は神奈川の静かな自然のある場所に建てましょう。そして畑でもたまに耕しながら子供たちと毎日幸せに暮らすんです」


「.........」


四条さんの反応をみると、どうもまんざらでもないらしい。


というか、半分冗談で言ったつもりではあったんだけど、ぶっちゃけ本気でそうしたい。もう戦争なんてこちとらうんざりなんだワ。


「私も、大倉さんと幸せになりたいです」


「よーし、ならちゃっちゃとジパング片付けちゃうぞぉ~」


俺と四条さん、そして日本軍たち総勢5000人は、埼玉県の北。栃木県との県境に来ていた。


今回は山岳での戦闘だ。


といっても、俺たちは俺のつくった魔法狙撃新兵器・サイサリスを10機配備し、それを撃って相手を蹴散らすだけだった。


とてつもない威力の光線が10発放たれ、ジパングの前線はみるみる後退していく。


「はっはっは。圧倒的じゃないかわが軍は」


「やっぱりすごいです大倉さん...!私、一生あなたについていきます」


「おっ、そうだな!...ん?」


突然、異変が起きた。


いや、視界がゆがんだ。


部隊を指揮する四条さんの姿が見えなくなり、俺の意識がおぼろげになった。


「なん...だこれは.....」


意識を失う最後。


俺の後ろに人間の姿が見えた。見間違いかもしれない。


しかし、それが俺にはジパング人に見えた。


「こいつか」

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